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07.とにかく面倒くさいです

 その日の夜のこと、いつもの天蓋つきのベッドで寝ていると人の声が聞こえてきた。


「ここをどこだと思っているんですか!」

「ジルクス殿下のお部屋の前でしょう」

「でしたら、こんな夜中にいらっしゃらないでください」

「邪魔しないでちょうだい。……睡眠(スリープ)!」

「お止めください!」

「止めるはずがないでしょう? ……睡眠(スリープ)!」


 どさっどさっと人が倒れるような音とカチリという鍵が開くような音がした。

 したっていうか、鍵を開けたんだろうなぁ。

 そんな人の声と音をぼーっと聞いていたら、今度はガチャガチャとかダンダンという音がしだした。

 扉の取っ手を上下する音と扉をたたく音かなぁ。

 なんて考えていたら、廊下から甲高い女性の声が響いた。


「おかしいじゃない! どうして開かないのよう!!」


 そりゃ、物理鍵だけじゃなく魔法鍵も掛かってるからだよ。解除しなきゃ開かないに決まってる。

 ……今って何時だろ?

 ボクは働かない頭のまま、カーテンの隙間を覗いた。

 真っ暗だ。つまり、深夜ってこと。みんな寝てる時間にあんな音をさせるとかダメだ。


「静かにしろよ……みんな起きちゃうだろう……睡眠(スリープ)


 半分も開いてないまぶたを扉の外の甲高い声の主へと向けて、発動言語をぶつけた。

 すぐに静かになったので、まぶたを閉じて深い眠りについた。


 翌朝、ボクの部屋の前では、扉の番をしていた近衛騎士二名とソフィア姫が川の字になって眠っていた。揺すってもたたいても起きる気配がなくて、侍女たちが困っていた。

 こっそりと鑑定してみたら、状態:睡眠になっていた。そういえば、夜中にソフィア姫が睡眠の魔法をかけていたけど、近衛騎士にだったんだなぁ。

 近衛騎士たちにはしっかり働いてもらわないといけないし、起きてもらおう。


「……解睡眠ディスペルスリープ……解睡眠ディスペルスリープ


 ボクは近衛騎士たち二人に睡眠解除の魔法を使った。

 二人は起きてすぐ、ボクの心配とソフィア姫に対する怒りを口にしていた。

 夜中にやってきて睡眠の魔法……攻撃魔法を使ってくるとか、この国に対してホント舐めてるよねぇ。


 舐められていて腹が立ったのと、目の前で起こしたら何をされるかわからないのとで、ソフィア姫に睡眠解除の魔法を使わなかった。

 きっと宮廷治癒術師たちが解除するだろうと思っていたんだけど、ボクが寝ぼけて手加減ナシで掛けた魔術だったから、強力すぎて解除できなかったらしい。

 まぁ、放っておいてもただ眠ってるだけで死ぬようなものではないし、そのうち解除される魔術だから寝かせておいた。


 夜這いされるんじゃないかというミアの助言を聞いておいてよかった。

 物理鍵だけでなく、魔法鍵も掛けておいたので、部屋に入られずに済んだ。

 入られていたら、既成事実でも作りそうで本当に怖い。

 ただ一つ失敗だったのは、音を遮断する系の魔法を掛けなかったことだなぁ。寝ている途中で起こされてうるさかった。

 今夜はそういった魔法も掛けることにしよう。


 

 翌日の昼過ぎになってソフィア姫は起きた。一通り状況を把握すると、侍女たちが容易してくれた部屋に呼び出して、こう言ったらしい。


「ジルクス殿下の魔術はとても素晴らしいものでしたの! 対魔術の魔道具がまったく効果がなかったんですもの。ますます気に入りましたわ! あたくし、絶対に落としてみせますわっ!」


 一時的にソフィア姫の面倒を見ることになった侍女がわざわざボクに教えにきてくれた。

 どんどん面倒くさいほうへ進んでいってる気がする。


 そして、今……ソフィア姫はボクの目の前にいる。


「ジルクス殿下! あたくしに王宮を案内してくださらない?」


 有無を言わせぬ笑顔でそう言うと手を差し出してきた。

 本来であれば、その手を取ってエスコートすべきなんだけど……急患が出たらしく、宮廷治癒術師たちから応援を依頼されて、移動している最中だった。


「ソフィア姫、申し訳ありません。一分一秒を争う急患が出たとのことでボクは向かわねばなりません。他の者に案内させます」

「そんなもの、ジルクス殿下のお手を煩わせる必要もないでしょう?」


 ソフィア姫はそういうといきなりボクに抱きついてきた。

 谷間を強調した服でボクの体に胸を摺り寄せてくる。

 なんでだろう、さっきから、「さぁ、あたくしの胸を見て、あたくしに興味を持って!」って言われてるように感じる。


 ……あれ、この感触おかしい。

 前世で女子同士で抱き合ってたときの感触から考えたら……この胸ってニセモノかも!

 って、そんなことはどうでもいい。

 今は人の命がかかってるんだから、早くここから移動しないと!


 ボクはソフィア姫の肩を片手で掴み、引き剥がした。


「大臣を呼んで、ソフィア姫に王宮を案内するように伝えてくれ」


 近くにいた近衛騎士にそう伝えると猛スピードでその場から離れた。

 本来であれば、きちっと挨拶をして立ち去るべきなんだろうけど、優先順位は他国の姫よりも自国の民!

 将来、女帝になる人だとかもうどうでもいいよ。


「ジルクス殿下! 置いていくなんてひどいですわ!!」


 ソフィア姫の叫び声が聞こえたけど、全部無視した。

書籍版の表紙が公開されました!

活動報告に貼ってありますので、気になる方はそちらをご覧ください!


シロジさんが描いたミアが可愛すぎてもうやばいんですよおおお!!!(嬉しい悲鳴)


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