シャノンもそうだった
誰もがフォンテスの出自を疑ったのは、フォンテスがどうこうというより、ビクトーを信用していないという意思表示の意味合いが強かった。
当時のビクトーはまさに、どこの馬の骨とも分からぬ者であったから、フォンテスを連れてくる意図が分からず不気味だった。
今ともなれば、ビクトーは自分の目的の為に、どんな立ち回りでもする奴なのだと分かるが。
他の吸血鬼たちも同じ思いで、だからこその反発だったのだが、連れてこられたフォンテスを一目見た瞬間、シャノンは、ああ、本物の真祖だと思った。
間違いないと思った。
血の滴る様な真っ赤な髪と、自分たちと同じ赤い瞳。
理屈ではなく本能が、フォンテスを王だと告げた。
歓喜の感情そして、信愛と尊敬の念が後から後から湧いて出た。
他の吸血鬼も皆、憤りもどこへやら、フォンテスを歓迎し、涙した。
誰もが、何の疑問もなくフォンテスを受け入れた。
そしてその一挙手一投足がどんなものであっても必ず認めた。
そこに疑問を挟む余地はない。
シャノンもそうだった。
故に、親がシャノンを差し出したことも、何の疑問もなく受け入れた。
だがフォンテスは、それをよしとしなかった。
「お前にはお前の意思があんだろ」
そう言って、シャノンの人格を尊重してくれた。
きっとそれは、フォンテスの思想が詰まった一言。
路傍の石と変わらぬ扱いをよしとしない、フォンテスの願いだったのではと、シャノンは今は思う。




