第77話 龍人
『忌まわしき者、おぞましき者どもめ――』
高いが重厚に響く、およそ人には出せない奇異な声。
人影は、忌々しげに、吐き捨てるように言うと、その縦に長い蛇のような瞳でシュウを見据えた。
鋭い牙が見える咥内からは、時折肉食獣のような唸り声がする。
『海の物どもの助力を得、ここまで来て我が主の命、果たし損ねる訳にはいかぬ――忌まわしき者よ、貴様この近くの群れから来たのか?』
内からあふれ出る感情を抑えながら、そうシュウに問いかける。が、しかし。
「な、なんだこここのモンスター!?」
その場に、足元から砕ける様に座り込んだシュウは、ただ震えながら、建物から出てきたそいつを見るだけであった。
全身を鱗で覆われ、鋭い爪と牙、そして赤い瞳を持つ全長2m近い人型のモンスター。
リザードマン――ファンタジー物に慣れた日本人ならばそう思うかもしれない。
だが、この世界において、リザードマンは大陸で人間社会を構成する1種族でありモンスターではない。
なにより、リザードマンには目の前のそれが持つ背の翼や角はないのだ。
『答えぬか!』
自分の問いかけに反応しないシュウに、声を荒げる。
「ひっ! 叫んだ!」
だが、それはますますシュウを怯えさせるだけであり、到底対話は望めそうにない。
無理もない。今のシュウは完全に怯えきっている。
それよりも、もっと重大な点として、
『クッ! 理解し難き者どもめ! やはり言葉を解さぬか』
その言葉はシュウの知らない言語であった。
『黙っておれば見逃しても良かったが、致し方ない。今ヤツらに見つかる訳にはいかぬ。無明の者よ、理解し難き者よ――ここで死ぬがよい!』
そう言いながら鋭い爪を剥き出し、シュウへと飛び掛かった。
シュウこと西宮朱雷斗が物心ついた頃、日本は既にこの世界へと転移しており、関東から関西、関西から九州へと日本の中心が移っていく最中であった。
大在の人間が西へと逃げる中、様々な事情から東に残った日本人も多くいたが、シュウの両親もまた東に留まった人々の一員であった。
シュウの記憶にある古い記憶は、常に謝罪と共にあった。
「ゴメンな。本当なら、今頃は小学校に通っている歳なのに」
「もっと美味しいものを食べさせてあげられたのに」
「あの時、西に行っていれば」
「なんでこっちに残ってしまったんだろう」
「置いて行かれた――」
「見捨てられた――」
「――ごめんね、朱雷斗」
「――すまんな」
繰り返された両親の言葉に、シュウは自分の境遇を理解した。
――そうか、自分はひどい生活をおくっているんだ。
――本当はもっと楽しいはずなんだ。
小学校こそなかったが、地元には多くの友達がいて楽しかった。
しかし、本当ならその小学校とやらでもっと楽しかったのだろう。
今は先生が子供たちを集めて勉強させているけど、こんなつまらないことは小学校にいけばないのだろう。
図書館で色々なマンガを読むのは楽しいけど、西にいっていればもっと楽しいことがあったに違いない。
お母さんの作ってくれるご飯は美味しいけど、ここにいなければもっと美味しい物が食べられたんだろうな。
それもこれも、自分たちが見捨てられたからこうなっているんだ。
両親の無自覚の不満や愚痴を幼い心が一身で受け止め続け、そしてあの自衛隊員の一件を経て、10年も経つ頃には、
「なんで俺ばっかりこんな目に遭うんだよー!」
嘆くばかりで何もできない少年がこうして出来上がっていた。
『くっ! 避けたか!』
腰砕けになっていたシュウであったが、間一髪横に転がることでその一撃を避けることができた。
狙っての行動ではなく無我夢中の動きである。
それ故に後が続かない。
地べたに這いつくばる形になっているシュウは、もはや次の一撃を避けるすべがない。
先ほどは飛び掛かったために、シュウの動きに咄嗟に対応できなかったリザードマンもどきであったが、
『殺す』
もはや避けようのないシュウに対して、今度は確実に仕留めるため一歩一歩近づいていく。
「な、なんでだよ……なんで俺ばっかりこんな……」
間違いなく死ぬ。
このままでは確実に。
「くそう! くそっ!」
そんな事態に、無力なシュウはただ悪態つき、そして嘆くしかない。
――いや、もう1つだけある。
『無明なる者よ、死ね!』
シュウの目の前にたったリザードマンもどきが手を大きく振りかざす。
「だ、誰かたすけてーーーー!!!!!」
シュウに出来る最後のことは、ただ助け求めるだけであった。
「承りましたわ!!」
「え……」
『ぬお!?』
高らかな女の声と共に、乾いた音が2つ。
直後、リザードマンもどきは体に衝撃を感じ咄嗟にその場を飛び退く。
『何やつ!』
「あ、シュウは無事ね」
危機一髪だったわりに軽い調子でそう言ったのはユナ。
「かすり傷1つなしか……」
その隣では拳銃を構えた吉田が忌々しげな顔をしている。
「そんな小さな砲では当然でしょう。やはり砲は大きくなくては!」
「硬すぎるんだ。この銃でも小型モンスターには十分効果はある」
「今効果がなくては意味がありませんわね」
そして最後の1人。
背に愛用の鎚を背負い、腕組みし仁王立ちする女の姿。
「マイラ、さん」
「まったく。飛び出していったかと思ったら――こんなことまで、同じような目に遭わなくてもよろしいでしょうに」
「どうした?」
「なんでもありませんわ」
吉田の問いに、マイラはそう言って誤魔化した。
「な、何しにきたんだよ!」
「今言ったばかりですわよ。あなたを探していたら、助けを求められましたので」
「ほっといてくれよ。お前たちになんか助けられたくないや!」
そう言い放つシュウであるが、それが虚勢であることは一目瞭然である。
腰が抜けているのか、うつ伏せになりようやく上半身だけ起こしている状態では、その姿だけで言葉は否定される。
「ダメですわ。もう受けてしまいましたので、途中でのお断りはお受けいたしません」
「……クーリングオフもないのね」
「訪問販売じゃないからな」
「そこ! 意味の分からない会話はおやめなさい!」
「……!」
マイラの言葉に一瞬茫然とするが、すぐに反発の言葉がシュウに浮かぶ。
「うるさい! あんたに助けられるくらいなら――」
「死んだ方が良かった、ですの?」
「うっ……」
「引っ込みがつかないのは理解してさしあげますが……」
「やめろよ!」
(もう少し言葉を選んでやればいいだろうに)
言いあうマイラとシュウを見ながら、吉田は内心そう思う。
マイラは自分を成長していないと自嘲いていたが、
(確かにまだ若いな)
「しばらく黙ってなさい。言いたいことは後でいくらでも聞いてさしあげますわ」
感情的になっているシュウとこれ以上言い合っても仕方ないとばかりに、マイラはそう言って言い合いを打ち切ると、自分とシュウとの中間でジッとこちらをみているモンスターへ意識を集中させた。
『……忌まわしき者どもめ。逃げる算段でもつけたか』
マイラとシュウ。両者の間で不毛な言い合いにさらされていたリザードマンもどきは、会話を理解出来ないためどうやら重大な勘違いをしてしまったようであった。
が、思わぬ人物がそれを訂正する。
『違いますわよ』
『ぬぅ!? 貴様!』
「ロデ語か」
目の前で交わされるその会話が、大陸での一般言語であると気付いたのは吉田であった。
「ロデ語?」
「大陸で使われている言語だ」
その答えに、問いかけたユナは「なるほど」と納得するがすぐにまた首をかしげる。
「でも何でモンスターが大陸の言葉を使うのかしら。そもそも、喋るモンスターとか初めてみたんだけど」
「――人語を喋るモンスター自体はいる」
吉田は、京都で遭遇した妖怪を思い出して言った。
「しかし――マイラ、このモンスターはなんだ!?」
「龍人ですわね」
「りゅうじん?」
「大型モンスターの中でも伝説に謳われる別格のモンスター。フェニックス、リヴァイアサン、大鵬、フェンリル、テュポン、巨神」
――お主は?
不意に、マイラの脳裏に巨大な、人の姿をした存在が蘇る。
全身を一瞬の身震いが襲うが、気取られぬように感情を抑え込むと言葉を続ける。
「そして古龍。そういった存在に仕える眷属で、龍人はまさにその古龍に仕える種ですわね」
「古龍?」
「数千年、数万年を生きていると言われる巨大なドラゴンですわ」
「そういうことか!!」
その説明で、吉田はこのリザードマンもどき――龍人が何であるかに気付く。
11年前に日本が遭遇した2体の巨大なドラゴン。
たった1撃で自衛隊の部隊を吹き飛ばした、他とは一線を画す強大な力を持つ龍。
「北の大地からやってきたドラゴンの眷属か!」
「北――なるほど。ではロデ語を話す理由も分かりますわ。あの地には、大陸から冒険者が渡っていたそうですし、少数ながら住んでいた者もいると聞いていますわ。そこから覚えたのでしょう」
その正体を推測し、納得するマイラと吉田であったが、
「あのさ……正体もいいけど、結局どうすんのこの事態?」
ユナの指摘通り、今重要なのは正体ではなくこの場をどうするかである。
分かっていますわ、と言いたげな表情をして、マイラは龍人に声をかける。
『そこの方。何故その子を襲ったのか分かりませんが、見逃してくださらないこと?』
『――ならぬ。一度は見逃そうかと思ったが、既に決めた。もはや覆らぬ。我がここにあること、何人にも知られぬわけにはいかぬ故』
『他言は致しませんわよ』
『理解しがたき者どもよ、我がその言を信じる証が無い』
その言葉を聞きマイラは溜息をつく。
古からの存在やそれに仕える眷属は総じて古風な考え方をし、また大変頑固な質が多い。
一度己が決めたことを、他者――ましてや人間ごときの言葉で翻したりはしないであろう。
「ダメか?」
「ダメですわね」
吉田にそう返しながら、マイラは背負った鎚に手を伸ばす。
「私があれを抑えてなんとか隙を作ります。機を見つけてシュウさんを拾って逃げてくださいまし」
「――強いのか、アレは?」
鎚を手にしたマイラの神霊力が膨れ上がる。
力が見える様になった吉田には、今のマイラとあの龍人とにそれほど神霊力に差があるようには見えなかった。
その問いに対して、マイラは何時ものように不敵に笑みを浮かべながら、
「たぶん、勝てませんわね」
と、あっさり言った。
龍人とはそれほどの存在なのかと思いながら、マイラから龍人へと視線を向けると、
「ん?」
龍人の表情が――おそらく――驚きの色を浮かべていた。
『その力――なぜ、貴様からその力が!』
大きく目を見開き、龍人が吠える様に言った。
『なぜ巨神の力を持つ!?』
(巨神? さきほどマイラがあげた、特別なモンスターの一種か)
『その武器を持った瞬間、貴様の力の質が変わったな。扱う武器により己が性質を変える術がある。それだな! だが、なぜそんな力を持っている!?』
よほどあり得ないことだったのだろう。
龍人はしつこくマイラへと問いを重ねる。
『貴様、おぞましき者たちとは違うのか? 巨神の眷属か!?』
だが、マイラは両手で鎚を構えると、問いに答えることもなく龍人へと駆け出した。
『ぬぅぅ! 答えぬか!!』
問いを無視された龍人が叫ぶ。
「簡単に手の裡明かすバカがどこにいらっしゃるかし――ら!」
そう言い捨てながら、大上段に振り上げた鎚を叩きつけた。
重さなど感じさせない様にマイラは鎚を振るうが、鎚その物は決して軽い訳ではない。
鎚の重さ、遠心力、神霊力により強化された腕力、そして神霊力その物。
それらを込めて叩きつける、当たれば必死必殺の一撃。
『愚か者め!』
「くっ!」
その一撃を、龍人は突き出した両手で受け止めた。
衝突の瞬間に互いの神霊力が弾け相殺される。
込められた神霊力が一時的に消え、後に残るは純粋に鎚としての一撃の威力のみ。
それでも、致命の一撃には変わりないはずだったが、
『グゥゥゥゥゥウ! ヌゥン!』
『さすが――』
鎚を押し返されたマイラは再び構えを取りながらそう呟いた。
『当たり前だ。如何に巨神の力といえども、貴様は所詮人。龍の眷属たる我とはその身が、底力が違うわ』
呟きを拾った龍人の言葉は、どこか自慢げだった。
『――わざと、今の一撃を受け止めましたわね』
『渾身の攻撃と分かったからな。無駄な希望を抱かせんためにも、敢えて受けて力の差を分からせたまで。巨神の力を振るいし者よ、貴様では我には勝てぬ』
最大の一撃を受け止めたからこその自信。
獰猛に牙を剥きながら龍人はマイラを見据える。
『貴様の力、気にはなるが――まあ良かろう。少なくとも我には通じぬ』
(やはりこうなりましたわね……)
龍人の指摘はマイラの懸念通りであった。
吉田の見立て通り、今のマイラと龍人とに神霊力での差はほとんどない。
だが、そもそもの生物としての力の差が大きい。
単なる人間であるマイラと、モンスター、それも古龍の眷属である龍人の差。
龍――ドラゴンのそれに準じる鱗と怪力を持ち、更には様々な術を使うのが龍人だ。
そもそも人が理由もなしに挑む相手ではなく、ましてや1人で挑むなど自殺行為でしかない。
(かといって、吉田さんやユナさんでは戦力になりませんし)
神霊力を得たばかりの吉田や、そもそも戦う人間ではないユナでは足手まといである。
『どうした、たった1回挑んで終いか?』
『嫌ですわ。そっちが来るのを待っているのでしてよ。もっとも、今の一撃は流石に無傷ではなかったようですので無理でしょうが』
『むぅ……』
マイラの言う通り、一見では分からないが、先ほどの一撃は流石に無傷ではなかった。
受け止めた腕は骨こそ折れていないが凄まじい激痛に襲われ、全身を走った衝撃は未だ龍人が動くことを縛っている。
『私たちを殺す気なのですから、さっさと動けば良いでしょうに悠長におしゃべりなさっていますので――』
龍人に冒険者1人で挑むという蛮勇。
だが、今のマイラであれば決して蛮勇とは言えない。
勝つことは無理でも、時間稼ぎくらいならば十分可能である。
『なめるな!』
マイラの言葉に自尊心を傷つけられた龍人は、未だ回復していない腕をかざしマイラへ飛び掛かる。
それは、先ほどシュウに襲い掛かった時よりもだいぶ遅い。
挑発に乗ってきた龍人に、マイラは構えた鎚を大きく横薙ぎに振るう。
先ほど一撃には遠く及ばない攻撃だったが、龍人は受け止めようとはせず後ろに跳び下がりそれをかわす。
やはり腕の損傷は決して小さくない。
そう判断したマイラは、立て続けに鎚を振り回す。
以前、大阪でやった鎚を軽々と振るえるマイラだからこそ出来る戦法だ。
一撃で人の頭程度であれば潰せる鎚が、まるで軽い棒切れを振り回すかのように上下左右から次々と襲ってくる。
未だ回復しきれていない龍人はただそれを避け続けるしかなかった。
「押しているじゃない」
「そうだな」
龍人の隙をつきシュウを確保しようと機をうかがっていたユナと吉田は、一方的な攻勢のマイラにさきほどの勝てないとはどういうことだったのかと疑問に感じていた。
ギリギリでマイラの鎚を避け続けている龍人だが、そうそう避けられ続けるものではない。
一方、鎚を振るうマイラ。普通あんな物を振り回していれば、あっという間に腕力と体力の限界を迎えそうなものだがその気配は今のところない。
(巨神の力、というもののせいか)
龍人が言っていたマイラの巨神の力。
それがどういう類の物であるか吉田には分からないが、鎚を振るうマイラはおそらく常人とは違った状態にあるのだろうと推測は出来る。
勝てるのじゃないか。そんな想いが闘いを見る2人に生まれていた。
(不味いですわね)
そんな2人の想いとは裏腹に、マイラは内心徐々に焦り始めていた。
確かに今は押しているが、鎚をかわす龍人の動きが少しずつ良くなっている。
上位モンスターの大半がそうであるように、この龍人の回復力も非常に高いのであろう。
(やはり隙を見て逃げるしかありませんわね)
回復されてしまえば反撃がくる。
マイラの一撃を耐えた龍人と違い、マイラの方は相手の一撃を耐えられるのか甚だ疑問だ。
龍人の持つ鋭い爪。
あれがもし、ドラゴンのそれとほぼ同等であれば、マイラの鎧など軽々貫いてしまうであろう。
一撃では仕留められない相手に対し、こちらは一撃でお仕舞。
それは流石に分が悪すぎる。
焦るマイラだったが、龍人も防戦一方であることに焦っていた。
そもそも偉大なる古龍に仕える龍人が何者かと対等に戦うという事態は滅多にない。
故に、力はあっても戦いの機微に疎い部分がある。
(おのれ……)
このまま時を稼げば逆転出来るのは理解していても、そこまで一方的に攻められることに自尊心が耐えられなかった。
『!?』
それまでのかわすだけの動きから、右からの一撃を大きく後ろに跳び下がり避ける。
一瞬開いたマイラとの間。
突然変わった動きにマイラが対応し詰める前に、龍人が大きく息を吸った。
(好機ですわ!)
龍人の意図を悟ったマイラは、詰め寄ろうとした動きから逆に後ろに跳び下がり鎚を構えると、そこに神霊力を込める。
次の瞬間、マイラの読み通り龍人はその口から炎を放ってきた。
離れていても凄まじい熱量を感じるドラゴンの炎の吐息。
「いかん!」
「マイラ!?」
それを正面から迎えるマイラは、
「爆散なさい!」
構えた鎚を振るい、何もない虚空を打ち据えた。
マイラに迫る炎がその手前で何かに触れ、炎が砕け飛び散る。
赤い閃光と熱風が辺りを駆けた。
マイラに打ち据えられた空気の塊が龍人の炎を弾いたのだ。
『ぬおおお!?』
龍人の視界が弾かれた炎に包まれる。
(今ですわ!)
砕けてなお髪を焼く炎の残り火に顔をしかめながら、マイラが吉田たちを見る。
炎に視界を遮られた龍人の隙を、2人は見逃してはいなかった。
龍人の横を駆け抜け一気にシュウに駆け寄る。
「確保ー!」
「大丈夫か?」
そう尋ねながらも、吉田は返事も聞かずにシュウを起こし背負おうとする。
シュウが何か言おうとするがそれを聞く暇はない。
マイラがこのまま倒してしまいそうな気もしたが、ここはあくまで予定通りシュウを確保して逃げ出すべきだと吉田は判断した。
倒してしまえばそれはそれで良い。だが――
『ぬぅ! おぞましき者どもめ!』
隙を突かれた龍人が怒るがどうしようもない。
『行かせませんわよ』
もし逃走しようとする3人を追えば、後ろからマイラが襲い掛かる。
マイラを倒してから追いかけるにはマイラは強敵であり、その間に3人は逃走を果たす。
全員の始末を目的とする龍人にとっては万事休す事態。
もはや手はない。
――そんな事態に直面したからこそ龍人は、
『グオオオオオオオオオオオオオオオオン!!!』
遅疑なく奥の手を使った。




