第67話 クエスト『お伊勢参り』2
「――――」
それを設置すると同時に、境内が清廉な気で満たされるような感覚に包まれる。
神霊力を扱えない吉田や李ですらそれだけの力を感じるのだ、一体それがどれほど凄まじい力であるのか想像もつかない。
「さて、取りあえずはこの様なものじゃろう」
振り返った天照は後ろに控えていた吉田と李に声をかける。
「吉田よ。鏡は残り何枚じゃ?」
「残りはちょうど10枚です」
「10か……口惜しや。この後は場所を絞らねばならぬのう」
「岡山、兵庫、大阪。その後の京や奈良では神社は無数にあります。仕方ないでしょう」
「そうじゃのう。ところで、マイラの方は終わったかえ?」
そう尋ねられた李は苦笑いしながら首を振る。
「さすがにまだ終わっていませんよ」
「なんじゃ、だらしないのう」
「何故私が草刈などしなければいけないのですか!」
「いいから手を動かしてくださいお嬢様」
岡山県のとある神社の片隅。
自分の従者であるレオと共に、剣を振り伸びきった雑草を刈るマイラがそこにいた。
伊勢まで自分を連れて行くように依頼した天照であったが、依頼は単に伊勢まで連れて行けば良いというものではなかった。
そもそも、あのヤマタノオロチという名の特異種ヒドラを倒してしまえる太陽神・天照大神に、護衛など必要はない。
彼女が求めたのは荷物運び要員であった。
「これを、ですの?」
「そうじゃ。わたくしが用意した『鏡』。これを伊勢に向かう途中、空いておる神社に安置しわたくしの社にするのじゃ」
彦島の冒険者ギルド宛てに運送会社から送られてきた荷物。
その中身は20枚ほどの鏡であった。
「それにどういう意味があるのですかな?」
尋ねたのは吉田である。
「分霊よ。わたくしの神霊力を込めた鏡をご神体として設置すれば、離れておっても地に流れる力の流れを通じつながることが出来る。今でも各地に繋がってはおるが、やはり1度直接赴かなければいかん」
「地に流れる力……地脈、龍脈というわけですか」
さすがに李はすぐにそれに思い当った。
地球において、地脈・龍脈あるいはレイラインなどと呼ばれるそれだ。
神霊力に関する情報は徐々に出回り始めているが、この様な話は初めてである。
それとは別に今の話しには気になる点もあった。
「鏡には特別に処理も施されていないようですが……確か普通の無機物には神霊力を貯めることが出来ないと言う話ではないのですか?」
「む? 出来るぞ。現にやっておるではないか」
李に指摘され眉を顰める天照。
こいつは何を言っているのだ、とでも言いたげだ。
「李さん。物事には何事も例外がありましてよ」
横から話に加わってきたのは、興味深そうに鏡を検めていたマイラであった。
「物に神霊力を込める時の例外。確かに聞いたことはありますねぇ。でも、それは元々生き物だった、例えば木などや特別な文様を刻んだ場合だと思っていましたよ」
「それ以外の例外の1つが神の神霊術ですわ。神々は物に神霊力や術を込めることができますの。その多くはこうして自分の神殿を確保する神具ですけれど、中には武器に込めそれを与えられた者などもおりますわね」
「ほ~伝説の武器というやつですか」
「まあ伝説上の話というわけでもありませんけれど……」
と少々言葉を濁すマイラを、天照は何か言いたげに見ている。
その視線に気づいてか気づかずか、李は質問を重ねる。
「それは量産できる物なのですか?」
「どうかしら。神々の力が膨大だとはいえ、所詮1柱で作る者ですし。それに――」
と、その視線を天照へと向ける。
つられてそちらを見る他の満々に対して天照はその美しい顔をすませて言った。
「嫌じゃぞ。なぜわたくしがそんな事をしてやらねばならぬ」
「と、こういう風に神々が何の見返りもなく無償で何かすることはありませんわね」
「なるほど……」
(つまり、それなりに条件がそろえばやってもらえるということか)
話を聞いた李と吉田は同じことを考えていた。
もし神々の力を込めた武器が用意出来れば――。
現在自衛隊の神霊研がようやく試作した神霊力対応のミサイル・ロケット弾は準備に手間がかかり過ぎるため量産が難しい。
だが今見た限り、神であれば簡単に神霊力を簡単に込めているようだ。
それさえあれば大型モンスターも敵ではなくなる。
東日本奪還は大きく前進するはずだ。
「鏡は割れぬように慎重に運ぶのじゃぞ。準備ができ次第伊勢へ向かうぞ」
彦島で準備を整えた一行は、その日の内に東へと向かい出発した。
いつも通りの鎧と武器を装備したマイラとレオに対し、天照はどこで手に入れたのか女性用のトレッキングパンツ・シューズに薄い長袖のジャケット。その上にツバ付きのキャップというウォーキングやハイキング登山をするかのような動きやすい装備。
吉田と李もそれに準じた山登りでもできそうな服装に、それぞれ大きな荷物を背負っている。
吉田が持つのは天照から託された鏡だが、李の背負う荷物には別の物が入っている。
「ま、中身は後でのお楽しみということで」
彼らの依頼に必要な物――表向きは彼らも別件でマイラ達に護衛依頼をしており、この荷物はそれに必要な物だと言う。
彦島を出発した一行は、岡山まで山陽道を東へ向かった。
途中、天照が目を付けた神社に立ち寄り、冒頭の様に鏡を安置していく。
選んだ神社は、基本的には天照を主神や副神として祭る神社だ。
「主たる祭神がおらぬ以上、代わってわたくしが治めるのは当然であろう」
とは彼女の言い分だが、体の良い乗っ取りであろうというのが他4人の共通した想いである。
もっとも誰もそれを口にはしなかったが。
こうして、各地で神社に立ち寄りながら数日をかけて一行は岡山に到着した。
「雨も降らずここまでは順調でしたね」
「当然じゃ。太陽神たるわたくしが、降らぬようにしておったからな」
「さ、さすがです」
「ほほほほほほほほ!! 好いぞ好いぞ」
「……」
「どうしました、マイラさん」
「な、なんでもありませんわ!」
この数日で、すっかり天照の小間使いのようになってしまった自分の従者に頬を膨らませ不機嫌そうな顔をするマイラであったが、それを他人に指摘され認めるほど素直ではなかった。
「彼は、あなたの従者なのでしょう?」
「そうですわ。付けられたのはほんの2,3年前ですけれど。気に入っておりましたので今回日本まで連れてきたのです」
「なるほど。しかし従者とは、まるで貴族や王族のようですねぇ」
「……何がおっしゃりたいのかしら?」
李に対してマイラの口調が少々きつくなる。
「いえいえ。深い意味がありませんよ。この世界の国とはまだまだ交流不足ですから。我々が元いた世界ではそういうものでしたので、思ったまま言っただけです」
「おっほほほほほほ!! なるほど。ですが、我がイカライネン家はルマジャンでも有数の商家。従者の1人や2人ついて当然でしてよ」
「なるほどねぇ……」
(ま、簡単に尻尾は出しませんか)
李と吉田の目的はあくまでこのマイラの正体を確認することである。
ジャンビ=パダン連合王国の有力貴族の子息。そんな人物だ。
どういう扱いにするにしても使い道はいくらでもある。
しかし大袈裟に確保することは出来ない。
(偽名を使っているとは言え冒険者でそれは珍しくないといいますからね。正式に冒険者である人間を確たる証拠もなく拘束は難しいでしょう)
焦る必要はなかった。
李と吉田は他を出し抜いてこうして彼女に接触している。
そしてこの岡山を出てしまえば、他の者が接触するのはまず無理だ。
伊勢までの間にその正体について彼女に認めさせるか、或いは信頼関係を築ければ良い。
(ま、急いては事を仕損じると言います。伊勢までの往復はこの分だと半月はかかりそうですからゆっくりいくとしましょうか)
我慢できなくなったのか、天照とレオの下へ向かい話に割って入り出したマイラの背を見ながら、李は内心でそう考えていた。
吉井川のゲート通過は問題なく終わった。
ギルドのクレメンテが話を通してくれており、また吉田が佐保に連絡して冒険者対応室が動いてくれていたというのもある。
実はこの時、太宰府から通報を受けた政府からも通すようにと自衛隊に命令が下っていたのだが流石に一行のあずかり知らぬところであった。
初めは天照を止めようと考えていた政府であったが、彼女の行動を知るとその考えを180度転換することとなる。
彼女が行っている神社の確保。
これには副次的な作用があった。
モンスター避けである。
神の拠点となった神殿――神社の周辺には、モンスター避けの結界が形成されることとなる。
初めてこの国を冒険者が訪れた時、その中の神官が博多の箱崎神宮で感じたように、九州・四国において現出した祭神を確保した神社にはその種の結界が張られていた。
流石にすべてのモンスターを退けることが出来るわけではないが、神社の周囲は安全性がグッと高まる。
菅原道真よりそんな情報を得た政府は、今後を見据え敢えて天照の動きを容認することとしたのだ。
――その行動を容認するならば、鏡の代金を立て替えろと天満宮より請求されるが、支出としては微々たるものである。
慌てたのは神社本庁である。
未だ天照大神との関係が改善されていないところでのこの行動だ。
これで天照が自力で神宮を奪還してしまえばどうなるか。
不味いとばかりに足止めの依頼や今後の神宮の扱いついて政府に訴えるも、政府側の態度は冷たかった。
祭神を得た各神社に独立され、力を失っていく神社本庁。しかも、天照が自分で神宮を確保してしまえばもはやその凋落は決定的になる。
和解が成立すれば話は変わるであろうが、和解の目があるのならばそもそも天照はこういった行動を取らなかったはずである。
かつては保守系政治団体を通じ政治活動も活発に行っていた宗教法人・神社本庁。しかし圧力団体としての神社本庁はこの天照の行動を機に一気に衰えていくこととなる。
「ここか。わたくしが大蛇めを討伐しておった頃、この地を襲ったベヒモスとやらを討ち取ったと言う場所は」
岡山県備前市西部。
この地において大型モンスター・ベヒモスを自衛隊が討ち取ったのは昨年のことである。
その死体は既に自衛隊により回収され、後に残るのは砲撃の後のみ。
「まったく。人が碌に被害も出さずベヒモスを倒してしまうなんて俄かには信じがたいですわ」
辺りを見回しながらそう言ったのはマイラである。
先月もこの場所を通過したが、まさかこの場所が話に聞くベヒモスとの決戦の地だとは思いもしなかった。
決戦――本来、ベヒモスなど大型モンスターの中でも上位種であるこれらとの戦いはそう呼ぶに相応しいもののはずなのだ。
「ベヒモスとやらはどの程度の強さなのかえ?」
この世界で現出した神である天照ではあるが、その知識は日本が基盤である。この世界のことは知らないことが多い。
神からそう尋ねられたマイラは少し考え込む。
ベヒモスが強力なモンスターであることは常識であるが、その強さを上手く表す具体的な話となると――
「ああ、1つありますわ。まだ私が生れるずっと前。今から40年ほど前ですわね」
今から約40年前。
大陸西部をジャンビ=パダン連合王国が支配下に収め、中央部も多くがその傘下に入り始めたころだ。
とある国が、その都を巨大ベヒモスに襲われた。
原因は鉱山開発のために麓の森を切り開き山を掘り返したことである。
王国もベヒモスが生息していることは承知していたため、その縄張りには注意をし開発を行っていたのであるが、彼らが考えるよりもベヒモスの認識する縄張りが広かったのである。
縄張りを荒らされたベヒモスは作業員や王国兵士に襲い掛かった。
当然なすすべなく開発団は壊滅してしまう。
そのままであればベヒモスも引いたのであろうが、そのままに出来ない理由が王国にはあった。
この鉱山開発には、ジャンビ=パダン連合王国の圧力を受け徐々に傾き始めていた王国の命運がかかっていた。
この地に有望な鉱床があることは分かっていても手を出せなかったが、この鉱床をなんとか開発し、連合王国への切り札にしようとしたのだ。
このままでは連合王国にただ飲み込まれていくだけ。
抗うにしろ、或いは価値を見せ従うにしろこの鉱山は重要なカードになる。それだけの価値がある鉱床がここには眠っているのだ。
引けない王国は軍をベヒモスへと向け討伐をおこなう。
最新式の大砲に国中から招集した神官たちによる即席の術師戦闘団。通常戦力1万と共にベヒモスの住む山へと向かった討伐隊であったが結果は勝負にすらならなかった。
討伐隊の攻撃はベヒモスに多少のダメージを与えたものの、致命には遥かに遠く。それどころか、逃げる討伐隊を追ったベヒモスは数日をかけ都にまで迫ったのである。
城壁に囲まれた街であったが、怒るベヒモスの前には意味がなかった。
壁を破壊し城壁内に侵入したベヒモスは街を、そして城を、ただ怒りのまま歩き回るそれだけで破壊し尽くしたのだ。
「それで、結局ベヒモスはどうしたのです?」
マイラの話に吉田が尋ねる。
「もちろん最期は討たれましたわ。都が破壊され軍が壊滅した王国を、連合王国が占拠。その後連合王国の重砲撃部隊を含む1個師団と冒険者ギルドに依頼し派遣された冒険者2000人によって半月をかけて」
それなのに――と再びマイラは、ベヒモスが討たれた地に目を移す。
本来はそれだけの戦力と時間をかけてようやく倒すような敵。それがこの地では僅か数時間の戦闘で済んでしまった。
勿論日本側も楽に何の危機感もなく勝利したわけではないのだが、そこはマイラたちの知るところではない。
「なるほど。いや、さすが我が国じゃ。素晴らしいではないか! ま、わたくしであれば1人で十分じゃろうがな」
「そりゃ神様と比べるのは間違ってますよ……」
日本の軍の精強さに喜びつつ、そう主張する天照にレオが小さな声でツッコみをいれる。
さすが普段主にしているほど大きな声では言い難そうだ。
「ええまったく。素晴らしいですわね――」
どういう想いを込めた言葉か。
その景色を見ながらつぶやく様に言ったマイラの横顔見ながら吉田と李はそう考えていた。
吉井川を越え東へと進む一行。
その旅路は、前回のマイラ達の大阪行きより更に楽な、拍子抜けするくらい何もないものであった。
考えてみれば当然である。
その分霊――神霊力を宿した神具による結界ですら、並みのモンスターを寄せ付けない力がある神本人が同行しているのだ。
この辺りに居る小・中型モンスターなどまず寄ってはこない。
また道その物も、複数の冒険者が往復していることから、邪魔な障害物などは排除され、また途中途中で簡易宿泊地のような簡単に整地された場所もある。
備前市から姫路方面。そして明石へ。
四国の自衛隊により更に整備され宿泊しやすくなった明石海峡大橋下の宿泊地では他の冒険者と情報を交換。
ここで十分な補給を行い翌日には尼崎市に到着する。
伊勢へ向かうのであればそのまま大阪市内に入り東の奈良に向かうルートを通れば良い。
奈良からはいくつか道があるが、伊賀市内を通る国道163号を通りそのまま三重県津市に抜ければ伊勢は目と鼻の先である。
だがここで天照がこの案に異を唱えた。
「京都ですか?」
「そうじゃ吉田よ。せっかくここまで来たのじゃ、一度京の都とやらを見ておきたい」
「しかし何故です。京には神社も多いですので、そこが目的ですか?」
「それもある。じゃが……」
そう言って天照は言葉を濁し少々険しい目をした。
吉田にはその目、表情に見覚えがある。
ここ数日、ゴーストタウンと化した街を見るたびに天照が密かに見せていた表情だ。
おそらくその心は――
「……街が気になりますの?」
そう率直に尋ねたのはマイラであった。
彼女もまた、この天照の様子に気づいていたようである。
「お主にまで見抜かれるとはな。そうじゃ。わたくが顕現したのは西でのこと。今の日本の多くの有様については話でしか知らなんだ」
余りに西での、現代日本の文明社会での生活が楽しくどこか他人事の遠い世界の話であった。
今回の伊勢行にしても、そもそもは自分を蔑にする者を見返そうと言う想いから出た行動である。
だが、こうして打ち捨てられた街並みを直に目にすると、何とも言えない感慨がわき起こる。
「わらわはどこまでいっても、この国の最高神なのじゃ。そうあれと想われ、そう現れた。この廃墟にはかつて多くのこの国の者が暮らしておった。じゃが今ではこの有様」
尼崎の街並み、そしてその先の大阪のビルの影を目に移しながら天照の独白は続く。
「わたくしは悟った。この地を取り戻し、再びこの地に人を呼び戻すことこそ成すべきことなのじゃと」
つい先日まで、自信満々にはしゃいでいた姿とはまるで違う。
そこには、真剣にこの国を憂う女神の姿があった。
「……それで、何故京都へ?」
「吉田よ、1つ尋ねたい」
問いを投げかける吉田に、天照は逆に質問をぶつける。
「この国は、今東をいくつかに区分けしておるな」
「はい。第1種・第2種・第3種と3種類に分別しております。中国地方と淡路島が第1種。滋賀を除く近畿地方が第2種。そして」
「そこじゃ。何故、滋賀のみ第2種ではない?」
「舞鶴の海自や陸自の偵察により、滋賀県内にて強力なモンスターの生息が確認されているためです。大型モンスターこそいませんが、それに近い種が多数。おそらくは琵琶湖という水場が原因だと思われますが」
「なるほどのう。では、何故そのモンスターどもは他の場所に来ぬのかのう。特に京などさして険しくもない山を挟んだ隣ではないか」
「言われてみれば……」
自分の仕事とは関係がないため気にしていなかったが言われてみれば変だ。
自衛隊の偵察によれば、隣接県である京都府では滋賀で見られるような強力なモンスターはいないという。
偵察が出来ていない三重などは分からないが、地形的に考えてそちらに向かうより京都に向かう可能性の方が高いはずだ。
例外と言えば、念に数度の岡山への大規模侵攻くらいか。
あれには滋賀のモンスターが混じっている可能性が高い、あれだけの規模のモンスター群が岡山京都間だけでそうそう増えるはずがないからだ。
「つまり、何かがあるとお考えで?」
吉田に代わり李がそう尋ねる。
「そうじゃ。それを確認しに行きたい」
「なるほど……」
吉田と李にとって悪い話ではない。
彼らの目的はあくまでマイラであるが、天照に付いて行動することで得られている情報は貴重な物ばかりだ。
正直な話これらだけでも今回の行動には十分価値があった。
さらに京都に関して何か掴めれば大手柄と言える。
「私たちは構いません」
「マイラさん次第ですね」
と、2人の目がマイラへと向けられる。
ジッと天照の話を聞いていたマイラは、ホッと小さく息を吐いた。
「何ともまあ、随分人間臭い神様ですわね」
「大陸の神は違うのかえ?」
「何柱かお会いいたしましたけど、ここまで人間的な神様は初めてですわ。まるで神というよりむしろ――」
何か言いかけたマイラであったが、口を噤む。
「なんじゃ?」
「いえ。国を想う気持ちは、この私も感じ入りましたわ。どの道、依頼の内容にさして変更はありませんわ。京都だろうがどこだろうが行きますわよ、おーっほっほっほっほっほ!!」
そう言って高笑いするマイラ。
「……ならば決まりじゃな」
天照の言葉に一同が頷く。
「ここから京は北東。大きな道も多いですから、明日には到着出来るでしょう」
「今日はこの辺りで宿泊した方が良いようですねぇ」
「では、寝泊まり出来そうな場所を確保いたしましょう」
「わたくしは近くで神社でも探すとしよう」
それぞれ、やるべきことを確認する4人。
その姿を見ながら、レオはあることを思いだしていた。
前に、日本の大学教授と食事を取った時、主が日本の古い都である京に関心を寄せていたことを。
(……単に行ってみたかっただけなんじゃないだろか)
そんな予感がしたが、流石にこの場で水を差すような発言をしないだけの分別をレオは持ち合わせていた。
そして翌日――
「なんですのこれは!?」
京の町に足を踏み入れた一行を待ち構えていたのは、
「キツネ?」
無数のキツネたちであった。
ん~なんだかいまいちまとまりのない回になってる気がします。
ベヒモスの辺りとか無理にいれなきゃよかったかもしれません。




