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冒険者日本へゆく  作者: 水無月
第4章 冒険者と日本
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第98話 東海道中

 名古屋に展開する部隊から必要な物資の補給を受けた一行は、佐保の運転する自動車--トラックに乗り一路東名高速を東に向かっていた。

 10年間整備されていない高速道路は大丈夫かとの佐保は心配したが、自衛隊や土木技術の学会の試算によれば十分大丈夫ということであった。

 実際、自衛隊が京都から三重・愛知に向かう際には近畿自動車道の名古屋神戸線も利用されている。ただ、先発隊が安全を確認しながらではあるが。


 今回の場合、先発隊はまだいない。なにしろ関東に向かうのは極秘任務だ。

 知っているのは冒対室内部でも室長他数名。後は第3旅団長と彼肝いりの神霊術戦闘部隊の隊長くらいである。

 何があるか分からない。ある意味3人がこの先続く自衛隊や冒険者の先発隊だ。


 だが良い情報もある。東海道を東から西へ渡った黒須柚那や彼女が道中の集落で集めた情報によれば、道路の崩落は起きていないという。

 今はその情報を信じるしかない。


「まあこの速さで進んでいれば、まずモンスターに襲われることもないからその面じゃ安全じゃないか?」


 念のため窓から車外を警戒しているフリオがそう言った。


「何匹かモンスターは見かけたけど、並大抵のやつじゃこれには襲ってこないさ」

「……これに襲い掛かるような奴が出たらどうなるのよ」


 フリオの言葉に佐保がそう尋ねると、代わってリタが笑顔で答えた。


「――死ぬ気で頑張ろうね佐保!」

「いーやー! 絶対捕まるもんか!!」


 と叫びつつもアクセルは踏み込まない佐保であった。



 結局のところ、3人の移動は極めて順調に進んだ。と言っても、道中何があるか分からないため一気に東海道を駆け抜けることはしない。大丈夫だろうとの予測はあっても実際に道路がどうなっているかは分からないのだ。

 安全を第一とし、危険が予想される場所は高速道を降りるなどして進んで行く予定である。佐保はそのために2~3日はかかってもよいと考えていた。当然その間は当然野宿になる。



「火の準備は出来たよ」

「OK。こっちも寝床は大丈夫そう」


 民家の庭で、周辺で集めた枯れ木で火を用意したフリオに、民家の中から佐保が返事をする。


「いや~こういう時、神霊術って便利よね。簡単に火を出せるから」

「私の雷でも火は起こせるわよ」

「それ効率悪いだろ。それより佐保。確か野営の道具を持ってきてるって言ってなかったか?」

「あるわよ。でもこの先がどうなるか分からないから節約よ」


 佐保が名古屋で受け取った物資は、水食糧・武器弾薬・燃料などだが野営のための道具も含まれている。

 関東--東京まで向かい調査後名古屋まで戻るのに足りる量を用意しているが、不測の事態に備える必要がある。


「それよりも建物を使えるのはありがたいわ。埃っぽいけど意外と綺麗なものだし」

「そりゃ露天より屋根がある方がいいけど、なんか問題でもあるみたいな言い方よね」

「ちょっと前々は問題だったのよ。空き家でも勝手に使っちゃ」

「誰もいない町の空き家なのに?」

「そうよ」


 この辺り、フリオたち大陸の冒険者と日本人とには感覚のズレがある。

 実際冒険者たちが中国地方において活動を始めた頃、勝手に空き家を利用して問題になったことがあった。

 そういった冒険者絡みの問題や東日本の生存者が緊急避難として不法行為を働く可能性をみこし、先年成立した特別法でモンスターの徘徊する地域は特別地区となり、緊急避難の範囲の拡大や様々な超法規的措置が認められている。

 佐保のような自衛官がこうやって空き家を利用しても問題がないのもその一環であった。


「それより、明日はどうするんだ? 地図で見た感じだと明日には着きそうに思えるけど?」


 灯りのそばで地図を広げたフリオは、今日進んだ道のりと目的地までの距離を見てそう尋ねた。


「まっすぐ向かえばね。でもその前に少しでも情報を集めたいわ」

「情報って誰からだ? こっから先って確か、日本から独立とか言ってる奴らが住んでるんだったよな。まさかその街に行くわけじゃないよな」


 独立を謳っている地域に、その独立元の軍隊の人間が出向く。

 いくら日本と自分たちの常識が違うとはいえ、そんなことはしないよな――フリオの言葉にはそう込められていた。


「もちろんよ。彼らの中心地、長野や山梨にはいかないわ」


 フリオの広げる地図を覗き込んだ佐保は、地図上の甲府市に人差し指を指すとスッと南へ指をずらす。


「目的地はその南よ」

「何かあてはあるのか?」

「ええ。前に名古屋から長野まで行って帰ってきた人がいてね。その人の情報でこの辺りに住んでいる人が少数だけどいることが分かってるわ。その人たちに接触するつもりよ」

「素性は隠すんだろう?」

「もちろん!」


 その為の衣装一式も名古屋で用意している。

 名古屋在住者の服やバックを新品と交換してもらったのだ。


「でもそこの人たちはなんで離れて暮らしているのかしら? 日本ってモンスターに対する自衛の手段がないって話しよね。だったら大勢で集まってる方が安全だと思うけど」

「それはね、そうする必要があるからよ」

「必要?」

「そう。今の東日本は自給自足で生活しているけど、その中でもここ。正確には長野や山梨では手に入らない物があるわ」


 佐保の言葉にフリオとリタは地図をジッとみつめる。


(食料は、違うな)

(住む場所が足りない? いや、それはここに来る理由にはならないわね)


 しばらく考え込んでみたがなかなか答えが閃かない。

 やがてリタは降参し佐保の答えを尋ねた。


「答えは塩よ」

「はあ!? なんでよ。塩ならこのナガノとかヤマナシの方が取れそうじゃない」

「え? いや、無理でしょ。海ないのよ」


 佐保の答えに納得できないというリタだったが、続く佐保の言葉にフリオは2人の認識のズレに気づいた。


「もしかして、この国では塩は海水から取ってるのか?」

「そうよ……あ、もしかして」

「ああ、たぶん想像通り。大陸じゃ塩は鉱脈から掘るのが一般的だよ」


 つまり岩塩である。

 日本人の常識では塩と言えば海水から作るものだが、元の世界でも岩塩の方が一般的であったりする。


「一部の地域じゃ海や塩湖の水から塩を取ったりもするけどね」

「へ~よく知ってたわねフリオ」


 塩と言えば岩塩という認識だったリタは思わず感心する。


「兄さんの商会で取り扱ってたからさ」

「なるほど」

「ふーん。しかし、思いがけず常識のズレが分かったわね。やっぱりこの世界の人と日本人とじゃ色々と常識が違うわね」


 この日本において佐保は大陸の人間との付き合いの多さでは上位に入る部類だ。

 その佐保でさえ、未だに常識の違いにぶつかることは多々あった。


「ま、こういう分かりやすい違いならいいけどな」

「そうね。ささいなズレの方がそのまま見落として後で問題になるかしれないわね」


 とはいえ常識や考え方の違いなど、世界同士を比べるまでもなく個人レベルですらある話だ。


(問題はどう対処するか、よね)


「そうだ、常識の違いで思い出したんだけどさ」

「なになに、リタ?」

「改めて日本に来て気付いたんだけど――」


 焚火を囲み3人が他愛無い話しを交わし合う内に、だんだんと夜は更けていった。



 東名高速を東に進み富士川インターまでたどり着いた一行は、そこで高速道を降りると富士川を超え更に南東を目指した。

 目的地は駿河湾田子の浦である。

 東日本の人々がどうやって製塩を行っているかまでは想像でしかない(黒須の話ではこの辺りに電気は通っていないので古典的な方法だとは思われる)が、どこかで海水を得る必要がある。

 東日本の生存圏から考えて一番可能性が高いのが、山梨県から最も近い海であるここであった。


「ユナさんが現場まで知っていれば早かったんだけどね」


 あいにくユナ――黒須柚那は富士市内の民家で一晩泊まらせてもらいそこで製塩のことを聞きはしたが、作業現場までは見ていない。

 当時の彼女は、シュウ少年を長野まで送り届け東の状況を知り、少しでも早く東から離れたかったため時間的にも精神的にも見ていく余裕がなかったのだ。


 国道1号までたどり着いた佐保は、適当なところで車を停め徒歩で田子の浦方面まで歩くことにした。



 ショッピングモールや工場を横手に見つつ進み、海の気配が濃くなり始めた頃だ。


「佐保、この先に数人集まっているぞ」

「ええ。行ってみましょう」


 周囲の様子を探っていたフリオの言葉に佐保が頷く。

 今の佐保は色褪せ古くなった服装のバックパッカーといった格好だ。


「さて、探している人がすぐにみつかればいいんだけど」


 進んで行くと相手の方もそれに気づいたようだ。

 中年の男性が5人、3人を不審そうに見ている。


「なんだあんたらは!」


 男の1人が警戒感を隠そうともせず問いかけてきた。

 無理もない。この辺りにいる住民は顔見知りであるだろう。そこに妙な恰好をした外国人2人を連れた見知らぬ顔の人物がのこのこやってきたのだ。警戒しない方が変である。


「あ、すいません。私たち名古屋からきたんですけど」

「名古屋~?」

「はい。西村さんって女性の方を探してるんですけどご存じないですか?」

「西村さんか?」

「おい、名古屋っていったら少し前に西村の婆さんが泊めてやったとか」

「そういやそんな事言ってたな」


 当たりだ。

 目当ての人物がここにいることは間違いない。


「ええ! ユナさんがお世話になったと言ってました。で、私もこっちに用事が出来たので頼らせてもらおうかなーって」

「ふーん……そっちの外人は?」

「あ、この2人の通訳を頼まれたんです。東に行きたいけど日本語が上手くないということで」

「コンニチハ」

「ドモ、ヨロシクオネガイシマス」


 佐保の言葉に、フリオとリタは打ち合わせ通りカタコトの日本語であいさつをする。


「なんでこっちに?」

「2人とも、東の探索に仕事で西日本から『西だと!!?』ひぃっ!」


 西日本--その言葉を聞いた瞬間、5人が急に殺気立った。

 良い印象は持っていないだろうと予想はしていた佐保であったが、さすがにここまでは予想していなかった。


「こいつら名古屋の人間じゃなくて西日本の人間か!」

「い、いや違います。この人たちは国外から来たんです! 西日本の人じゃないです。そうよね、フリオ! リタ!」

「タンゲランカラキマシタ」

「ヨロシクデス」


 佐保の言葉に演技を続けながら2人は答えた。――この受け答えが、通訳が必要という前提を無視しているのだが、幸いにも皆興奮していて気付いていない。


「しかし西からきたんだろう」

「いや、それ言い始めると今後日本に来るこの世界の人間全員西からの人間になっちゃいますよ」

「ふん……じゃあ、あんたは西の仲間じゃないんだな」

「もちろんですよ! 私だってこの10年西とは縁がなかったんですから!」

「そうか……名古屋あたりもそうだったって話しだな……」


 甲信地方と濃尾地方は長らく音信が絶えていたが、そこに人が西へと行かず(或いは行けず)残っていることはお互いに漠然と知っていた。

 2つの地方がこの10年で確実に交流したのは、名古屋から東へ赴いた黒須柚那とシュウ少年。そして、彼女たちが東に行く契機となったとある来訪者だけあった。それ以前はいたとしても記録にも話しにも残っていない。


「……まあいいだろ。西村さんのところ案内してやる」


 ようやく、警戒心を緩めた男はそう言って3人を連れて歩き出した。




 3人が連れてこられたのは、少し歩いた先にあった料理屋であった。

 ここでは製塩を行っている人たちへの食事を作っているらしい。


「おーい西村さん! あんたに客だぞ!」

「はーい」


 そう言って厨房から出てきたのは70歳近い女性であった。


「はい、どちらさんですかね?」

「あ、私は佐保と言いまして、以前西村さんにお世話になった黒須の知り合いです」

「クロス……ああ、前に名古屋に帰るって言ってた。じゃあ、あなたも名古屋から?」

「はい。あ、この2人は海外から来た冒険者です」

「冒険者? ――よく分からないけどともかく、ここじゃなんだから私の家にいきましょうか。すいません皆さん、ちょっと失礼しますよ」


 厨房内にいた他の者にそう声をかけ、西村は3人を自宅まで案内するため店を出ようとした。


「……」

「? どうかされましたか?」


 ふいに、西村が足を止めジッと佐保を見る。


「いえね……あなた、名古屋から来たとおっしゃってたわね。そちらは海外から……」

「はい。この2人が東日本を移動するために通訳として同行してます」


 佐保がそう言って手を向けると、フリオとリタは軽く頭を下げる。


「……ちょっと待っててもらえるかしら。久保さんちょっといいかしら」

「なんだい、西村さん」


 西村は3人を連れてきた男を連れて厨房へと入っていった。


「何か怪しいことしたかしら」

「怪しいというならそもそも全部怪しくないか?」

「そりゃそうだけどね」


 バレないようにロデ語で話し合う3人。

 確かに素性が怪しいといえば怪しいが、そもそも疑われるほど話もしていない。

 服装か、と佐保も考えたが今着ている服一式は正真正銘名古屋で現役で使われていた中古品だ。

 顔も化粧を落とし薄く汚すなど念を入れている。


「いざとなったら逃げるからそのつもりでね」

「分かった」


「お待たせしちゃったわね」


 しばらくして、厨房から出てきた2人だが、男――久保はダンボール箱を持っている。

 久保は手にしたダンボール箱をフリオへと渡す。それなりの重さがフリオの手にかかった。


「ナニ?」

「あんたらの今晩の飯だ」

「そんな。悪いですよ――」

「気にしないで、佐保さん。野宿は大変でしょう? 今晩は家に泊まっていきなさい。その代わり名古屋のお話を聞かせてちょうだい」


 そう言ってニッコリと笑みを浮かべる西村。

 どうやら客が来て嬉しくその準備を頼んでいたようだ。


 どうやらバレた訳ではなかったと一安心した佐保だがどうするべきかと思案する。

 話が行きたかったので都合は良いのだが、さすがに泊めてもらうまでは考えていなかった。あまり長くいてはどこでボロが出るか分からない。


「黒須さんがやって来た時も楽しかったのよ」


 出来れば避けたいがこう善意で来る相手に強固に断れば情報収集の妨げになるかもしれない。


「--わかりました。今夜はお世話になります」




(野宿の方が良かった……)


 西村の家に案内され2時間後。すでにフリオは後悔をしていた。

 富士市内の西村宅――もともと空き家だったそうだが――に着き居間に案内されると、3人に茶の様なものが出された。が、これがとてつもなく不味い。

 現に3人とも一口飲んでそれ以上は口にしなかったのだが、佐保は西村から勧められおかわりまでする羽目になっている。


 次に話しが長い。

 女は話しが長いもの――とフリオは経験からそう考えているが、それでも長い。

 長い上に内容がない。フリオの日本語語彙力のせいかと思ったが、佐保の表情をみるにそうではないらしい。

 佐保も話しを聞きながら情報を聞き取ろうとしたり、質問を挟もうとするがすぐに脱線してしまう。


(下手したら一晩中付き合わされるんじゃないのか)


 内心でそうため息つきながら、何気なく窓の外を見た時だった。


(え? 誰かいた……いや、いる!それも1人や2人じゃない)


 人影を見た。それも偶然通りかかったとかではない。明らかにこの家を探っていた。

 気付かれないように他の窓も見ると確かにいる。間違いなかった。


(この婆さん!)


 改めて見れば、この西村という老婆の喋る姿にはどこか必死さがあった。

 懸命に話しを長引かせようとしている。


「――佐保。囲まれてる」

「!?」


 ロデ語でそういわれ、窓に目を走らせた佐保もようやく事態に気づいたようだ。


「あの、西村さん」

「それで私はおかしくて――はい、なんでしょう?」

「やっぱり私たち、泊まるのは遠慮させてもらいます。フリオ、リタ出ようか」

「まあまあ、そう言わず!もう少し――」


 席を立ち家を出ようとする佐保を、西村は引き止めるよう服をつかむ。


「離して!」

「あっ!?」


 思わず、強く振り払った際に西村はその場で倒れてしまった。


「ああ! ごめんなさい。大丈夫ですか」

「触らないで!!」

「!?」


 倒れた西村を助けようと佐保が手を伸ばすが、きつい声色で西村は拒絶する。


(この目)


 先ほどまでの笑みと打って変わって、激しい怒りの目を佐保に向ける西村。

 同じ感情を、佐保はつい先ほど見ていた。


「……どこで気付いたんですか」

「あんたは肌がきれいすぎるんだよ! とても食うや食わずの人間じゃないね!」


 最初に会った時、やはりバレていたのだ。


『おい、悲鳴が聞こえたぞ!』

『西の野郎!!』

『殺せ!!』


 外から怒号が聞こえる。

 中でのやりとりで火が付いたようだ。


「佐保! 突破するぞ」

「ええ、でも大けがさせないように!」

「無茶言うわね」


 そう言ってリタは手にした剣を抜く。下関事件でも活躍したが、リタは神霊術と組み合わせ相手を気絶させるつもりだ。

 フリオも剣を抜くが斬りつけるわけにはいかない。うまく峰うちするしかないだろう。

 佐保に至っては銃を持ってきていないしあっても使えない。格闘もいなすしかない。


「みんなー! こいつら逃げる気だよー!」

「糞ババア! 行こう!」


 そう言ってフリオは玄関に向かうが、


「てめーら!」


 相手の方が一歩早かった。

 こうなると狭い室内では武器を振り回せない。

 剣を向け牽制するが相手は庭の方からも回り込んできた。


「不味いわよ佐保。逃げ道がないわ! 本当に斬っちゃダメなの!?」

「だ、駄目よ。少なくとも先に手は出せない」


 そう言う佐保だが相当迷っているようだ。

 何せ5~6人かと思ったら軽く10数人はいる。しかも、鉄パイプや農具などで武装しているのだ。

 これはもう正当防衛でしょという気持ちと、いやここで問題が起きれば今後の東日本解放作戦にどう影響するか分からないという気持ちがせめぎ合っている。

 佐保が決断してくれなければフリオとリタも動けない。あくまで行動の主体は佐保なのだ。

 幸いなことに、相手も真剣を手にするフリオとリタを警戒していきなり襲い掛かっては来ていない。ジリジリと逃げ道を塞ぎながらもタイミングを見ていた。


 しばし続く膠着状態。佐保が決断すれば血路を開けるがそうしなければジリジリと不利になる。


(何かきっかけがあれば)


 せめて冷静に話し合いたい――その願いが通じた訳ではないだろうが、膠着は思わぬ形で破られた。



「喝っ!! 何をしておるかおぬしら!!」



 突然、道の方から聞こえた大音声がこの膠着を打ち砕いた。



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