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鉄道団欒+うそだよ  作者: きいまき
79/100

79・回想(70)




 アーラカは僕の言葉にどう思ったのか、照れているというよりも苦笑いを顔に浮かべた。


「そんな風にリティから言われると、驕ってしまいそうだよ」

「アーラカを煽てるつもりで言ったわけじゃないぞ」


 本当に僕は研究者としての才能がアーラカにはあると思ったのだ。

 自分自身の力をアーラカに信じてほしかったのだが、なかなか伝えるのは難しい。


 どう言えばアーラカに僕の気持ちが伝わるんだろうか?

 適当な表現が見つからず、僕は言葉に窮した。


 そんな言葉に悩む僕に気付かず、アーラカは研究話を進めてしまった。


「さぁ~て、リティ。こうして残る事が分かったから、次は人工魔石に魔術を込めるのを試そうじゃないかっ?」


 そそられる話をアーラカから言われ、すっかり僕はそちらに気を取られた。

 しかも明らかに楽しい方向だ。


 伝える機会はまたあるだろうと、意識をしっかり切り替える。


「お~っ! いよいよか、アーラカっ! これも使ってくれ」

 アーラカの提案に乗るべく魔紡糸ではなく、人工魔石を僕は取り出した。


「……また、凄い数だなぁ」

「夏休みの間、魔力を使う機会がほとんどなかったからか、いつもより成功率が高かったんだ」


 本当はどちらかというと集中力が散漫だったせいか、固定化はいつもより悪いくらいだった。


「だけど、リティ。さすがにこんな数はもらえないよ。それに魔術込めの初実験だから、失敗で消えてしまう可能性が高い」

「アーラカの真似をして、毎日僕も人工魔石作りを練習していたら、こんな数になっていただけなんだ。変な形の物もあるし……」


 数だけは多いので、アーラカに遠慮されてしまうかも知れないのは想定内だった。

 だが、ぜひとも実験で消費してもらわなくては困る。


「どれ? ははぁ~、これだなっ」

 早速アーラカは1粒の人工魔石を見付け、摘み上げた。


「アーラカ。あんまり、しげしげと見ないでほしい」

「いやぁ~。こんな形状でも、残るものは残るんだなと感心してた」


「顔が笑ってるぞ、アーラカっ」

「あはは。ごめんごめん、リティ」


 何かの動物や雲っぽいと言えなくもない形をした物はまだマシな方で。

 一部分が飛び出ていたり、逆にへこんでいたりと、通常の魔石では有り得ない何とも形容しがたい人工魔石の形もある。


 形は悪いが固定化し続けたので、アーラカに使ってもらおうと持って来たのだ。

 だが人工魔石を作る時のイメージ化をサボったみたいで、しげしげ見られるのは恥ずかしい。


「むぅ」

 笑っているアーラカよりも先に、魔術込めの実験第1号をしてしまえ~っ。

 目に付いた歪な形の人工魔石を僕は手に取り、魔術の付加を試みる事にした。


「込めるのは初級の魔術からでいいな」

「待て、リティ。まず私がっ」


 そして、魔術を込めようと試みていた人工魔石を後ろからタッゾに摘み奪われた。


「「あぁッ」」


 たぶんタッゾが魔術を込めた瞬間だろう。

 人工魔石が静かにキラキラと融けるのを見てしまい、アーラカと僕は声を上げた。


「タッゾ?」

「ちゃ~んとリティさんの意思を汲んで、初級の、そこの研究者に対する攻撃魔法を込めましたよ」


 何やらタッゾがまた物騒な事を言っているが、その部分はスルーする。


「指に怪我や違和感は?」

「心配してくれるんですか、リティさんっ」


「してない。で、どうなんだ?」

「酷っ。ありません」


 なるほど。

 人工魔石への魔術込めに失敗しても、融けてしまうだけで何かがあるわけではないらしい。


「今度は取っていくなよ、タッゾ」

「は~い」


 タッゾに釘を刺し、しっかりその返事も聞いた上で、僕は新たに歪な人工魔石を手に取る。


「消えた」

「リティでも駄目なのか」


 魔術を込める人工魔石を作った本人かそうではないかは、関係ないらしい。


「込める魔力は抑えたから、同じ初級でもタッゾの威力より相当低くなっていたはず」

「あとは、リティ。その、言い辛いんだが」


 アーラカに分かってると頷き、今度は綺麗な形に出来た物を選ぶ。

 しかし。


「まただ」

 形も関係なかった。


「なぜだろう?」

「うぅ~ん」


 人工魔石に魔術は込められないのか?

 いや、まだそう結論付けるには尚早だ。


「人工魔石はまだあるし作れるから、こうなったら試せるだけ試してみる」

「なら私も」


 手に取った人工魔石を僕はしっかり見つめる。


 攻撃より、初歩の魔術。

 1番最初に覚えたライトの魔術。


「あ、れ?」

「どうした、リティ?」


 それが頼りないくらいの感覚で、アッサリと。


「込められたと思う、気がする」

「えぇっ?」


「アーラカ。凄く小さい光になると思うから、ちょっと部屋を暗くするよ」

 言い置いて、部屋の遮光を僕は素早く行った。


「じゃあ、使ってみる」

「どうぞ、リティ」


 うっすら手元を照らせるくらいの光が浮かび上がった。

 実用的ではないが、確かに成功していて嬉しい。


「もしかして攻撃魔術じゃなければ込められるのかっ?」

「どんどん試してみよう、リティっ!」


 気が急いた僕はさっさと遮光を外した。

 そして人工魔石を次々手に取り、アーラカと僕はせっせと初級の魔術を込めていった。


 結果、攻撃魔術以外の初級魔術を込めた人工魔石が融け消えてしまう事はなかった。





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