バッド選択・迷走 ~徒労~
天道視点です
体育祭実行委員の選出が済んでから、数日後。
教室から、面倒臭そうな顔をした地道行人がクラスメイトに見送られて、気怠そうに教室から出て行った。
これから実行委員の打ち合わせがあるらしい。体育祭までの一か月弱、是非とも頑張ってもらいたいものだ。
「あ~だる……進~、部活いこうぜ~」
友人で同じサッカー部の外川海が、覇気のない様子で話しかけてきた。
とてもインターハイに出場するレギュラーとは思えない気怠そうな表情。こりゃ今年も一回戦負けか……なんて思ってしまう。
本来なら俺も部活に参加するべきなのだろうが、ちょっと困った事になった俺は悩んでいた。
それはもちろん、マネージャー達の事だ。東森に西林、そして時雨がマネージャーを辞めたいと顧問に相談したという。
正直、考え直してほしい。特に時雨の顔が頭に浮かぶ。
ちょっと気になっていると聞かされただけで、俺の中で時雨は特別になってしまっていた。
気になるといえば、雪永先輩もだ。
あのファミレスの時にやらかしてしまってから、一度も話していない。
なによりまずは謝らなくては。先輩のお気に入りでいる事が出来なくなってしまう。
――――二人に会いに行く――――
「俺さ、マネージャー達に会って来るわ」
やはり部活なんてやっていられる状況じゃない。二人に会って、話をしなければ。
それに、そのために地道を実行委員に推薦したんだ。
最近の地道は、女子にキャーキャー言われていい気になっているっぽいし。そのままの勢いで、二人との関係を深めてしまう恐れもあった。
だから二人との接点を切らすために実行委員になるよう仕向けた。地道が忙しいこの間に、少しでも二人と距離を縮めたい。
「あ~マネージャーか……俺も行こうか?」
「いや、海は試合に出るんだから、練習しとけよ」
「そうか? なら任せたわ」
海はあまり興味がなさそうに見える。海にとっては辞めようが続けようがどっちでもいいのかもしれない。
他のサッカー部の連中もそんな感じだろうか? なんて思いながら、俺は二人に会うために教室を出た。
教室を出て、まずはどちらから会いに行こうと考えた。
時雨たちマネージャーは、今日は部活には来ないだろう。となると彼女達は特にやる事もなくなり、すぐに帰ってしまうかもしれない。
逆に先輩は生徒会の仕事でいつも忙しそうにしており、早く帰る日の方が珍しい。
となればマネージャーだと、俺は一年のフロアに足を運んだ。
以前教えられた時雨の教室を目指して歩く。部活に行くのか帰るのか、大勢の後輩とすれ違った。
俺という異物が珍しいのだろう。声を掛けられることはなかったが、興味深そうに俺の事を見てくる後輩が多かった。
「……天道先輩?」
「こんにちは……」
時雨の教室まであと少しという所で、東森と西林に会った。どことなく気まずそうにしている二人に、俺は構わず近づいた。
「なぁ、マネージャーの事なんだけど……」
「ああ、はい」
「…………」
「辞めるって聞いたんだけど、本当か?」
「そう……ですね。そのつもりです」
「……正式にはまだですけど、退部届はもう書きました」
やはり辞めるつもりらしい。二人とも少しだけ言い含めたが、言葉の強さや態度が意思が固いのを物語っていた。
迷っている段階だと勝手に思っていたのだが、ここまで意思が強ければ説得するのは難しいかもしれない。
「……時雨も辞めるのか?」
「愛莉は迷っているみたいでしたけど……恐らく」
二人とは違い、時雨は迷っているという。
それならまだ説得できるかと、僅かばかり安堵した。
「天道先輩、愛莉を説得するつもりですか?」
「ああ、まぁ……ちょっと話はしたいかな」
「天道先輩なら、愛莉を説得できるかもですけど……」
俺なら説得できるというのは、時雨がマネージャーになった理由が俺だからなのだろう。
そういう二人は浮かない顔をしながら、続きを話し始めた。
「でも、今までと同じじゃダメですよ?」
「もし愛莉が一人だけになったら、もっと大変になるんですから」
「あ、ああ、そうだな」
「本当は、愛莉にも辞めて欲しいんですけど……」
「愛莉が自分の意思で続けたいって言うのなら、私達は……」
その後二人に、サッカー部の悪い所などを指摘された。
それが改善できなければ、時雨がマネージャーを続けたとしてもいつか絶対に辞めるであろう事など。
思い当たる節は多々あった。彼女達の言う通りだった。
俺は二度と同じ過ちを繰り返さない事を二人に誓い、時雨の居場所を尋ねた。
「愛莉は体育祭実行委員の集まりに行ってますよ?」
「え……」
実行委員の集まり……? それを聞いた瞬間に嫌な予感が脳裏を過った。
時雨が実行委員になるなんて思ってもみなかった。一クラス40名弱いる、その中から都合よく時雨が選ばれたと?
俺は二人にお礼を言い、生徒会室へと急ぎ足を運んだ。
――――
――
―
生徒会室に着いたが、施錠されていて中に入る事は出来なかった。
人の気配も感じられないので、どうやら他の場所で打ち合わせなどをしているようだ。
となれば会議室だろうか? 様々な会議を行う少しだけ大きめな部屋を思い浮かべ、そこへ足を運んだ。
会議室に付くが、そこも施錠されていて入る事が出来なかった。
しかし生徒会室とは違い中には人の気配があり、僅かだが話し声も聞こえてきた。
恐らくここだろうと、俺は会議室の前で時間を潰す事に。会議が終わって、とりあえずは時雨に声を掛けてみようかと考えながら時間を潰した。
――――
――
―
どのくらい経っただろうか? 未だにボソボソと話し声が聞こえてくるため、まだ会議が終わっていないのはわかるのだけど。
流石にちょっと長すぎる。初日からこんな長い会議をするなんて、ちょっとだけ同情してしまう。
しかし、本当に失敗した。
実行委員という仕事は大変なのだろうが、立候補していれば時雨と一緒にやれたという事が凄く悔やまれる。
それに雪永先輩もだ。生徒会長なので、体育祭の事ばかりにかまけていられないと思っていたのだが、まさか実行委員に付きっ切りだったりしないよな?
もしかしたら、俺は選択を間違ったのかもしれない。
「……うん? おお天道、どうした?」
ぼけーっと窓の外を眺めながらそんな事を思っていると、急に声を掛けられた。
声がした方を振り向くと、そこにいたのは担任の横谷先生だった。
「ちょっと、会議が終わるのを待ってて……」
「そうなのか? まだまだ掛かると思うぞ? あれなら呼んでくるが」
「あ、いえ……それはちょっと悪いんで」
流石にそこまでしてしまっては印象が悪いと思い断った。
待っていれば一緒に帰る事だって出来るはずだと、俺は会議が終わるのを黙って待つ事にした。
「まぁお前がそう言うなら……じゃあ俺は行くぞ? しかしめんどくせーなぁ……――――職員会議」
……今なんて言った? 職員会議……?
俺は会議室の扉をノックしようとしている横谷先生に慌てて声を掛けた。
「せ、先生! 会議って……実行委員の会議じゃないんですか!?」
「び、びっくりさせるなっ! なんだ急に!?」
本気でビビった様子の先生だが、それどころではない。
何時間待ったと思っているのだ。俺は、教師達の会議が終わるのを待っていたというのか!?
「実行委員の会議は体育館で行われてるぞ? まぁ、もうとっくに終わっただろうが」
「お、終わった……?」
「な、なんか分からないが、元気出せよ? じゃあな」
そういうと先生は会議室の扉をノックした。
数秒待って扉が開かれる。チラッと見えた会議室には、十数人の教師の姿が見えた。
その後、念のためにと体育館に足を運んだが、先生の言う通り終わったのか誰もおらず。
俺は肩を落としながら、家に帰った。
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