脱兎の如く
アリスの一言はまさにその通り。
現状、アリス以外に復活の魔法を使える者はこの場にいない。
脱兎の如く逃げ出したアリスにつられ、ジャン・ジャックやガイン、フォンテスも走り出す。
ガインとフォンテスはアリスについて来るが、ジャン・ジャックはスピードが足りず、徐々に離されてゆく。
アリスは一旦減速し、ジャン・ジャックと並ぶと、腰を強引に抱き寄せた。
「感謝しろよ、おめぇよぉ!」
そしてジャン・ジャックを小脇に抱えると、再び加速した。
その速度は先程までを超えて、更にすさまじいものとなる。
アリスはガインとフォンテスを追い抜き、マシアスたちがいる場を超えて、更に火球から遠ざかってゆく。
凄まじい速さで通過したアリス、ガイン、フォンテスと火球の広がりを見て、一斉に走り出すマシアスとイゴール。
そこにシャノンの姿がない。
「シャノンがいねぇ!」
驚くマシアスは上空を見る。
だが、やはりシャノンはいない。
魔法で飛んでいるわけではない様だ。
するとイゴールが静かに呟いた。
「前を見ろ」
グングン速度を上げてゆくアリスの小脇には、ジャン・ジャック。
そしてその後ろを走るガイン、フォンテス。
そのフォンテスに横抱えに抱えられているシャノンの足が見えた。
「……お姫様抱っこってやつか」
マシアスは胸をなでおろす。
シャノンが邪神に一時惹かれ、そこから再び自分たちのところに帰属したと理解しているマシアスではあるが、シャノンへの疑念は微妙に残っている。
故に、今フォンテスがシャノンを抱えて行かなかった場合を考えて、少し表情が沈んだ。
(俺だったら多分、シャノンを助けなかったな)
マシアスと共に走るのは、イゴール。
きっとこの巨躯の男も、シャノンを助けなかったのではないか。
そう思うマシアスだが、その視線に映るのはフォンテスの背中。
(でもフォンテス様には関係ないか)
自分たちの主は、器がでかい。
そう思うマシアスは、吸血鬼の未来に思い馳せる。
思い浮かんだのは、フォンテスと自分たち。
笑顔で穏やかな時を過ごす自分たちの姿。




