密談
「雲がかかって、月が見えない。」
クロキは、昼間のギルバーティの態度に、言い知れぬ不安をかんじていた。
月にかかる暗雲は、まるで自分の心の様だ。
そう思うクロキは、隣の部屋のアレックスに念話を飛ばした。
クロキにとって〝蕀〟は、信用出来る仲間ではないが、アレックスだけは違う。
クロキにとってアレックスは、唯一信頼出来る相手だ。
普段は融通の利かない猪突猛進の正義漢を装っているが、本当はドライな策士で頭が切れる。
だから、クロキは懸念があると、必ず念話で相談する。
『…アレックス、起きているか?』
『昼間のギルバーティのことだな。』
『…相変わらず察しがいいな。おかしいとは思わなかったか?あの魔物はレインボースライムだった。だがギルバーティは逃がした。まさかとは思うが、ギルバーティは魔王の従者ではないのか?つまりあの魔物の…。』
『…いや、奴は魔王の従者ではない。かつて魔王本人だったのではないかと俺は睨んでいる。今日の奴の行動の意図は現時点では読めん。だが、魔王復活に関する何かであることは間違いない。』
クロキは息を飲んだ。
アレックスはいつもこうだ。
ハッキリ断言する。
そして、断言して外れたことがない。
『…なあ、アレックス?提案があるんだが…。』
『無理だ、クロキ。今は魔王ではないからといって、俺たちでギルバーティを暗殺するのは。』
『…。』
『落ち込むな。時間稼ぎの策はある。俺は今からギルバーティの部屋に行き、昼間のことで食って掛かって蕀を抜ける。お前も一緒に来い。奴には、表向き蕀のリーダーを続けてもらい、セオドールとダーハムの犯罪歴のかどで、この街に足止めを食う苦労をしてもらおう。ギルバーティにしても、血飲みの趣味が大きなスキャンダルになるぞ。そうなれば、アーマンダイン以外では大っぴらに動けなくなる。英雄パーティー蕀は、貴族の跡取りである俺の存在なくしては、犯罪を揉み消すことなど出来ないからな。ギルバーティは、かなりの期間、この街から出られなくなり、セオドールとダーハムも逮捕される。そして俺たちは、身動きが取れない蕀の代わりに蕀の仕事を引き継ぐ。』
『わかった。私はお前について行く。』
『そうしろ。用意が出来たらギルバーティの部屋に行くぞ。』
『わかった。』




