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何とか言えや!
そんなアリスの微妙な気持ちをよそに、デシネとクマガイは極めて近い距離で見合っている。
クマガイは次第に緊張がほぐれ、肩の力が抜けて、自然体に近くなってゆく。
片やデシネは、相変わらずクマガイを見下ろすのみ。
ただ沈黙して見下ろすのみ。
「……」
その無表情は、無反応は、若干クマガイの気持ちを逆撫でする。
「あのぅ、何とか言ってくれますぅ?」
「……」
しかしデシネは口を開かない。
「あのぅ、聞いてますぅ?」
「……」
やはりデシネは口を開かない。
「あのぅ」
「……」
「ねぇ」
「……」
「聞いてる?」
「……」
(このやろう!)
突然、クマガイの怒りが沸点を超えた。
デシネの視界からクマガイが消える。
「!」
その瞬間。
「何とか言えや!」
クマガイ渾身の鉄拳が、デシネの側頭部に炸裂した。




