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08.閑話1 皇妃の病状

三人称のつもりで書きました(汗


内容的にしばらく閑話が続く予定です。

 謁見の間でのやりとりが終わるとミアはすぐに賓客の間へ戻った。


「リズ! 動きやすいドレスを出して」

「かしこまりました」

「テトラさん、脱ぐの手伝って」

「まかせてー!」


 皇帝と謁見したときは、最高級の布地をふんだんに使った薄桃色の幅のあるふわふわとしたドレスを着ていた。

 そのままの恰好では診察しづらいとの判断から、着替えることにしたのだろう。

 二人に指示を出してささっと着替える。

 

「準備できたし、行きましょう」


 ミアは賓客の間に置いてあるベルを鳴らし、帝国の侍女を呼ぶ。

 皇妃様の部屋まで案内するよう伝えると、担当の者を呼ぶと言って去っていった。

 しばらくすると部屋にノックの音が響いた。


「失礼いたします。皇妃殿下の私室へと案内いたします」


 そう言って現れたのは顔に傷のある女性の騎士だった。

 

「よろしくお願いいたします」


 ミアが丁寧にあいさつすると、女性の騎士は傷に触らない程度にほんのりと笑った。

 長い長い廊下を抜け城の北部分へと進んでいく。

 はじめのうちは従者や重臣など男性を目にしたのだが、途中で見かけなくなった。

 そして、いくつも角を曲がったり階段を上ったりした先で立ち止まり、女性の騎士が言った。


「ここからは皇帝の許可がない限り、男性は立ち入ることができません」


 ミアと一緒に歩いていたのは、リザベラとテトラ。つまり女性だけだったので、ミアは大きく頷いた。

 女性の騎士はミアの頷きを了承の意味と捉えて、廊下の先へと進んだ。


「こちがら皇妃殿下の私室でございます」


 女性の騎士はそう言ったあと、扉をノックした。


「どうぞ」


 きりっとした女性の声が聞こえると、女性の騎士は扉を開いた。

 扉の前に立っていたのは年嵩の侍女で、ミアたちを睨むかのように見ていた。


「女性の治癒術師殿を連れてまいりました。お通ししてもよろしいでしょうか?」

「お通りください」


 年嵩の侍女が扉の前からすっと横にずれて、ミアたちを中へと通した。

 案内していた女性の騎士も中に入ったが、入口で監視を行うようだ。


「失礼いたします。セリーヌ王国のミア・フォン・スウィーニーと申します。皇妃様の診察をしに参りました」


 ミアはベッドで寝ていて姿の見えない皇妃に向かって丁寧な淑女の礼を行った。


「あたくしはヴァネッサ・タルクィーニ・パマグラニッド。パマグラニッド帝国の皇妃ですわ。このような場所から、失礼するわ。……しかし、セリーヌ王国では女性も治癒術師になれるのね?」


 皇妃ヴァネッサは不思議そうな声でそう聞いてきた。

 パマグラニッド帝国は男女の差がとても激しく、女性は子どもができると仕事を辞め家庭にこもるものとされている。

 そのため、長くは働けないとの理由から城内で働く女性はほとんどいない。

 侍女であっても、子どものいない、産めない女性ばかりだ。


「はい。セリーヌ王国では女性も仕事を持ち、産後も働くことも家にこもることも可能でございます」


 ミアがセリーヌ王国の話をすると寝返りをうつような音が聞こえた。

 ベッドのやわらかな敷布からエメラルドグリーンの髪がちらりと見えた。

 ソフィア姫と同じ髪色が見えたことで、血のつながりを感じられる。


「そう……とても羨ましいわね。そろそろ診察してちょうだい」


 皇妃ヴァネッサはそう言ったあと、手招いた。

 ふかふかの掛布の間から伸びた腕はとても白く、艶々していた。


 ミアは診察のために皇妃ヴァネッサのいるベッドへ近づく。

 横になっていたのはまだ十代と言ってもおかしくないほど若く、とても美しい女性だった。

 髪の色も瞳の色もソフィア姫と同じエメラルドグリーンだ。

 この姿ですでに十九歳になるソフィア姫を産んだとはとても思えない。


「あら、とても若い方なのね」

「はい、もうすぐ十五になります」

「まあ! まだ未成年だというの? それなのにセリーヌ王国一の治癒術師? 素晴らしいわ!」


 皇妃ヴァネッサは驚きの表情を浮かべて、ミアを見ていた。


「皇妃様……普段のご様子をお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「ええ、いいわよ」

「いつごろから、体に異変を感じましたか?」

「それはね……」


 ミアは皇妃ヴァネッサに問診を始めた。

 一カ月前から、ひどい吐き気とめまいがあり、実際に吐いたりするとのことだ。


「確認のために、体を調べる治癒術を使うことをお許しください」

「それは痛かったりするのかしら?」

「いいえ、痛みなどはまったくございません」

「それならいいわ」

「では、失礼いたします。……診察(メディカルチェック)!」


 『診察』は全身をくまなくスキャンして異常部分がわかるという治癒術だ。

 皇妃ヴァネッサの体をまばゆい光が包んでいき、徐々に消えていった。

 ミアは一瞬だけ顔をしかめた後、きっぱりと言った。


「皇妃様に悪い部分はございません」

「そんなはずありませんわ!」

 

 そう言ったのは年嵩の侍女だった。


「こんなに毎日苦しんでおられますのに、悪い部分がないだなんて!」


 ミアは大きくため息をつくだけで、何も言わなかった。

 その姿を見た年嵩の侍女は癪に障ったようで、さらにあれこれと文句を言った。


「ヴァネッサ様は立ち上がるだけでふらりと倒れてしまうし、食事を前にしても気持ちが悪くなるという状態でございます! 今では食べられるものはトマッカだけになっているというのに! それなのにあなたは悪い部分がないと!」


 年嵩の侍女の言葉を聞いているうちにミアの中では、一つの可能性にたどり着いた。

ここまで書けば、病気じゃないってわかるかなと!


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