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マシアスの不安
「何ッ!?」
声をあげたのは、マシアス。
魔法の短剣による追尾を得意とするマシアスは、直接的な戦闘型のフォンテスやイゴールと比べ、元来、索敵や哨戒に向いている。
本人としても、いくらか目ざとい、耳ざとい自負がある。
だが、男の動きはその過程の一切を感知させず、また、ゾミをいつの間にか、どこかへと隠した。
「どこだ!?」
辺りを見ても、どこにもゾミはいない。
「てめぇ、天使をどこにやりやがった?」
男の腕の中にあったゾミの体が、いつの間にか消えていること、そしてゾミの体が、どこにもないこと。
それがあまりにも異様だと、マシアスは思う。
「ちっ」
言い知れぬ不安が、マシアスの胸中に去来する。
男の移動後の姿を目視することしか出来ていないことが、マシアスの心を焦らせる。
この状況は、あまりにも後手に回っている。
そうマシアスは思い、どうにか打破せんと、攻撃を仕掛ける。
「死ねよ」
そう言って短剣を一振り投げるマシアス。
目にも止まらぬ速さで短剣は飛び、一直線に男に向かう。




