タシリモの閃き
しかし、バンダーベルグは何か信用出来ない。魔王の出現にしろ、自分の正体にしろ、隠しておけばいいことだ。本当に腹を割って話したとは思えない。思惑があるのは明らかだ。
そのバンダーベルグが口を開く。
「エオエル殿の切り札は聖騎士であったか。なるほどなるほど。しかしそれは、いよいよ危ない時まで温存すべきですな。件の魔王たちについては、まず私に任せてみてはくれまいか。」
この申し出は不可解だ。協力するのではなく任せろなどと、太っ腹にしてもあり得ない。タシリモは考える。ベルティザは、魔王出現によって魔力地帯が出現した。しかし、このブレブロに現れた魔王と見られる存在は二体。にも関わらず、ブレブロには何も悪い変化はない。むしろ、薬屋の少女の魔法は、人間に女神の加護を与えるし、影は人畜無害だ。彼女らは、魔王ではなく良い存在なのではないか?息子を復活させてくれた、あの少女を女神、人畜無害な影ぼうしを、聖騎士ガインの様な変異種と仮定すると、むしろ彼女らを抱き込める可能性の方が高いのではないだろうか?バンダーベルグは、彼女らに単独で接触して、自分のギルドの主力にするつもりではないか?ここは一つ、カマをかけてみるか。
「それには及ばない。まずは我がブレブロ冒険者ギルドの新しい主力となる〝悪童〟に任せてみるつもりだ。」
「何故だ!?妖霊に任せてくれればよかろう!」
悪童より妖霊の方がランク的に遥かに上ではあるが、この反応は不自然だ。
「今のところ、少女と影ぼうしは、悪いことを起こしていない。それどころか、このブレブロを守る様な発言もしていたとすら聞く。もう少し調査が必要だ。場合によっては、悪童以前に私が直接接触して、我がギルドに彼女らを引き入れられないか、努力してみようとすら思い始めている。」
「な、何を言っているタシリモ殿!?」
「声を荒げて、どうなされた、バンダーベルグ殿。お疲れですかな?では市中の宿を手配しましょう。まずは旅の疲れを癒されよ。そして明日は、我がギルドにご招待させていただこう。そしてエオエル殿は冒険者が好きなご様子。よければこの後、悪童の面々との食事会などご用意させていただきますが?」
タシリモの勝ち誇った言葉に、バンダーベルグが眉をひそめ、エオエルが破顔した。タシリモは決意した。この足で、彼女たちに接触しに行こう、と。




