命を粗末にすんなボケ
しかしアリスは、その検証を今するつもりはない。
目先のことに意識を集中してしまう性格が、アリスの思考を止める。
(……!)
現在で言えば、フォンテスの復活。
その為にアリスは今、黒球へと向かっている。
(よっしゃ、敵さんは動かねぇな)
黒球の動向に注視しながら、アリスはその傍らに着地する。
降り立つ瞬間、クマガイリュックの手が上に向き、足が下方へ、だらんと垂れ下がった。
クマガイの足の裏から、ボン、と短い音。
風が噴出された音である。
アリスの体は一瞬上に浮く。
だがその時、ほぼ同時に、クマガイの手からも風が噴出した。
いわゆるブレーキをかけたのだ。
「やっぱ俺の思う通りに動くわ。 アクセルとブレーキ間違えて突っ込まねぇか心配したけどよぉ」
風の噴出時に、フォンテスの髪は吹き飛び宙を舞った。
その舞う髪の方へと手をかざしたアリスが叫ぶ。
「組成魔法!」
空中にみるみる組成され、出現するフォンテス。
下方を見ると、見上げるアリスと目が合った。
「面倒をかけたな」
「命を粗末にすんなボケ」
フォンテスはフッと笑い、アリスの横に降り立ちながらターンし、顎を引いて黒球を見た。
険しく睨む顔は凛々しく引き締まっている。
片やアリスは腕を組み、顎を上げて、眉を段違いにして黒球を見る。
黒球の方が高さがあるが、アリスは見下ろす角度である。




