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蕀の分裂

強大な力を持つ、蕀の様な上級パーティーのメンバーは、単独行動で他の街に移動してはならないと法律で決められている。

どの国でもそうだ。

そして、貴族がメンバーにいないパーティーの移動には、いちいち膨大な手続きが必要になる。

だからこそ、貴族のアレックスの脱退は大きな痛手だ。

「セオドールとダーハムが、果たしてどれくらいで到着してくれるかな?そして到着しても、移動の手続きにどれくらいかかるかな?」

「俺をハメたな、アレックス…!」

「勘違いするなよ。俺たちはお前の悪質な行動に落胆して脱退するんだ。蕀の名はお前にやる。血飲みの趣味も俺は我慢ならない。」

「…知っていたのか。」

「当たり前だ。お前が逮捕されない様に、街に入る度に便宜を図ってやっていたのが誰なのかぐらい、お前は知っておくべきだったな。これからはやりにくくなるぞ。俺がいないからな。では話は終わりだ。リーダーはお前なのだから、以後の引き継ぎについては不要だな。実務は全て俺がやっていたから、実質、蕀は機能しないだろうがな。」

アレックスの手際が鮮やか過ぎて、クロキは何も言う必要がなかった。

「俺は、無能な熱血漢を演じるのはやめたんだよ、ギルバーティ。しばらくこの街でのんびり血を飲んでいろ。そしてセオドールとダーハムが到着したら、アーマンダインに戻り、隠居するがいい。俺たちはお前を告発はしない。だが、守りもしない。」

アレックスとクロキが部屋を出て行った。

ベッドに腰かけているギルバーティがそのまま後ろに倒れ込み、ベッドに身を沈めると、窓から満月が見えた。

雲が流れて顔を見せる満月を見ながら、ギルバーティは呟いた。

「狂いたい夜だぜ。」

真剣な面持ちだったギルバーティは表情を崩し、笑った。

人間なんぞにいい様にやられたと、自分を笑った。

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