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私が君に何をした
ガインの否定の言葉に一言呟いたデシネ。
それはアリスにはそっけなく見えた。
しかしデシネの胸の内は、実際には悲嘆と落胆の感情が渦巻き、押し黙らざるを得なかった、というのが真実である。
(あの時間をなかったことにするというのか)
デシネの中で、ガインとのひとときは、かけがえのないものとなっていた。
人と魔物。
種族は違いながら、相通づるものがあった。
(私が君に)
デシネがガインに惹かれたのは、魔物らしからぬ人間らしさと葛藤だった。
デシネにはそれが理解出来たし、賛同出来たし、同情出来た。
人間は忌み嫌うデシネであったが、魔物であるガインの繊細な心は、人でないのに人らしくかんじられて、心地がよかった。
なのに拒絶されて、対峙している現状がある。
それがデシネには理解出来ず、賛同出来ず、納得出来ない。
「私が君に何をしたと言うんだ!」
「ふん」
デシネの悲痛な叫びを、ガインは一笑に付した。




