ハーレムエンドルート消滅
第2章 最終話です
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「この道はもう続かない。他の道を進め」
二人の女性を左右に侍らせた地道行人がゆっくりと歩きながら、険しい顔をしている天道進にそう言葉を発した。
二人の美少女に腕を組まれているというのに、地道は無表情のまま淡々と言葉を続ける。
「お前も分かっているだろう? これ以上進んでも無理、無駄、無謀。黙って残った道を進むべきだ」
まるで警告しているかのような物言いは、第三者が聞いたらまるで意味の分からないものだろう。
現に地道の腕を取っている二人、時雨愛莉と雪永睦姫は困惑したような表情で地道の事を眺めていた。
それに対して、当の本人はどうだろうか? 困惑しているようには見えないが、理解しているとも思えない。
天道の表情は、ただただ嫌悪と怒りに染まっていた。
「うるさい……黙れッ! なんの事か知らねぇけど、お前に指図されたくねぇよ!」
天道のその発言で、ゆっくりとだが動いていた地道の歩みは止まった。それに伴い、女性二人の歩みも止まる。
大きくなった声量に、凶悪な表情は女性達を威圧するに十分だった。
時雨愛莉は地道に守ってもらおうと、地道の腕の影に顔を僅かに潜り込ませる。
対して雪永睦姫は、地道の事を守ろうとでもしているのか、僅かだが地道より前に進み出た。
「て、天道先輩? 怖いですよ……」
「なんなの急に、どうしたのよ……」
震える声を出す時雨愛莉と、驚いた様子の雪永睦姫。
そんな二人を守るかのように、地道は再び一歩前へと進み出た。
「彼女達が怖がってるから、やめてくれないか?」
ここで初めて、地道行人の表情に色が入った。
目元が僅かに険しくなり、彼と親しい人であれば見ただけで分かるのであろう。
彼は今、不快感を感じていると。その言い回しや態度は女性達にとっては嬉しい事なのか、僅かに頬が緩む。
だがその様子は、天道にとっては全くもって面白くない事のようだった。
「彼女だって? 随分と手が早いんだな」
「そういう意味で言ったんじゃない」
「だったら離れたらどうだ? なんのつもりだよ……当て付けか?」
「そんな事、お前に言われる筋合いはない」
地道と天道の会話を聞いている二人の女性は、只ならぬ雰囲気を感じて腕に力を込めた。
一触即発のような不穏な気配。だがそもそも、天道がどうして怒っているのか、なぜ地道は疑問も抱かず応対できているのかが分からない。
二人の会話に入り込めない彼女達は、心配そうに地道の事を見つめる事しか出来なかった。
「ごめん二人とも。天道は俺に用事があるみたいだから、先に下駄箱に行っててくれる?」
「……分かった」
「は、はい……」
二人の事を気遣ったのか、地道は二人から腕を離し、先に下駄箱に行くよう促した。
二人はそれに素直に応じ、来た道を戻って行く。少し遠回りになってしまうが、今の天道の傍は通りたくないという気持ちの表れだった。
二人が地道の様子を気に掛けながらも振り返り、足を動かしたと同時だった。
天道進の足も動き出す。それは去っていく彼女達二人を、追いかけようとでもしているような動きだった。
「待てって」
天道進の動きを止めたのは地道行人のそこ言葉、その行動だった。
立ちはだかるように行く道を塞いだ地道に対し、天道は足を止め怒鳴り散らす。
「どこまで邪魔するんだよ! お前は!」
「追い掛けてどうするつもりだ? お前が何をしても、もう変わらないぞ」
「……退けよ、邪魔するな」
「だから、何度も言ってるだろ?」
地道は一呼吸のち、天道の目を見ながらゆっくりと語る。
不快感は成りを潜め、地道は淡々としていた。
「俺は邪魔なんてしていない。全部、お前の選択の結果だよ」
「俺の選択が、どうしてこんな結果になるってんだ!」
選んだ選択肢が、どのような結果となるかなど誰にも分からない。
だか予想する事は出来る。後先も、相手の事も考えず、適当に選んだ結果の予想は容易い。
そこに至った過程を無視し、結果だけを見るなど愚の骨頂。
自らの選択を省みれない者に、いい結末など訪れるはずがない。
「なぁ天道。何がどうあれ、もうこの道は消えたんだ」
「また訳の分からねぇ事を……」
「でもお前には、まだ残っている道があるだろ」
「だから意味分かんねぇって!」
天道の怒号を受けても動じた様子のない地道は、廊下の真ん中から端へと移動した。
塞がれていた道が開けた。それを見た天道は、一歩を踏み出した。
だが天道は、地道の表情を見た瞬間、足が止まってしまう。
僅かに上がる地道の口角。それを見た時、彼の本能が無意識に警鐘を鳴らしていた。
「どうしてもこの道を進みたいのなら、進めばいい」
「…………」
「言っておくけど、彼女達に強引に迫ったりしたら俺は許さないぞ」
「……なんだよ、やっぱり彼氏気取りかよ」
「残りの道も失いたいのなら、好きにしろ」
「失う……!?」
その言葉で天道の足は完全に止まった。
何か思うところがあるのか、天道は地道を睨み付けるだけで動かない。
「お前、また何かするつもりかよ!?」
「何もしないって。お前が間違わなければ」
その状態から先に動いたのは地道だった。
地道は足を動かすと、天道とすれ違う。その方向は、雪永と時雨が向かった方向とは真逆である。
会話を切り上げて、彼女達が待つ下駄箱に向かうようだ。
そのまま終わるのかと思われたが、少し歩いた所で地道は止まり、そして振り向いた。
「あぁ忘れてた。一応言っとくぞ」
「なんだよ!」
「考えて選べ。残った道を見失えば、堕ちるぞ」
「いい加減にしろよお前……」
「親切心なんだけどな……まぁいいや。これが最後の警告だぞ? 次は――――告げるだけだ」
そうして二人は別れた。
天道は地道が去っていった廊下の先を力強く睨み付けるが、雪永達を追うつもりはないようだ。
ブツブツと苛立ちを吐き捨てては、地道が再び言った失うという言葉を真剣に考え出す。
一方地道の方は、焦ったような表情でスマートフォンを必死に操作していた。
行人< ヤバい、いよいよヤバい! 助けて!
蒼司< 落ち着きなよ。とりあえず明日来る?
行人< 行く。てか返信早すぎ、仕事しろよ。
蒼司< 休憩時間なんだよ~。じゃ明日ね~。
再び関わった二人。しかし前回の時とはまるで違っていた。
天から人は離れ、地に集まり出した。
しかしこの先は不確定。選択次第だが、まだ道はある。
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これで三分の二。残りを考えると五分の二とも言うか。
いや~キツいな。
しかし、ここまで展開が変わるのか。
失うだけならまだしも、嫌いな展開だ。
というか彼にこんな一面があったなんて。
下手に彼の事を知っているせいで、変化に戸惑う。
やはり恋愛は、人を変えるのだな。
はぁ……それにしてもキツい。
ついに最高の道を消してしまった。
でも、あと少し、あと少しなんだ。
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