07.ミアが鑑定されるようです
しばらく無言の時間が流れたあと、玉座の横の扉から従者と黒いフードを被った男が現れた。
「皇帝陛下、お呼びでしょうか?」
「よくきたサラディーノ。あの女が治癒術師であるか鑑定せよ」
「かしこまりました」
皇帝はミアを顎で指し、黒いフードを被った男……鑑定師は大きく頷いたあと、ボクたちのすぐ近くまで歩いてきた。
「かわいいお嬢ちゃん、悪いんだけど、皇帝陛下のお願いだから鑑定させてもらうよ」
ニヤッとした笑みを浮かべつつそう言うとじっとミアを見つめ始めた。
「セリーヌ王国のスウィーニー侯爵家の長女で、ミア・フォン・スウィーニーっていう名前なんだ。第二王子ジルクス殿下の婚約者で十四歳、それと職業は治癒術師だねぇ。あれ?」
鑑定師はミアを鑑定して、見えたものを次々と口に出していたんだけど、途中でピタリと口をつぐんだ。
目を見開いて驚いた様子で、何度も何度もミアの顔と鑑定した結果とを交互に見ているようだった。
「どうした、サラディーノ」
「……あ、いえ、その……この方は治癒術師で間違いありません」
鑑定師はそう言うとミアに対して恭しく挨拶をしてから離れた。
そして皇帝のそば近くまで移動したあと、耳打ちで何かを伝えた。
「それは真か!?」
「……はい、間違いありません」
皇帝も鑑定師と同じように目を見開いて驚いていた。
鑑定師はダラダラと汗をかいているように見える。
一体、ミアは鑑定師に何を見せたんだろうか?
「ミア殿! ……いや、ミア様! すぐにでも皇妃の容体を確認してくだされ!」
いきなり、皇帝の態度が軟化した。
軟化というか、ミアに対して尊敬語? え? もしかして……?
ボクも先ほどの鑑定師のようにミアを鑑定したら、〈職業:聖女〉と書かれていた。
ちょっとミアさぁん!?
本物の聖女ってこと思いきっり書いてあるけど、いいの!?
驚いてミアの顔をじっと見つめていたら、ペロッと舌を出したあとにニコッと笑った。
わざとかぁぁ!!
つまり、ミアは正真正銘本物の聖女で最高位の治癒術師であることを証明して、皇妃の診察をすぐにでもできるようにしたってわけだ。
人命を優先したい、皇妃を救いたいっていうミアの気持ちはわかるけど、聖女ってバラしたら後々問題になると思うんだけど?
「皇帝陛下と鑑定師のかたにお願いがあります」
ミアは凛とした声で二人に言った。
「どうか、私が何者であるかは伏せていてほしいのです。他の方に知られてしまうと、皇妃様の診察および治癒に支障がでるでしょう」
聖女だってバラしたら、皇妃の診察も治癒もしないよ?
という意味ですよね、ミアさん……。
ボクの腹黒さがミアにうつったんだろうか?
「わ、私は何も知りません!」
鑑定師はそう言って、フルフルと首を横に振った。
それを皇帝は睨むように見つめた後
「皇妃に治癒術を施してくださるなら、何も言わぬ」
と言い、頭を下げた。
こうして、ミアは気兼ねなく皇妃を診察したり治癒できることになった。
ミア最強〜




