己も心のままに
(己は魔物だ)
いまだ、苦悩を抱えていた。
何度吹っ切れても、ガインのねじれた立ち位置は変わらない。
魔物でありながら、聖騎士と呼ばれるガイン。
人間のモラルを植え付けられ、義妹さえいて、人間並みの豊かな感情を持つガイン。
故に、きっかけがあれば苦悩してしまう。
(だが、神殿騎士でもある)
ガインの思う聖騎士は、正義の為に戦うべき存在だ。
しかしそれは、あくまで神殿の正義だ。
神の使徒として戦うべき、というのがガインには刷り込まれている。
(ならば、天使に弓引いた場合、俺は反逆者か)
ガインはアリスの顔を見た。
天使プレを囲めと指示したアリスは、無邪気な笑顔でプレの後方へ回ろうとしている。
そして喜色に満ちた声を出した。
「なぶり殺しにしてやるわ!」
そのあまりにもストレートな物言いに、ガインは内心苦笑した。
(アリス、お前はいつだって自由だな)
少し呆れも入った気持ちで、ガインはアリスを眺め続ける。
アリスのやろうとしていることは、正々堂々と真逆の、卑怯なものだ。
言葉からは悪意もかんじる。
しかし、アリスの悪意には、明るさや無邪気さがある。
だからなのか、幻滅はしない。
「己がお前の“ダチ”でいられることが、己の本当の気持ちなのかもしれぬ」
そう言ったガインは、苦悩をまた、心のどこかに押し込めた。
「だから己も心のままに戦おう」
ガインが目を細め、プレを見据えた。




