違和感あれこれ
邪神化したデシネは、感覚を研ぎ澄ませ、アリスたちを見る。
デシネの手から無限に枝分かれする黒棘は、際限なく広がり続けている。
デシネが黒棘に意識を向けると、棘の全てが目になったかの様な超感覚があった。
そして、あらゆる角度からの映像が、一斉に脳に流れ込んで来る。
それは、アリスたちへの迅速で効果的な攻撃を可能にする。
……はずなのだが、それがそう上手くは行っていない。
デシネが繰り出す攻撃が、ことごとく当たらない。
(私は黒棘を完璧に操作している。 なのに、何故当たらない……? この違和感は一体……?)
邪神デシネにとって、この多重視点の超感覚、そして黒棘の操作などは、力のごく一端に過ぎない。
だが、そのごく一端ですら、途方もない力。
やすやすと凌駕されるものではないはずなのだ。
しかし、現状はどうだ。
アリスとクマガイは、邪神の超感覚を凌ぐ回避を見せている。
そこには、違和感しかない。
(何故こうも当たらない……?)
密やかに、胸のうちで驚愕しているデシネが、黒棘を経由して、アリスの目を覗き込む。
アリスの真っ赤な瞳は、爛々と輝いていて、まるで戦いを楽しんでいるかの様だ。
そして、焦燥に駆られるデシネは、そのアリスの目の奥に、別の輝きを見た。
(これが違和感の正体か)
デシネは、アリスの中に、クマガイの魂を見た。
不定形でゆらめくクマガイの魂を、アリスの中に、確かに見たのである。




