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人違いです
しかしデシネの眼中にクマガイはいない。
デシネからすればクマガイは、図星を突いてきた珍妙な何かにすぎない。
癪には障る。
だが、こだわる対象ではない。
とはいえ、共に攻撃してきたのはアリス。
ここは見逃してはならない。
アリスは今、俗世では地上に舞い降りた天使と謳われている。
死傷者を甦らせる唯一無二の存在として、人々に愛されている。
それはアンデッド信仰を掲げるザハーク教団としては脅威だ。
己が身と人生を捧げて、愛する者の復活を願うザハーク教の信者、そして自分。
その苦難の日々を思うと、無償で軽々しく蘇生を行うアリスは、どこか忌々しいと思う対象であり、デシネの心に憎悪の火がともる。
「あなたが魔人アリスですね」
しかし感情を抑え、淡々とした口調で問いかけるデシネ。
アリスが一体何者なのか。
そして可能ならば懐柔する為に。
一瞬、沈黙の時間が生まれ、そしてアリスが口を開く。
「あのぅ、人違いですわぁ」
まさかの一言に、ガインが、デシネが、穴倉が、目を丸くした。
クマガイに至っては、驚きの大口を開けてアリスを見上げている。
「ウソ、何でしらばっくれるの!?」
「馬鹿野郎! しーっ、しーっ」
ちらりちらりとデシネを見るアリス。
デシネの目がすわる。




