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錬金術師のゆるふわ離島開拓記  作者: 森田季節
ポーション対決

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114 親はなくとも子は育つ

 このまま眠ってしまうと本格的な職務放棄になりかねないので、私は体を伸ばした。

「ありがとうございました。すっきりしましたよ」


 ベッドから起き上がった。視線が開いたままのドアのほうに向いた。

 そこにナーティアが立っていた。


「うわっ! なんでそんなところに!」

「営業時間中なのに、いらっしゃらないと思ったもので。一人で寂しい思いもされていましたのね」


 ナーティアはなぜか同情するような顔をしていた。

「えっ、親がいないとかいうあたりから聞いてたんですか?」


 けっこう前だぞ。ずっと見られてたのか?

「いや、鳥はここに来たばかりのはずじゃ。気配ぐらい余はわかる」


 たしかにリルリルは人が近くに来たらすぐわかる。だから、【透明薬】のイタズラも失敗したのだし。


「声は離れたところからでも聞こえましたから」

 聴覚も鋭いのか。人の見た目でも、能力は人の次元を軽々と超えているのでややこしい。


 ナーティアはベッドから起き上がった私のところに来ると、後ろから抱え込んだ。

「フレイア様、寂しい時があれば、いつでもお申しつけください」


「は、はあ……」

 やはり同情されているのか。一人でも平気とは言ったものの、リルリルに甘えてしまったしな……。ナーティアに甘えるのもそれはそれでいいかも。


「わたくしの巣でいくらでも休んでいただいてけっこうですからね」

「ん……? 巣?」


「山上の巣は質のいい羽毛、羊毛で中を作ってますから。人一人が増えてもどうということはありませんわ」


 頭の中では、餌付けされているヒナの姿が浮かんだ。私、ヒナ扱いなのか。サイズとしてはそんなものかもしれないけど……。


 話を聞くかぎり、やわらかそうではあるけど、鳥の巣って臭そうなんだよなあ。ナーティアが臭いわけではないが、巣はまた別な気がする。


「そうですね……。興味はありますが――」

 そんな場所に慣れると人としての尊厳が失われる気もするので遠慮しておきます――という前にナーティアに抱えられた。またも、華奢な見た目の相手にお姫様だっこされる事態に……。


「では、一度ごらんください。空を飛べばすぐですから」

「待って待って! 話を最後まで聞いてください!」


 リルリルが止めてくれるかと思ったけど、なんか感心したような顔をしていた。

「鳥も力はあるんじゃな。フレイアを持ち上げても、体感のブレがまったくない」


「変なところで感心しないでください! それより、止めてください!」

「火山の中に突っ込むわけでもないから。一度行ってきてもよかろう」


「では、出かけてまいりますわ。外に出ないと、鳥の姿になれないのが不便ですわね。建物というのは狭苦しくて窮屈ですわ」


 大空を飛び回る鳥類らしい言葉だ。









 結局、工房を留守にすると錬金術師のルール的にまずいと伝えて、巣に運ばれるのは回避した。


 その代わりといってはなんだが、ロック鳥姿のナーティアのおなかでしばらく保温させてもらった。工房の前なので、お客さんが来たらすぐに業務に戻ればいい。


「わたくしはかまいませんけれど、暑いのではありませんこと?」

「そこは我慢します。やすらぎのためには我慢することも必要なのです」


 親のぬくもりがなかったとしても、私は自分からぬくもりを求めることができる。

 親以外の誰かに育てられても、立派に人は育つということだ。

ひとまず、今回で一回終了といたします! またエピソードを思いついたら突発的に復活させたいと思います。ここまでお読みいただき本当にありがとうございました!


GAノベルから2巻の発売が決定しました! 4月中旬発売予定です! 今後ともよろしくお願いいたします!

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