忠臣
『ひぃ、今邪神に見られた!』
アリスの中に魂として搭乗したクマガイは、目を丸くして叫んだ。
その表情は怯えから出たもの。
怯えの感情はアリスの心に直接伝わり、共有される。
いや、共有などという、ともすれば事務的なものではない。
二人の心と心が混じり合い、新たな心としての形になっている。
クマガイは邪神デシネという存在に怯え、アリスはどうしようもなく戦意が湧いている今、二人の心が混じり合うと、戦意と怯えがないまぜとなった、中途半端な気持ちとなる。
それは、アリスの動きに影響する。
デシネの攻撃を避けてはいるが、アリスは、動きが若干重くなるのをかんじ、クマガイに檄を飛ばす。
『ビビんじゃねぇ! 今は余計なこと考えんな!』
『わ、分かった!』
再び動きのキレが増した。
するとアリスが満足し、その心がクマガイに伝わる。
クマガイがかんじたのは、アリスからの心配と、そして、信頼。
直接流れ込んで来る、アリスの心に、クマガイは震えた。
アリスがデシネに向かって叫ぶ。
「お前もあの女も、絶対ブン殴ってやるわ!」
アリスの言葉は、誰に対しても荒い。
いつだって脊髄反射で、思うがままに感情を露にしている様に見えた。
だが、今のクマガイには分かる。
そうではなかったのだと分かる。
(……!)
クマガイは、泣きそうになりながら、必死に抑える。
流れ込んで来るアリスの心には、常に優しさが内包されていることを知ったからだ。
今で言うと、変わり始めたクマガイへの信頼と応援。
そして、シャノンに見限られたフォンテスへの同情、シャノンへの憤り。
(アリスの中では、俺もあの赤い人も、もう完全に仲間なんだよなぁ!)
アリスの心と繋がっているクマガイは、その純粋さに心が洗われる様で、そうすると、アリスへの親愛の気持ちが湧いて来て、これまで自分の心の中に漠然とあった、僻みや妬みの感情が溶けなくなって行く気がした。
そしてクマガイのステータスに刻まれる、〝忠臣〟の文字。
(俺、絶対)
アリスの心に応えたい。
クマガイの中にとめどなく溢れるこの想いが力となり、回避の動きを、キレを、更に鋭いものにしてゆく。
(こいつを裏切らないよ)




