見てるよ、俺は
先程とは比べものにならない速度を出して飛翔するアリス。
デシネの体感では、フォンテスに勝るとも劣らない。
「危険ですね」
デシネがそう呟くと、黒棘は、今までにない速度で、これまでの何倍もの枝分かれをしてアリスを狙い、伸びた。
それをことごとくかわすアリス。
すると黒棘は、回避するかしないかの微妙なタイミングで枝分かれし、さらなる追撃を仕掛けてくる。
だが、アリスはそれすらも全て回避し、デシネへと翔ぶ。
「ッッッシャァァァッッッ行けやァァァッッッオッラァァァッッッ」
絶叫と共に、アリスの動きがさらに速く、鋭くなる。
そして、黒棘の刺突を振り切った。
デシネが感嘆の声をあげる。
「これを避けますか、魔人アリス」
そのデシネの言に答えるアリス。
「俺じゃねぇけどな!」
そう、この凄まじい回避は、アリスの意思によるものではない。
アリスの背中に張り付くクマガイが、風噴射を操作して、黒棘を回避しているのである。
デシネが鬼の形相となり、尚も黒棘を伸ばした。
「ならば下から!背後から!」
アリスがクマガイの能力で飛行している、と分かったデシネは、あらゆる角度から攻撃するが、しかし、アリスにはかすりもしない。
思わず不快げな声を出すデシネ。
「見えているとは思えませんがッッ!」
アリスの背中に張り付くクマガイの顔は、左方を向いている。
その顔は、苦悶の表情。
覇気あるアリスの顔と違い、クマガイは白目を剥き、泡を吹いている。
つまり、意識は失われていて、肉眼でデシネの攻撃を見ているわけではない。
しかし。
『見てるよ、俺は』
クマガイは全てを察知し、風を操って、黒棘の動きを回避し続けている。




