跪(ひざまず)くジャン・ジャック
邪神の肉が焼け焦げただれた匂いは、確かに食肉の焼けた匂いの様でもあった。
絶妙に食欲をそそる様な気がしないでもないが、しかし、ジャン・ジャックはゲテモノ食いの趣味はない。
(こんな強大な存在を目にしておきながら、何と緊張感のない……)
苦笑するジャン・ジャックがアリスを見ると、瞬間、アリスと完全に目が合った。
ジャン・ジャックは自分を復活させてくれたアリスを神の様に、母の様に慕う気持ちがある。
故に、アリスと目が合っただけで、昂るものがあり、内心冷静ではいられない。
(っ……!)
そして、対するアリスは、ジャン・ジャックが思う以上に、緊張感に欠けた態度をとる。
いたずらっ子の様な笑みを浮かべながら、歩いて、ジャン・ジャックの傍らまで近付いてきた。
「腹減らねぇ?」
そして、まるで昔からの友に話しかける様な、気さくな雰囲気で、声をかけてくる。
「そ、そうですね。 焼肉の様な香りがしますし」
「マジでそれだわ。 でもグロいよなぁ。 あいつ食えんのかなぁ?」
「ど、どうでしょう……?」
いつしか、ジャン・ジャックも笑みを浮かべていて、肩の力が抜けていた。
デシネにかんじた戦慄はどこへやら、ジャン・ジャックは完全に落ち着いている。
するとアリスが真顔になった。
「よぉジャン・ジャック、力貸せ」
「仰せのままに」
己が名をアリスに呼ばれたジャン・ジャックは、よろこびにうち震えながら、一も二もなく勢いよく跪き、頭を垂れた。




