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錬金術師のゆるふわ離島開拓記  作者: 森田季節
除草砂

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24 ある意味、犬の仲間だからな

 耕作放棄地をどうにかするとは言ってはみたのはいいものの、どうすればよいのだろう……?

 ベッドを買って、工房に戻った(馬車に積むまでもなくオオカミ姿のリルリルが運んでくれた)あと、私は錬金術の本を何冊も開いていた。


 除草剤に関するものを探す。

 はっきり言って草木を枯らすことだけなら簡単だ。

 草木が生きられない毒をかければいい。


 だが――

「『この除草剤に汚染された土を元に戻すのには三年かかります』って、三年も待ってられませんよ! 気長にやりすぎです!」


「ふうむ。これは広大な農地を開拓するケースのようじゃな。この島の畑には向かん。しかも、毒が低地の畑にも入ってきそうじゃ」


 私の椅子の横にリルリルは椅子を置いて座っている。

 位置としてはアシスタントっぽい。少女の姿になってるし。弟子だから、アシスタントと似たようなものか。


「リルリルって文章も読めるんですね。しかも、これ、特殊な名詞も多い本なのに」

「余を侮るでない。暇はたくさんあったからのう。人間の言語も暇な時に習得済みじゃ」


「暇であることを強調されると侮られますよ。まっ、毒性の弱い除草剤を作るぐらいは簡単ですし、いっちょやってみますか」

 私は薬品をいくつかピックアップしていく。


 職業柄、毒薬も扱うけれど、錬金術師はちゃんと使用許可を得ている。

「おっ、このビン、ドクロマークがついておるな」

「薬は使用量次第でたいてい毒になりますからね。毒を一切使えないなら、薬も作れません」


 もちろん、あまりにも毒が強すぎて、いくらなんでもダメというものもあるが。

 私は薬品を錬成用の大きめの窯に入れていく。


 それをぐつぐつ煮る。火は火炎石で(おこ)した。

「リルリル、ちょっと外に出ているほうがいいかもしれませんね」


「いいや、弟子じゃから横で見ておる。師匠の技は目で見て盗むと言うじゃろ」

「それは職人の世界ですけどね。薬を作る時に見よう見まねで練習するのは危なっかしいです。まっ、リルリルに任せます」


 窯が少しだけ赤く発光する。

 錬成には魔力が絡む。これで薬にも魔力を付与する。


「なあ、フレイア。 薬草や薬品を魔力を使わず使用することも可能じゃろう。そうなると、魔力がなくても錬金術師になれるのか?」


「よい質問ですね。理論上は可能ですが、法的には無理です。魔力を使えないなら、魔道具(まどうぐ)が一切作れないので試験に落ちます。すると錬金術師の免許を交付されません」


「ふむふむ」

 リルリルは律儀に紙にメモをとっている。

「ちなみにポーションすら魔力が入ってるおかげで、十分な回復力を持ってます。魔力が何も使えないなら、民間療法レベルのことしかできませんね」


 錬金術師は冒険者の列に加わることがまずないので、あまりイメージされないが、魔導士や僧侶といった魔力を使う職業の仲間ではあるのだ。


「おっ、そろそろ錬成がはじまってきましたね」

 窯の中の物質が黄色に変化する。


「うわぁっ! 臭いっ!」

 リルリルが跳び上がって、後ろに下がった。

 人間の姿だけど、動きは犬が後ろに下がる時みたいだった。


「臭いですよ。だから外に出ていたほうがいいと言ったのに」

「そういうことか! 余は人間よりはるかに鼻がいいからこういうのはきつい!」

「それはありそうですね。ですが、薬品を使うと臭いは出るものなんです。これには耐えていただくしかないですね」


「くぅ……。人間のそなたもそこそこ臭いはずじゃぞ……。錬金術師は鼻が麻痺しておるのではないか?」


「それは錬金術師に言ってはいけないセリフランキングの上位に入りますよ……。傷つく人は傷つくのでダメです……」


 そう、錬金術師は異臭をさんざん経験するので、臭いに鈍感になるのだ……。

 コンプレックスを抱く人もいる。「臭いの、平気そうだね」と言われて喜ぶ人はあまりいない。


 私もあまり言われたくない。しかし、「あなた、臭いですね」と言われるのと思えば、はるかにマシだろう。

 ちなみに、錬成するもの次第では、錬金術師に変なにおいがつく危険もあるので要注意だ。


「我慢しなくてもいいですよ。私一人でできる作業しかないですし」

「い、いや……そばで見て学ぶぞ……。劣悪な環境でも慣れていくのじゃ!」


「なんか、錬金術師が劣悪な環境で働く職業と言われてるみたいで嫌だな……」

 どちらかというと、肉体労働が少ない職業なんだぞ。


 でも、山の中に分け入って薬草を探したりするか……。

 そんなわけで、リルリルの辛抱の甲斐もあり、毒性の弱い除草剤もできた。


 私たちは庭に出て、水で稀釈した除草剤を雑草などにかけていったのだが――

「う~む……低木を取り除くには力不足か……。せいぜい背の低い草を弱らせる程度です」


「たしかに荒れ地の解決には程遠そうじゃのう」

 毒性のある除草剤を使うという方法は難しい。

「ちょっと、荒れ地まで散歩しますか」


 現地を見ることでわかることもあるかもしれない。

 わからなかった場合は……その時はその時ということで……。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
そりゃ枯葉剤みたいなものを撒けば雑草も低木も全滅しますが、その後畑として使えなくなりますからね。それでは塩を撒いているのと変わらない。 なんかこう、いったん植物をぜんぶ分解して肥料にしちゃう薬でもあれ…
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