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錬金術師のゆるふわ離島開拓記  作者: 森田季節
ポーション対決

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108 弟子のファンはできた

 昨日、代官屋敷でアルメリーゼんさんも含めてねぎらってもらったのだが、そこでリルリルとナーティアの話も出た。


 人間じゃない存在を弟子にすることは犯罪でも何でもないので、二人の正体の話もした。


 でないと、私が早くも弟子二人を抱えて、偉そうにしていると誤解されかねなかったし。積極的に弟子をとるほどの気力は私にはない。そんなことしたら、だらだらできない。


 それで、アルメリーゼさんが幻獣とロック鳥の姿に興味を持ち、それどころか、ときめいてしまったということらしい。


「ワタシ、実家で犬もカナリアも飼っていたんですけど、本当にあこがれます!」

「余はペットではないがな」


「一緒に野山を走り回りたいです!」

「余のペースに合わせたら、とんでもない体力のある人間になるぞ」

「また絶対に来ます!」


 なんてありさまで、動物好きのアルメリーゼさんは完全にファンになってしまっていた。

「フレイアさん、どうして教えてくれなかったの? 弟子ができた時に、真っ先に教えてほしかった!」


「はい? 教えるタイミングなんてなかったでしょ。接点がない学生に手紙送るわけないし」

「ワタシが工房行った時に話すチャンスあったじゃん!」


「できるわけないでしょ! あなたのよもやま話聞かされた直後に、デカい犬がいまーすとか言い出したら変な人じゃないですか! 空気読めない私でもわかりますよ!」


「だって、こんな見事なワンちゃん見せつけられたら怒りも何も湧かないって! すごすぎる……って思ってそれで終わりだから! 満足して帰るしかないから!」


「つかぬことをお聞きしますが、アルメリーゼさん、動物の毛をわさわさ触るのが好きったりします?」


「……それは別に。嫌いじゃないけど、あんまりやるとワンちゃんが嫌がるしさー。それがどうかした?」


「いえ、私とは違う流派なのだなと確認しました」

 リルリルが横で興味深そうに聞いていた。アルメリーゼさんのほうがまともだみたいなことを言いたそうな顔をしていた。


「アルメリーゼは犬と散歩することとかが好きなんじゃな」

「それはもちろん! ワンちゃんが望むなら大陸の端から端まで散歩しちゃいます!」


 アルメリーゼさんの声が高い。テンションも高い。そっか、学院でもこんな調子でいたら、そりゃ私は仲良くはなれんわ。


 私がやるべきことは工房の裏手で隠れておくことじゃなくて、オオカミ姿のリルリルを工房の前に配置しておくことだったらしい。


 そしたら、もしかすると面倒な対決なども行われずに済んだ可能性が高い。



 そんなんわかるかっ!



「あの……アルメリーゼさん、そろそろ船に乗りにいかないと時間が危ういですわよ」

 ロック鳥姿のナーティアが遠慮がちに言った。それぐらい、アルメリーゼさんが帰る雰囲気を出していなかった。あと一週間は島にいそうだった。


「くっ、くぅ……。ずっと見ていたいのに……。本当にまた絶対に来ます!」

 私は心の中で思った。

 あんまり来ないでくれ。


 ていうか、ここは錬金術師として自分のやるべきことをやるとか、成績の呪縛から解放されたとか語るべきところではないのか。


 それで、卒業後ながら、曲がりなりにも友情がはぐくまれるかも……なんてことになるものじゃないのか?


 動物と触れ合えて最高に楽しいですって言われて、私はどうすればいい? 私、話題に何も絡んでないし!


「リルリルさん、ナーティアさん、本当にありがとうございました! またいろいろ話を聞かせてください!」


「私を無視するなー! せめて形だけでもライバル扱いしてくださいよっ!」

 ついに言ってしまった。


 恥ずかしいけど、対決までさせられたうえに無視されるのは許せん!


「あっ、ええと……今度来る時は王都のお土産持ってくるから。何かほしいものある?」


「んん……ヒットしてる本があればください。本以外でも流行してるものがあれば。島だと流行には気づきづらいので」


 友達はできなかったけど、リルリルとナーティアのファンはできたのだった。



今回でいったん更新を中断します。また、エピソードを思いつけば復活させたいなと思っています。

ここまでごらんいただき、本当にありがとうございました!

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