アリスの半笑い
プレの腕から吸い上げる血液の味は、穴倉にとっては甘美な味ではある。
しかし、他者から見た場合、どう考えても嫌悪感を募らせるもののはずだ。
得体の知れない化け物が触手を伸ばし、血を吸っているのだ。
その光景は、さも醜いものに違いない。
その醜さを、自分の仲間に見るということは、とてつもなくショックだろうし、傷つきもするだろう。
そう思わせることをしてしまった自分が、穴倉は少し嫌だな、とかんじた。
とはいえ、自分は化け物として生み出されたのだし、どうしようもないのだ、とも思った。
故に、一種の開き直りが、いつの間にか心のうちに根付いていて、思ったより心が動かなかった。
穴倉は、ある種、今の自分を受け入れることが出来ている。
だから、アリスを直視することを一瞬ためらいつつも、真っ直ぐ目を向けたのであった。
するとアリスの眉がしかめられている。
アリスの嫌そうな顔を見た穴倉は、自分自身に抱いた嫌悪感が急激に増大してゆくのをかんじた。
しかし平静を装い、いかにも何とも思っていないかの様な、無感情そうな、平坦な声を絞り出し、アリスに語りかける。
「……これが俺なんだよ。 俺はやっぱり化け物なんだと思う」
プレの腕を喰う穴倉は、体全体で脈動を繰り返す。
その様子を見るアリスが、穴倉を汚いものを見る様な目で見ながら、しかし、おどけた様子で言う。
「ウェェ~、キィッショオ~」
その言葉はどこかコミカルで、しかもアリスは半笑いになってゆく。
それは穴倉を気持ち悪がる態度に変わりないのだが、しかし、ただ純粋に気持ち悪がる雰囲気でもない。
バカなことをした仲間を茶化す様な、何だか許容している雰囲気が含まれている。
微妙な態度ではあるが、穴倉にとってはこのアリスは、何だか救いとなって、自己嫌悪の気持ちは安堵の気持ちへとすり替わった。




