表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
146/156

09.ミアの成人を祝いました

 ミアの十五歳の誕生日……成人の祝いの日がきた。

 スウィーニー侯爵が用意したミアの成人の祝いは、ガーデンパーティ風に装飾された部屋で立食形式で行うというものだった。

 室内にはたくさんの観葉植物や樹木が置かれてあり、庭にいるような感覚になる。

 あまりみない形式の装飾なので、参加している貴族たちは普段よりも楽しそうに見える。

 さらにテーブルにはいろんな地方の名物料理やスイーツがたくさん並んでいる。

 よく見れば、王立学院近くのティールームで出されるスイーツと全く同じものが並んでいる。

 もしかしたら、マスターが臨時出張して作っているのかもしれない。


 ボクは真っ先にミアのもとへと向かう。


「招待ありがとう」

「来てくれてありがとう。今日は楽しんでいってね」


 声を掛けるとミアは恭しく淑女の礼をして、にこりと微笑んだ。

 今日のミアは淡いパステルカラーの桃色のドレス、膝から下部分に赤や黄色などのカラフルな大きい花が飾られているという変わったもの。その飾られている花と同じ花でできた花冠が、ガーデンパーティ風の室内にぴったりだ。


「来たのか……」


 そう言ったのはミアの父であるスウィーニー侯爵。

 ミアの隣ですごく嫌そうな顔をしている。


「父様……ジルクス殿下に失礼です」


 ミアが口をへの字に曲げてそういうとスウィーニー侯爵がふんっとそっぽ向いた。


「気を悪くしたらごめんなさい」

「いつものことだから大丈夫だよ」


 ボクが苦笑しながらそう言うとミアも同じように苦笑いを浮かべていた。


「あいさつ回りをしたら戻ってくるよ。またあとで」


 ミアが頷くのを見たあと、ボクは他の貴族へ挨拶するために離れた。

 最近は、令嬢よりも子息を紹介してくる貴族が増えた。

 ボクがセリーヌ王国内の領地を巡る……監査のような役割を担ったことは発表済みだ。

 その旅のお供にうちの息子はどうですか? って言われてもねぇ。

 今以上の人数で動くと目立つから、間に合っているとしか言いようがない。


 ある程度、挨拶が済んで、ミアのもとへ向かおうとしたところでゆったりとしたダンスの曲が流れ始めた。

 すると部屋の中央部分にいた人々が移動して、瞬時にダンスフロアができた。

 曲が流れても誰も踊ろうとしない。

 本日の主役であるミアが踊らないと始まらないのだ。

 ミアと誰が踊るかなんて……婚約者であるボク以外いないわけで……。

 ボクは少し離れた場所にいるミアのもとまで向かう。

 ミアはボクが近づくにつれて満面の笑みへと変わった。


「ミア嬢……ボクと踊っていただけますか?」

「はい」


 ミアの腰に手を回してダンスフロアへ向かう。

 二人だけでゆっくりとダンスを踊れば、自然と顔が緩んでくる。


「誕生日おめでとう、ミア」

「ありがとう、ジル」

「あのさ……」


 ボクはこの成人の祝いに参加するにあたって一つやりたいと思っていることがあって……。

 それをミアに告げると恥ずかしそうにしながらも頷いてくれた。


 曲が終わる前にボクとミアはダンスをやめて立ち止まった。突然の行動に周囲にいた貴族たちは怪訝な顔をする。

 ボクは一度周囲を確認したあと、ミアを見つめて……その場で跪いた。


「初めて出会った日からずっと惹かれている。もう、婚約者では満足できないんだ。ミア、どうかボクと結婚してください」


 そこまで大きい声を出していなかったんだけどなぁ。

 曲を演奏していた楽師たちも含めて、みんながみんな動きを止めた。

 そして、視線がミアへと移っている。

 ミアは恥ずかしそうに顔を赤くしながら言った。

 

「はい、ずっとあなたのそばにいさせてください」


 そっと手を差し伸べるとミアが手を乗せてくれた。

 その瞬間、ボクたちを見ていた貴族たちから拍手が起こり、楽師たちは演奏を再開した。

 ボクは立ち上がり、周りの貴族たちに向かって言った。


「ボクはミア一筋なので、愛人を作る気はない。令嬢たちにはそのあたり理解した上で接していただきたい」


 きっぱりとそういうとこれまでミアに文句を言っていた令嬢たちが視線を彷徨わせていた。

 さっさと諦めて他の子息たちを捕まえにいかないと、いい男はどんどん売れていくって理解してほしいとこだよねぇ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ