黒い障気
そんなアリスと、いまいち分かっていないクマガイ。
そのやりとり、コントラストを見るデシネは、妻と自分の姿を重ね見て、目を細めた。
とはいえそれは、感慨で柔らかに細められた目ではない。
デシネの目は、硬く不快げな細められ方をしていて、そこには、ほの暗い殺意が込められている。
それは僻みにも似た、どうしようもない感情。
憎しみさえ湧いてしまうデシネは、アリスとクマガイの、ともすれば楽しげにすら見える雰囲気に虫酸がはしる。
とはいえ、アリスは美しい娘で、クマガイは面妖なぬいぐるみ、的な何かだ。
生物としての種類は違いすぎる。
だが、何かが合っていそうにも見える。
そして、何かが合う生物同士の関係性は、一緒にいれば、変わることもある。
同じ時を過ごせば、仲が深まることはままある。
それは、今のデシネと妻に出来ないこと。
デシネが求める日常の光景が、アリスとクマガイにある様に見えたのだ。
デシネの願いは、再び妻と共に過ごすこと。
だからこそ、恵まれている(様に見える)アリスたちに、ほんの少しの、しかし尋常ならざる黒い感情を抱く。
それは、妻との邂逅を願い、邪神となったデシネの想いと結びつく。
「滅ぼしてあげましょう、あなたたちを」
口調は丁寧だ。
しかし、冷静ではない硬い声。
黒い障気が、デシネの体から噴き出し、その姿を覆う。
渦巻く殺気をかんじたアリスが、眼光鋭くデシネを睨む。
クマガイも嫌そうに、デシネを見た。
そして穴倉も、燃える目つきでデシネを睨む。
穴倉の角が発光し始め、脈動が始まった。




