表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
111/156

09.婚約者と物置部屋に入りました

 イライラした気持ちのまま来た道を戻り、ミアの腰に手を回しながら手近な部屋へと入った。


「……施錠(ロックアップ)!」


 すぐに扉を閉めて物理鍵と魔法鍵の両方を掛けた。

 ここはたしか物置部屋の一つだったはず。

 本来であれば、こんな場所に婚約者を連れ込むなんて許されないし、女官長あたりにバレたらお説教ものだろう。でも、今回は非常事態だから、仕方ない。

 あのまま、ローズガーデンに向かっていたら、ソフィア姫が追いかけてくるかもしれない。

 ミアとのひとときに邪魔が入るなんて想像するだけで、イライラしてくる。


 ボクは部屋の中で一度深呼吸をしたあと、そっと名前を呼んだ。


「ミア」

「……ジル、隔離と閉鎖の魔法使いたい」


 下を向いたままのミアから、強張った感じの声が聞こえた。こちらからは表情がわからないけど、もしかしたら泣きたいのを我慢しているのかもしれない。


「わかった」


 ボクはミアと向かい合い、両手をつないだ。手をつなぐとぎゅっと握り返してくれた。

 それを合図にして、発動言語を唱える。


「「……隔離(アイソレーション)!……閉鎖(シャットダウン)!」」


 転生者同士なのでお互いに触れながら同時に魔法を使わないと効果が出ない。

 魔法を掛け終わると自然とつないでいた手が離れた。それと同時に深い深いため息が聞こえてきた。


「ミア、大丈夫?」

「大丈夫なわけないでしょう!!」


 ボクは目を瞬いた。

 あれ? 想像していたのとは違う反応が返ってきたよ。

 てっきり、ソフィア姫に言われたことで凹んだり落ち込んだりしているんだと思っていたのだけど、これはとっても怒ってる感じ!?


「行動がダメ? 服装がダメ? 挨拶もなしにいきなり話してくるほうがおかしいでしょう!」


 セリーヌ王国の貴族のルールとして、見知らぬ相手と会話をする前には必ずお互いに自己紹介をするというものがある。それをソフィア姫はしなかったのだろう。

 ミアは握りこぶしを作り、ぎゅっと力を入れながら次々と話していく。


「私がジルと釣り合わない貧相な体?」


 えっと、貧相な体とは言われてないっすよー!

 ミアは成長途中なだけで決して貧相な体じゃない。胸もお尻も女性らしく丸みを帯びてて、将来が楽しみ〜って言ったら、それはそれで火に油を注ぎそうな気がする。


「自分は豊満な体だとか言っちゃって、パット入れて強引に増やしているのバレバレなんだから!」


 うん……先日、ボクもニセモノだなって思ったから、知ってる……これも言ったら火に油だろうなぁ。


 こういう時って、「そうだね」ってうなずいてほしいだけで、意見とか反論とか聞きたくないんだよね。前世の自分を思い出しながら、うんうんとうなずいた。


「挙句、私をジルの側室にするって? さすがにそのセリフは許せない!」

「ボクだって許せないと思ったよ!」


 ボクがそう言うとミアはこちらを向いた。ハッとした顔になっているところを見れば、ボクが同じように怒っていることに気が付いたのかもしれない。


「ジルも許せないと思ったの?」

「ボクはミア以外を嫁にするつもりはないからね。もう面倒くさいし、そろそろ帝国をつぶしてもいいんじゃないかと考えてるよ」


 にっこりと微笑んで見せると、ミアの動きが一瞬止まった。それくらいミアのことが大事なんだってわかってくれたかなぁ。


「つ、つぶすのはどうかと思うよ?」


 ミアは先ほどまでの怒った口調から一変して、困惑した口調になった。表情まで眉がハの字になっていて、かわいい。


「そうかな? こんなにかわいい婚約者と離れろなんて言い出すんなら、つぶされても仕方ないよね?」

「で、でも、帝国の人たちは悪くないから……」


 ソフィア姫だけが悪くて、帝国の国民は悪くない。

 ミアは正真正銘の慈悲深い聖女なんだなぁ。


「ミアは優しいね」


 ミアの握りこぶしをゆっくりと開かせて、その手を取りぐっと引き寄せた。急な行動だったため、ミアは少しよろけたけどボクの胸の中におさまった。おさまったところで両手を腰にまわして、普段よりも少しだけ力を入れて抱きしめる。

 しばらくぎゅーっと抱きしめはていたら、背中をぺしぺしと叩かれた。 

 力を弱めて、少し離れるとミアからぷはぁという息苦しそうな声が聞こえた。


「ジ、ジルゥ」

「ごめん、苦しかったんだね」


 少し顔を赤くして、肩で息をしている姿を見ていたら、我慢できなくなった。

 あごを手でくいっと持ち上げて、ミアの唇にボクの唇を重ねる。

 軽いキスですぐに離れたので、ミアの照れた表情をじっと見ることができた。


「ボクは絶対にソフィア姫になびくことはないから」


 もう一度軽くキスをしたあと、ぎゅっと抱きしめた。


ヘイトためてからのイチャラブは大事だよね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ