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悪役と悪薬

「おー俺にケンカ売ってやがんだろ? いいぜ、来いよ」


 受けて立つ気のアリス。

 デシネと視線を合わせ、目を爛々と輝かせる。

 すると死角を突く様に、黒棘が伸びて来る。

 と、その時。


「ぐっ!? うっ……」


 デシネが苦しみ出した。

 ニヤリと顔を歪め、(わら)うアリス。

 その顔は女神の類いというよりも、鬼女悪女のものである。

 デシネにとっては、不愉快なもの。


「何を笑っているのです」


 胸の内に渦巻き始める、不穏な反感は、本能的なもの。

 アリスはなおも嗤い、そして得意気に口を開く。

 その顔は悪役そのもの。


「効いてきたみてぇだなァ」


「……?」


 邪神となったデシネは、体の末端の痛みなど微細なものとなる。

 だからこそ気付くのが遅れた。

 とはいえ、痛みがないわけではない。

 微かに痛む場所がある。

 そびえ立つ邪神デシネの、山の様に巨大な体。

 その裾野(すその)に微かな痛み。

 そこには、手刀を突き立てている人物がいる。


悪薬(バッドメディスン)


 ジャン・ジャックである。

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