立ちはだかるマシアス
吸血鬼であるマシアスの目は、無論、シャノンと同じ色をしている。
血の様に真っ赤な色をしている。
シャノンは、吸血鬼の苛烈さ、勢いのある眼力を、業火の様な色だとも思っていた。
それは、従来の吸血鬼にはあてはまる表現ではある。
血の色にしろ、業火にしろ、戦い、侵略のイメージと結びつく。
シャノンの中ではそうだ。
しかも、吸血鬼の中でも素直でストレートな感情を見せがちだったマシアスは、真っ先に噛みついてくるイメージがある。
だが、今のマシアスには、ただ吼えるかつてのイメージがない。
静かに構え、機を伺うその姿は、吸血鬼の中でも冷静な、アランに近い。
「死にたいんだろ? なあ? シャノン」
とはいえ、言うことはさほど変わらない。
そのことに、シャノンは安堵と不安の両方をかんじた。
(思考形態はそのままなのね。 でも感情は抑えられている)
シャノンは、自分も吸血鬼であるが故に、感情を制御することが如何に難しいかを知っている。
だからこそ意識して、まずは吸血鬼という群れから脱しようとしている。
ある意味、形から入ろうとしているのに、マシアスは、一足飛びに、シャノンがこれから成そうと思う感情抑制を始めてしまっている。
それは、シャノンの現在のアイデンティティである脱・吸血鬼を既に遂行し始めている様なもの。
マシアスは期せずして、シャノンの歩もうとしている道の、一歩先にいるのだ。




