おう……
口ごもるアリスは、少しモヤモヤした気持ちで穴倉を見上げ続ける。
少女然とした小柄なアリスと、異形の蛇竜と一体化した長身の穴倉の背丈はだいぶ違う。
以前の穴倉との違いすぎるぐらいに違う今の穴倉を見ながら、ぼんやりと考えるアリスは、この空間に来る直前の穴倉の自爆を思い出していた。
(まぁよ、すげぇ威力だったとは思うわ)
横目でフォンテスを見るアリス。
フォンテスも、穴倉の自爆で消滅させられたが、それを気にする様子はない。
穴倉に敵意を向ける様子はない。
今のフォンテスは、死を通過点の様に思い、ある意味では軽視しているところがある。
それを何となくかんじるアリスだが、批判するでもなく、ただ不満げな視線を投げかける。
だがフォンテスは気付かずに、黒球を眺めながら、前傾姿勢となる。
「やってみるか」
フォンテスは、黒球に突撃するつもりなのだ。
そして何かあった時の為に、アリスに頼んでおく。
真っ直ぐな瞳をアリスに向けるフォンテス。
アリスは眉を八の字にして、嫌そうな顔をした。
「ヤな予感がするわ」
「アリス、今から俺は突貫する。 さっきのお前みたいに、あの球に攻撃が効かず、こちらがダメージを受けた場合は、回復を頼む」
「お、おう……」
「では行くぞ。 Ignition」
超高速で黒球へと迫るフォンテス。
その後ろ姿を見ながら、アリスは溜め息をつく。
「どいつもこいつもよぉ、俺を回復役と思ってる感あるわ。 そして俺はそれに流されとるわ」
その言葉を聞いたクマガイが、アリスの中からしみじみ語りかける。
『たまには流されてもいいんじゃない……? 俺なんか結構流されて来て、今の俺があるよ……』
『おう……』
アリスは目をかたく瞑り、への字口でうなだれた。
敵と一時的に共闘することには抵抗がないアリスだが、便利に使われるとなると、納得が行かない気持ちが溢れて来る。
そしてまた溜め息をついたが、既に飛び立ったフォンテスが知る由もない。
アリスはいわば、フォンテスの生殺与奪の権利を持っている。
しかもこれは、フォンテス本人に持たされた生殺与奪の権利。
「いや俺を信用しすぎだわ」
そう言いながらもアリスは、いつでも組成魔法を使える様に、手をかざして待機する。




