それは謝ります
目を瞑ると、当然、アリスの姿は見えない。
故に、いつ殴られるのか、もしくは蹴られるのか、その初動はクマガイには見えない。
この状態で攻撃されれば、かわすことは不可能だろう。
だがクマガイは、目を閉じる。
無抵抗で攻撃を食らうつもりなのである。
「っ……!」
歯を食いしばり、一撃で木っ端微塵になるであろう強めの打撃を待ち受けるクマガイ。
しかし、アリスの一撃はいつまで経っても来ない。
ただ、声だけが聞こえた。
「お前はアホか」
「返す言葉もないです」
「どうするつもりだったのか教えてほしいわ」
「話し合いで穏便に済ませようと思いました」
「それが何でああなるねん」
「俺にも何が何だか」
「お前アホだろ、まじで」
“アホ”という言葉を二度言われたクマガイ。
こうなると、アリスが発する“アホ”という言葉に対して、一言言い返したくなってくる。
(あんたも大概でしょうが!)
感情が爆発した。
クマガイは目を開けると立ち上がり、アリスを見上げる。
そして一気にまくしたてた。
「確かに俺はね、アホかも知れません! 一旦任せろとかね、言いました! なのに我慢出来ずにあいつを攻撃しましたよ! それはすいません! けどね!? 俺だってね!? 段階を踏もうとしたんですよ! そしたらね!? あいつが! あいつが何も言わないから!」
デシネを指さし、唾を飛ばして絶叫するクマガイ。
アリスは苦笑いだ。
「いやお前、そんなのよぉ、もうちょっとよぉ、根気よく行かなきゃダメだわ」
アリスの言葉にさらにクマガイはヒートアップする。
「何ーで俺だけ我慢しなきゃいけないのよ!? お前だっていっつもいっつも! 短気で! 根気よく行かないでしょー!? いきなりブッ飛ばすでしょうがー! 乱暴者ー!」
クマガイは、自分を見つめることが若干出来る様にはなったが、全てが忍耐に繋がるわけではない様だ。
そしてタガが外れると、むしろ以前よりそのキレ方がひどくなっている。
「お前があんな邪神なんかと! がっぷり四つで喧嘩するみたいなこと言うから! そんなリスクを背負われちゃたまらんでしょうがー! お前が生きてれば俺たちは生き返れるけど! お前が死んだら! 誰がお前を生き返らせるんだよ! 勝てるって決まってないし! この変なフィールドから逃げ出せるかんじもないし! なのに後先考えずに戦おうとする! お前が悪いんでしょうがー! そうでしょー!?」
目を見開いて、絶叫するクマガイに、アリスはつい笑ってしまう。
「うは、お前、めっちゃ逆ギレだわ……」
「それは謝ります! 本当にすいません!」
遮る様に、勢いよく頭を下げるクマガイ。
アリスは一息吹き出すと脱力し、肩を落とす。
「何だよお前はよぉ。 頭おかしいわ……」




