衝撃の事実!
お待たせしたのにすみません。
ちょっと説明クサイ回になってしまいました・・・
拝啓 お母さん
天国で元気にしてますか?
落ち込んだりもしたけれど、私は元気です。
これもお母さんが丈夫に産んでくれたからですね。ありがとう!
でも、ひとついいですか?
お母さん
私に言ってないこと多すぎでしょ!!!!!
頭をかかえてしゃがみこむ私の周りをうろうろ動き回る精霊王。
「…なんか喉にデカイ肉の塊詰まったみたいな感覚でうまく話が飲み込めない」
『例えに品がないぞ、ティア。』
そんなこと言われても。
突然姫って言われた時も信じ難かったけど、その比じゃないんだもん。
自分が人間じゃない、なんて。
『カレンは私と人間の間に生まれた子でいわば光の精霊と人間のハーフだ。
だから其方の血にも私の魔力が流れている。しかも隔世遺伝というやつか、其方には我譲りの膨大な魔力が備わっているようだ。』
それが先程された説明。
うん、簡潔でわかりやすいけどね。なんか衝撃の事実すぎてね。
精霊王は人間の男性…つまり私のお祖父さんにあたる人間と恋に落ちてお母さんを生んだ。
もとは精霊王などではなくただの光の精霊で、お母さんが5歳になるまで屋敷で一緒に暮らしていたものの、
魔力の高さから精霊王に…との声が抑えきれなくなり、仕方なく家を離れ精霊王となったんだそうだ。
ていうか、この綺麗な人(精霊)がおばあちゃん?か…なんか余計混乱してきた。
そのあたり今考えるのやめよう。
「お母さんはこのこと、知ってたってことですよね?」
『もちろんだ。いつでも会いに来てほしいと言ったが、結局、直接会うことはなかったな…』
「…一度だけ、この丘の麓までお母さんと来たことがあります。」
光の精霊王の魔力と血が流れる私には契約する必要もない。
それを知りつつ麓まで来て、神殿を見上げながら、あの時お母さんは何を思ってたんだろう。
『あぁ、そうだったな…美しく強く成長して…。こっそり見つめることしかできなかった。この手で育てず守れぬ親にカレンの方も言うことはなかったのかもしれぬが。』
存在感だけで圧力を感じていた精霊王が、今は小さく見える。
そのせいなのか、祖母だと知ったせいなのか、はたまたまだ混乱してるのか、
私もくだけた口調になる。
「…たぶん、何を話していいのかわからなかったんじゃないかなぁ?
怖かったのかも、お母さんも。」
あの夜、麓での母の様子を思い起こしながら続ける。
「でも、お母さんて人の感情とかにすごく敏感だったから、案外、麓まできただけで、
貴方の愛情のある視線に気付いたのかもしれない。」
『…確かに、カレンは魔力こそないが、精霊特有の、本質や感情を感じ取る力が発達していたが…なぜそう思う?』
だって…
「帰るとき、笑ってたから。お母さん。」
契約もせずに立ち去るあの時の嬉しそうな母の横顔を、今も覚えてる。
―――お母さん、何で笑ってるの?
―――ふふっ、ちょっとね。いずれティアにも話すわ。
結局、なぜ笑ってたのかは聞くことはなかったけど。
『そう……だったか…』
精霊王は椅子の背もたれに深く腰掛け、息を吐き出す。
その顔は、後悔を滲ませつつも穏やかで。
「私も、気付いて目の前に連れてきてあげられたら良かったんだけど。ごめんなさい。」
『いや、今、こうして其方が来てくれただけでもとても嬉しい。…して、強い光の力が必要と言っていたが。』
はっ!
そうだ、自分のことに驚いてる場合じゃなかった!
馬鹿か私は!!
「そ、そうなの、私にとっても大切な人なんだけど、体内の闇に蝕まれてて…」
こうしてる間にフィルが手遅れになったら……
話しながらそう考えただけで涙が出てきた。
「…フィルのとこに戻らなきゃ」
『其の者はそんなに其方にとって大事な存在なのか?』
「うん、絶対、なくしたくない。」
しっかりと頷く。
『…だ、そうだぞ。』
精霊王は、私以外の誰かに向かってそう言った。
正確には、私の背後に向かって。
「―――ティア。」
ひんやりと、温度の低いアルトボイス。
安心する、ずっと聞きたかった声。
後ろから聞こえた声に、信じられない気持ちでゆっくり振り返ると、そこには
「フィル……」
あの日倒れる前の元気な姿でフィルが立っていた。
読んでくださりありがとうございます!
やっとフィル出てきた…




