不殺の誓い
そして、すぐに実行に移す。
どうしようもなく、せずにはいられなかった。
「あなた様の手足となって働けるのならば、本望ではございますが、私は実のところ、僕としていただける様な人間ではございません……!」
そう言って目を伏せるジャン・ジャック。
かつて、ガインとの戦いに敗れ、その命をもって、騎士たちの仇討ちは果たされた格好ではある。
だが、その騎士たちの命は戻らない。
「私は、かつて、殺人医師と呼ばれた、騎士殺しの修羅でございます。 あなた様に勅命いただける様な身ではなく……」
「あ?」
途端にアリスは顔の表情を歪め、ジャン・ジャックのステータスを閲覧する。
そこには確かに騎士殺しという記述がある。
しかし、アリスにとって、そんなものは障害にはならない。
(ゴチャゴチャうるせぇ奴だなオイ。 殺しが原因でゴネやがるならよぉ)
「わかったわかった、オメーがヌッコロした奴ら全員、俺が生き返らせてやるわ。 だから手伝えや」
「な……、なんと……!」
ジャン・ジャックは心底震えた。
(俺の罪を許すどころか、なかったことにしてしまう、と!? とてつもない方だ……!)
ジャン・ジャックは、恨みのかどで騎士たちを殺して回った過去を後悔してはいない。
だが、ヴァリッジ、エディと並び立つ時、血にまみれた己が手を思い、常に負い目と孤独感をかんじてもいた。
その負い目は、孤独感は、例え騎士たちが甦生されたとて、きっとなくなりはしないだろう。
しかし、ジャン・ジャックが背負ってきた心の荷物は、かなり軽くなる。
そしてそれは、負い目や孤独感を薄れさせてくれるだろう。
そしていつしか、ジャン・ジャックの頬を伝う涙。
アリスはその光景を至近距離で見て、苦笑いだ。
「お前の情緒キショいわ~。 泣くぐらいならコロすなよ」
その言葉は辛辣で、アリスとしては、思ったことをそのまま言っただけである。
だがジャン・ジャックには、女神からもたらされた福音にしか聞こえなかった。
もう泣くな、真っ当に生きなさい、との福音に。
故に。
「はっ! もう、騎士殺しはいたしません!」
心の底からとめどなく溢れてくるはずの騎士への恨み辛みが、そして殺人衝動が消え、何も含むものがない不殺を、素直な気持ちで誓うことが出来たのである。




