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11.報告会を開きました

 宿屋の夕食を食べ終えた後、ボクの部屋にミアとリザベラが訪れた。


「教会と孤児院はどうだった?」


 ボクがそう尋ねるとミアは少しだけ険しい顔をしながら答えてくれた。


「教会の司祭様も孤児院の子どもたちもとっても痩せていてね、食べ物に困っているようだったの。もともと領主からは食べ物の寄付がほとんどだったみたいなんだけど、半年前からぱったりと寄付がなくなったんだって」


 基本的に孤児院には、現金を寄付してはならないという暗黙のルールがある。昔、現金を寄付してそれを教会関係者が着服し子どもたちが飢えるという事件があってから、着服しづらいように物品を寄付するというようになったそうだ。


「今は教会へ寄せられている献金から子どもたちの食費を出しているみたいなんだけど、その献金も減っていってるから大変なんだって」


 教会には、神社仏閣に対する奉納のような献金というものがある。信仰心の高さを表したお金を渡し、神から祝福をいただくというものだ。その献金は教会の運営費用や教会関係者である司祭や助祭などの給料になる。

 その献金から子どもたちの食費を全額出しているということは、司祭たちの給料はほとんどすべてその食費に回っているのではないだろうか。だから、司祭も痩せ細っているのだろう。


「なるほどねぇ。子どもたちが痩せているってことは飢えそうになってるってことだよね? 今回は食べ物を持って行ったの?」

「今回はお菓子だけ……。だって、何を必要としているかわからなかったから。状況を見て食べ物にするか遊び道具や絵本にするか考えようと思って……」


 ミアがいうことには一理ある。始めからやせ細った子どもがいるとわかっていれば栄養のある食べ物を渡したいし、逆に食に不自由していないのであれば遊び道具や絵本、勉強道具などを持って行きたい。

 確認もせずに不要なものを渡しても、孤児院側も困るだろう。


「それなら明日はまずは孤児院へ食料の手配をしようか」


 そうボクが言うとミアの顔がぱっと明るくなった。ミアには暗い顔は似合わない。やっぱり、いつでも笑っていてほしいなぁ。


「うん!日持ちする物とすぐ食べられるもの。それから、お菓子も追加で!」


 ミアはその後すぐに、リザベラに食べ物の種類を指示していた。きっと明日の朝一番にリザベラが商店へ注文しに行くのだろう。


「今度はボクのほうの話だね」

「ジルはどこへ行っていたの?」

「ボクはね……」


 そうして、ボクが昼間に行った領館での話と酒場で聞いた話を伝えた。


「結論から言えば、領主は何か別のことに夢中で、夫人と子息で運営しようとして空回りって感じ」

「一体、領主は何をしているんだろうね?」

「領都やその周りの詳細な地図が必要ってなんだろうねぇ」


 ミアと二人で顔を見合わせて、首を傾げた。


「まぁ、領民たちの話では領主は病気だってことだし、明日は正式な形でお見舞いに行こうか」


 ボクの言葉にリザベラがぴくりと反応していた。

 正式な形ということは、明日はボクもミアも貴族らしい服装をするという意味であり、リザベラは侍女としての仕事が待っているということだ。ドレスの準備や化粧、髪型など色々やることがあるだろう。


「準備もあるし、出発はお昼過ぎにしよう」

「ドレス選ばなくちゃ!」


 ミアも正式な形の意味がわかって、張り切って部屋を出て行った。

 



 そろそろ日付が変わるかなという頃、急に部屋の温度が下がった気がして辺りを見回すと部屋の中で声が響いた。


「報告致します」


 部屋の中にはボク以外の誰もいないはずなのに、そんな声が響く。まぁ影だってことはすぐにわかったんだけれど、ちょっと怖かった。

 影はボクの返事を待たずにつらつらと領主の住居の内情を語った。

 夫人は贅沢三昧をしているということ。子息は結婚間近であるにも関わらず、結婚の準備ができず困っていること。領主は自室から一切出ないでぶつぶつと独り言を呟きながら何かを作っているとのこと。

 他にも影が見てきたものを聞いているうちに、なんとなく領主が何を作っているのかわかってきた。

 ただそれは、この世界ではあまり見かけない……いや、一度も見たことも聞いたこともないものであり、前世である日本にはあったものだった。日本どころか世界各地で作っている人がいたものだ。しかも、真面目な人ほどハマると言われていた。


 ……転生者が絡んでいるんだろうなぁ。そうとしか思えなかった。

献金や寄付についてはジルミアの世界ではこういう考えですーというものであって、実際の教会に対する献金とは異なります

つまり、フィクションです!ってことでよろしくお願いします

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