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吸血鬼ならでは
だが、不意にマシアスの目を見た瞬間、驚きで思考が停止した。
「……」
物言わぬマシアスが、一歩前に出る。
その目は落ち着いていて、怒りで突っ走る雰囲気はない。
むしろ値踏みする様に、シャノンをじっくり見て短剣を一本、ゆっくりと構える。
シャノンが知る、かつてのマシアスは、真っ先に突っ走っていた。
しかし、吸血鬼の中では、今や一番、気性を御しているのではないか。
単純なポテンシャルでは、イゴールが優れているが、侮れないのはマシアスだ、とシャノンは思った。
(ここに来て、マシアスが吸血鬼らしくない行動を取れるなんてね。 気を付けないと)
シャノンは内心感心し、安易に戦端を開くのをやめた。
マシアスの冷静さと、過信しかけていた自分に気付き、飛び出せなくなったのだ。
「ちっ……!」
慎重になれたのはいいことだが、しかし、先程までの自信は萎みつつある。
(厄介なものね)
シャノンは、吸血鬼ならではの感情や価値観を嫌悪している。
しかし、一対二に対する先程までの自信は、やはり、吸血鬼ならではの勇猛さが少なからず影響していたのだと思い、自分が吸血鬼なのだと改めて思い知ることとなった。




