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鉄道団欒+うそだよ  作者: きいまき
58/100

58・回想(49)




「それで、そっちの研究者な先輩はリティさんみたく何か作れたんですか? リティさんに押し付けるくらい持ちが悪いそうですけど、自力で作れるんですよね……微小魔石」


「お前、エノンと僕の話を聞いてたな?」


 聖域でキラキラが微小魔石だという話はタッゾにしたが、アーラカの話は全くしていない。

 聖杖があったダンジョンに行った時、あれだけ動き回っていたにも関わらず、しっかり耳はこちらに向いていたらしい。


「やだな~、リティさん。聞こえて来ただけですよ。構想とか?」

「……」

「……構想?」


「あ~、すみません。そういえば、リティさん。雛先輩から構想は誰にも話すなって言われてましたっけ。でも杖が出来たんだから、簡単に作れそうですよね~」


「何が、すみません、だッ。この確信犯がッ!」


 わざと雰囲気を悪くするような物言いを、タッゾはして来る。

 アーラカの反応から、あの時は誇大妄想でしかなかった構想を、僕が話していないとタッゾは気付いたらしい。


 タッゾを睨み付けてやりたかった。

 だがタッゾの腕を振りほどく事が出来なかった。


「だから~、俺はリティさんに構って欲しいだけですよ。俺の言葉ごときで揺れるなら、研究の手伝いなんかしないで下さい」

「僕がそうしたいから、手伝っているだけだ。押し付けられたわけじゃ……あ~、もうっ。お前と話すのは後だ」


 秘密にされていたと知って、アーラカが気を悪くしないはずがない。


「ごめん、アーラカ。その……」

「いいよ、リティ。私だけ知らないのは確かに悲しいけど、そいつの思惑に乗るのはもっと腹が立つ」


 そう言うとアーラカは部屋付きの小さな台所へ行き、何かを持ってすぐに戻って来た。

 途端、これまでどうしたって背後から離れなかったタッゾが僕の前に立つ。


 アーラカが手にしているのは、果物ナイフだ。


 僕も前に使わせてもらった事があるが、錆びてはいないが研ぎが悪く、皮が剥きにくくなっている。

 僕の知っている限り、まだ大丈夫~と先延ばしにしていて、随分前から研いでいない。


「アーラカ?」

「腹は立つが、そいつの挑発には乗ろうじゃないか。やってやる……」


 机の上に置いた果物ナイフを、アーラカはじっと見つめた。


 もしかして微少魔石がすぐ消える性質なのを良い事に、一太刀浴びせようとナイフを作ってタッゾを刺し、証拠隠滅するんじゃないか?


 ……あるわけがない。

 アーラカが物騒な事を考えているわけではないと、初めから分かっていた。


 アーラカの作業をもっとよく見ようと、タッゾをすり抜け僕は机に近付いた。


 果物ナイフに並ぶように、キラキラが集まり出していた。

 徐々に、目の前でキラキラがナイフの形へと変わっていく。


「聖域じゃないのに。凄い。……自力で微少魔石からナイフが出来た?」

「……いや、何だかこれは」


 アーラカが手を伸ばし、作った方のナイフに触れるか否かというところで。


「触れない。触れた感覚も全然ない」


 試しに僕も手を出してみた。

 確かにナイフは手に触れなかった。


「目の前にあるように見えるのに何で?」

「う~ん」


 エノンもナイフに手を伸ばし、一緒に首を捻ってくれた。


「だけど形は確かにナイフになった。これで人工の微少魔石でも、形が変えられるのは確認出来た事になるねぇ」

「それなら、アーラカ。キラキラ団子はどうだろう?」


「キラキラ団子?」

「微小魔石をこう、まとめる感じで……」


 出来た! と思ったところで、パクっとラァフに食べられた。


 しまった!

 ラァフに食べないで、と伝え忘れていた。


 よし。

 僕の自力の微小魔石がエサでラァフには悪いけど、今日は固定化が安定しないふりで、ラァフの為にいっぱい作ろう。


 次々キラキラ団子を作り出していったが、その先からラァフがどんどん食べていく。

 作る先から消えていくキラキラ団子に、アーラカもエノンも呆気にとられていたが、構わず僕は先を続けた。


「このキラキラ団子をもっと凝縮させて磨いたら、人工魔石にならないかな? というのがエノンに話した構想の1つ目」


「あぁ~。それは確かに……誰にも話さない方がいいと言いたくなるよ、エノン」

「アーラカもそう思うよな」


 2人して、うんうん頷き合っている。

 またエノンとアーラカが通じ合っていて、ちょっぴり悔しい。


 ちょっと拗ねて僕は口を挟んだ。


「壁のイルミネーションの話を聞いた時に、夢のまた夢だって笑われるかなと思ったんだが」

「とんでもない。杖の形が出来たんだ。魔石の形ならもっと簡単か。なるほどねぇ~」


 アーラカが上に向けた手のひらを、じ~っと見つめてしばらく集中する。


「……あ。今度こそ出来た、かも知れない。触れる。存在してる」


 アーラカの手のひらに、もはや微小とは呼べない大きさの、ころころした魔石がある。


「人工魔石第1号だッ! おめでとう、アーラカっっ」

「ははは、ありがとう。構想はリティで、しかも途中まで実演してもらったのを、私は真似しただけなんだけど……嬉しいよ」


 おめでとう&ありがとうの握手をしようと思って、伸ばそうとした手はタッゾに捕まった。





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