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心のソーシャルディスタンスを取れ

(俺はこいつをしばき回してたことになっとるんよなぁ……)


 かつての記憶の中で、クマガイは有栖川(アリス)に突っかかり、その度に有栖川(アリス)は返り討ちにしていた。

 その記憶が偽りのもので、実際にはそんな出来事はなかったのだと、アリスは知っている。

 だが、クマガイは実際にあったことだと思い込んでいるのだ。

 アリスは、その齟齬(そご)を埋める為に立ち回りたいと思い始めている。


(優しさからホンマのことを言えずにいるの、主人公っぽいわ。 俺、主人公してるわ)


 自分がやっていないはずのクマガイへの仕打ちを背負うつもりのアリス。


(しっかし、これでクマガイが調子乗ったら、ネタバラししてやるわ。 俺、ホンマは何もやってないわ!っつってよぉ。 ……ん? 今俺が思ってることも、こいつにバレとるんか? どこまで分かるんや? 全部か? だとしたら嫌だわ……! プライバシーがほしいわ……! 心のソーシャルディスタンスを取れこの野郎……!)


 げんなり顔のアリスは、複雑な気持ちを抱き、心の中で吐き捨てる。

 その瞬間、背中で小さな、ポンッ、という音がした。

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