1729/2233
心地が悪い
片やシャノンは浮かない顔で、飛翔するフォンテスを見上げている。
そしてその心は、フォンテスが上昇すればする程に、際限なく墜ちてゆく。
(私の心が、我が一族から離れて行くのをかんじる。 だがもう、どうしようもない)
シャノンはごくごく小さく溜め息をつく。
他者が見れば、もはや溜め息とも思われないほどの、小さな小さな吐息ほどのもの。
だが、それはシャノンにとっては紛れもなく溜め息で、フォンテスや吸血鬼たちと袂を分かつ気持ちを固める、大きな大きな一息だった。
(私は、変わりゆく我が一族を許せないのね。 そして)
シャノンは、自分の心に幻滅しながら、しかし、どこか納得出来る思考に至る。
(いつの間にかフォンテス様を、受け付けなくなっていた)
思えば、かつてのフォンテスは欲望剥き出しの、粗暴で愚鈍な主だった。
今も、別段、フォンテスの頭がよくなったとは思わない。
だが、皆が不思議とフォンテスを慕って、吸血鬼らしからぬ寛容さを備えてゆき、そしてフォンテスもまた、吸血鬼に溶け込んでゆきながら、大きな器へと成長してゆくのが、シャノンにとっては、どうにも心地が悪い。




