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黒球は何も言わない
澄んだ瞳でアリスを見下ろす穴倉。
その表情はいつになく柔和である。
対するアリスは、穴倉を見上げる。
「よっしゃ、そんじゃ早速やれや」
目に力があり、ギラつく表情のアリス。
いつになく攻撃的な雰囲気だ。
しかし、その攻撃性は、穴倉に向いているのではない。
アリスは黙り、黒球を睨み付ける。
「……!」
撃破すべき対象。
それが、邪神デシネの作り出した黒球だ。
今のところ、黒球に攻撃が効いた様子はない。
全て呑み込まれている。
「うん」
穴倉は頷く。
そして、いつもの様に、落ち着いた声で、逆に投げかける。
命を投げうつのは当然という雰囲気で。
「じゃあ、やってみるよ」
穴倉とアリスは背丈がかなり違う。
背の高い穴倉が真っ直ぐ前を向くと、その視線は、背の低いアリスを超えて、黒球へ刺さる。
だが、黒球は何も言わない。




