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暫くにて
そう言って、朝さんは鬼の巣へと走り向かった。
「俺らは俺らの仕事をキッチリこなそう」
そう言うと葉桜さんはおもむろに、背負っていたバッグを開けて何やら親指の爪程の大きさの物体を取り出して、耳にあてがった。
通信機、だろうか?
彼は小声でブツブツと呟きながら、顎を何度も縦に振って頷いている姿勢を見せていた。
連絡するならば、携帯電話でも良いのでは?
などと疑問符を頭に浮かべた私だが、もしかしたら一族専用の回線を回して喋っているのかもと思い、少しカッコいいなと思ってしまった。
まるでマンガなどで見る軍隊みたいで。
しばらくすると、通信が終わったのか葉桜さんは私と部下二人に召集の合図をかけた。
「では、我らは援軍が来るまでここで待機する」
どうやら指示された内容は、ものの数分で全部片付いてしまったらしい。
状況報告はこの人の得意分野だそうだ。
これならば、朝さんはここで待っていた方が良かったかもしれない。
彼によると、あと十分もしない内に仲間達が駆けつけてくれるとのこと。




