37.返事待ち中でも家庭教師は続けます
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あの告白のあと、ミアには逃げられ3日間も不通になり不安で仕方がなかった。
避けられてしまうくらいなら、告白なんてするんじゃなかったと何度も後悔したけれど、後の祭りだ。
3日経った日の夜、ミアから念波がきたことでようやく落ち着いた。
体調を崩してたって聞いて、心底心配した。もうすでによくなったと聞いて安心した。
今は返事を求める時じゃないと思って、一切口に出さなかった。
それがよかったのかな。他愛もない話で楽しく過ごせた。
本当は、すぐにでも告白の返事が欲しいし、どうして逃げたのか問い詰めたかった。
余裕のない男は嫌われる。
前世の記憶が頭の中を巡るから、口にしなかった。
たまには前世の記憶も役に立つ……。
次の休息日、午前中は用事があるからと言われ、午後にいつものティールームで待ち合わせた。
今日のミアの服装は、前世を思い出させるゴスロリに近い装いだった。
こげ茶のワンピースは正面にボタンがついていて、腰はきゅっとくびれておりスカートはこれでもかと膨らんでいる。襟と袖にはファーが施され温かそうだ。裾には下から5センチほどの場所に白い刺繍がぐるっと一周ある。襟もとに大きなリボンがあるのが特徴的だ。
「今日は来れたんだね」
そう声を掛けるとミアはにーっこりと笑って答えた。
「午前中に父様とお話合いをしてきたので。今後も毎週、家庭教師をお願いします!」
話し合いなのか脅しなのかはあえて突っ込まないでおこう。
今後も毎週会えるということはわかった。
というか、ミアの態度が以前と変わらないのだが……。
その後も、いつものように本日のおすすめスイーツと紅茶をいただき、以前と同じように会話をしていた。
「魔力熱について調べたんだけれど、治癒をかけると悪化するらしいね」
「そうなんだ」
「治癒をかけていいものとかけてはいけないものの判断ができるようにならないとだね」
「判断するためのスキルか魔法ってないのかな」
……うん、以前との違いがない。
なかったことにされているのかと思うが顔には出さずに以前と同じように会話を続ける。
「存在していないスキルや魔法であれば、創造できるみたいだけど。存在しているスキルだったら保持している人を探して覚えるしかないね」
「鑑定とは少し違うスキルかな~……診断?……診察とかっていう魔法だったりー?」
ミアが言葉を発した後、一瞬だけボクの体が光った。
「……ジルは健康らしいよ……」
「今の感じだと、魔法を創造したっていうより既存の魔法を唱えたって感じだね」
「一瞬だったけど、ジルの体をスキャンしたみたいで驚いた……」
ミアは驚いたというよりも少しだけ嫌そうな顔をしていた。
スキャンするということは、レントゲン写真みたいなイメージだろうか。
少し怖いので使わないでおいた。
「ミアはどんどん治癒術に特化していくね」
「そうだね。この力でいろんな人を癒したいな~」
ミアの話を聞いていたのだが、ついため息がこぼれてしまった。
今日はこのまま普通に会話して終わるのだろうか。
今後もずっとこんな感じで過ごしていくのだろうか。
断られるのは怖いけれど、はっきりしないのも嫌だ。
もしかして、熱を出したことで告白されたこと忘れてたりしないだろうか?
そう考え始めたら、確認したい気持ちでいっぱいになった。
本日のおすすめスイーツであるティラミスはもう食べ終わったし、紅茶も飲み干した。
この辺で切り上げて……な展開になる前に、聞くしかない。
「あのさ……」
「ん?」
ミアはきょとんとした顔をしている。
さきほどまで話していた雰囲気のままだから、そんな顔されるのも仕方ないのか。
「ボク、告白した……よね?」
言葉につまりながらそう言うと、ミアの顔が真っ赤になった。
「され、ました」
真っ赤になった時点で忘れられていたわけではないとわかった。
話題に出してしまえば、2人とも話を続けることができず沈黙が続いた。




