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第8話 売られた喧嘩は勝てそうなら買うタイプ

 【海と部活に行く】

→【二人に会いに行く】


おふざけ回です

ボツにしていた話を調整し直しました






 どうも、体育祭実行委員の地道行人です。


 あ、ちなみに二年三組の代表です。代表というか生贄です。


 熱烈な信者(クラスメイト)に崇められ、洗脳の責任を取るため俺は、実行委員の集まりに参加していました。



「皆さん、体育祭の実行委員を引き受けて頂き、まずはありがとうございます」


 体育館に集められた俺達は、壇上で凛々しく挨拶をする雪永睦姫生徒会長の事をぼけーっと眺めていました。


 先輩の周りには生徒会のメンバーが勢揃いのようで、中にはメガネがやべー似合ってるイケメンもいました。



 自分の周りを見渡すと、すげーやる気に満ち溢れた顔をする生徒もいれば、面倒臭そうに欠伸をする生徒もいるようです。


 え? 自分はどっちかって?


 もちろん前者であります。任された以上は全力で挑む所存。俺を選んでくれた洗脳者達のためにも、適当にする訳には参りません。



「はぁ……めんど」


 おっと、つい心にもない言葉が口から飛び出していきました。


 あれは声帯が痙攣しただけなので気にしないで下さい。自分たまにあるんですよ、声帯痙攣。



「体育祭を成功させるためにも、皆様のお力を貸して下さい。宜しくお願いします」


 軽く頭を下げた雪永先輩に、盛大な拍手と乾いた拍手が混じったなんとも言えない拍手が贈られました。


 もちろん自分は盛大側です。得意なんですよ、無駄に大きな音の拍手をするの。



 雪永先輩は一歩下がると、代わりに一歩前に進んだのは先程のメガネイケメンでした。


 どうやら副会長らしいです。もしかして生徒会に入るには、一定以上の容姿が必要なのでしょうか?


 それなら自分は生徒会に入れますね。来年たあり会長を狙ってみるのも面白いかもしれません。



 話は逸れましたが、イケメン先輩は実行委員の仕事やスケジュールについて説明し始めました。


 なんか本格的に始まりそうで、嫌だなぁ嫌だなぁ怖いなぁ……と思っていた時でした。


 気のせいでしょうか? 後に下がった雪永先輩とめちゃんこ目が合っている気がするの……だが。


 そりゃあんな美人に見つめられたら目も覚める。


 俺は先輩の目を見つめながら、話半分に聞いていた縦山先輩の話を真剣に聞き始めた。



 ――――

 ――

 ―



 縦山副会長の話が終わり、一人だけいた教師が話し始めたタイミングで、俺は先輩の話を反芻していた。


 今日はとりあえず顔合わせがメインらしいので、特に仕事はないとの事。


 まずは種目を決めるのと、体育祭で使用する備品の確認を数日中に分担して行うらしい。


 俺はどうしよう? 頭を使う方か体を使う方か……どっちも得意だから困る。



 壇上では教師が、体育祭は生徒主導だとか教師は前に出ないとか色々と言っているようだが、さっそく矛盾している気がする。


 ……飽いた。これなら校長先生の話を聞いていた方がよっぽどマシだ。


 そのため俺は、どんな生徒が参加しているのだろうと辺りを見渡してみた。


 するとどうだろう? 周りをよく見てみると、女子の比率が高い事に気がついた。


 約七対三。体育祭と聞けば男が多い方が良さそうな気がするのだが。


 ともあれこの比率なら、俺がメインで動かすのは体で決まりだな。



「ん……?」


 ふと、背中に視線を感じた気がしたので振り返ってみるた。


 そりゃ視線も感じるハズだ。一人どころか五、六人の目が俺を向いていた。


 前の列は3年生で、後の列は1年生。俺は数人の後輩女子から熱い視線を浴びていた事になる。



「きゃーこっち見たよ」

「ほんとだカッコいい」

「あたし地道派かも~」

「縦山先輩もいいけど……う~ん迷う」


 小声だが騒がしくなる後輩達。


 実行委員は各クラス1名だけなので、人数はそれほど多くない。


 だから目立つ。俺は振り返るのを止めて、前を向こうとした時だった。



「…………」


 見た事ある美少女と目が合った。その可愛さは、1年の中でも飛び抜けている。


 俺は軽く微笑みながら、その子に向け小さく手を振った。



「~~~っ!」


「ね、ね。私に手を振った」

「いや~角度的にあたしだと思う」

「あの笑顔はヤバいね……」

「年下キラーだ」


 真っ赤になって俯く美少女の様子に満足しながら、俺は再び前を見た。


 憐れ時雨愛莉、お前も生贄にされたのか。


 そう思いながら心で涙を流していると、前方からド鋭い視線が飛んできた。



「…………」


 雪永会長がお怒りだ。軽く肩がビクつくほどの冷たい目が俺を睨んでいた。


 俺は目で無実を訴える。瞬き一つせず、俺の想いを先輩に伝えるために見つめ続けた。


 中々目を逸らさない先輩。もはやこれは想いの伝達という勝負だ、俺から目を逸らす訳にはいかない。



「…………っ!」


 勝った。どうやら先輩に伝わったようだ。


 少し遠いためハッキリとは分からないが、先輩は頬を僅かに染めて目を逸らした。


 俺は満足し、未だに話を続ける教師に視線を移した。



 ――――

 ――

 ―



「先輩先輩っ!」

「私、先輩のファンになっちゃいました!」

「実行委員になって良かったぁ~」


 会議が終わった途端に複数の女子に囲まれ、俺は身動きが取れなくなってしまっていた。


 囲んでいるのは半分以上が後輩女子。その中には時雨の姿もあった。


 時雨は周りには気押されているようで、少し離れた位置でオロオロとしている。



「ところで先輩! さっき誰に手を振ったんですか!?」


 一人の後輩の言葉に皆の注目が集まった。


 2年の女子は頭にハテナマークを浮かべているが、後輩達はみんな期待しているような表情をしていた。



「俺が一番可愛いと思った子かな」


「わ、私ですか!?」

「あたしかも……」

「はわわわわっ」


 まぁ、こんな状況で明言なんて出来ないし、しない方がいいだろう。


 手を振ったのは一瞬だし、あの距離で短い時間の視線送りなんて曖昧なもんだ。



「それより、他の人達とも交流した方がいいぞ」


 俺はもう一つの人集りに目を向けながらそう言った。


 俺がいる場所から少し離れた所に、副会長の縦山先輩を中心にした人集りがあったのだ。


 極端に言えば実行委員が二分されている状況。俺の所にいるか、縦山先輩の所にいるかだ。



「あっちの人達とも交流しないと…………いや、ちょっと待て」


 縦山先輩と目が合った。


 俺は、お互い苦労しますねフヒヒッ……的な表情をしたつもりだったのだが、縦山先輩の表情は少し違った。


 なんだその挑戦的な目は? いや、勝ち誇っている表情にも見える。



「あ~、確かに向こうの人達にも挨拶しないとですよね。私、行ってきま――――」

「――――ダメだ、ここにいろ」


 離脱しようとした女子に待ったの声を掛け、真剣な表情をして足の動きを止める。


 その女子は顔を赤くして再び俺の元に戻ってきた。



「お前達もここにいろ。俺から離れる事は許さん」

「「「は、はいっ」」」


 いいでしょう。その勝負、受けて立とうではありませんか。


 後輩だからと舐めないで頂きたい。下剋上だ。



 どちらが多くの人を集められるかという喧嘩を売られた俺は、それを買う事に。


 向こうは3年生が中心に構成されており、こちらは逆に1年生が中心に構成されている。


 しかし、大多数の生徒会メンバーが向こう側に付いてしまっているため、人数的には俺が負けている状況。


 ならば策を練ろう。題して、こっちの水は甘いぞ作戦。



「時雨、ちょっとおいで」

「え? は、はい」


 急に声を掛けられた時雨は驚きつつも、黙って従い俺の傍にやって来た。


 俺は時雨の肩を掴んで立ち位置を調整する。時雨は耳まで赤くしてしまっているが、少しだけ我慢してくれ。



「あ、あの、行人先輩……?」

「大丈夫だ。安心しろ、お前は可愛い」


「ほ、本当ですか!? でも、なんですかいきなり?」


 美少女の時雨を前面に押し出し、向こうの男を奪う作戦に。


 この場にいる女子の中で、時雨は雪永先輩と間違いなく双璧な可愛さを持っている。



「時雨、ちょっとだけ向こうの人達においでおいでしてくれない?」

「……私のお願いを聞いてくれるなら、やります」


「問題ない、契約成立だ。やってくれたまえ」

「やった! ぜ、絶対ですからねっ」


 笑顔になった時雨が、男達に向けて手を振り始めた。


 するとどうだろう、予想を超えた大物が釣れてしまった。恐るべし歳上キラー。



「地道君? あなたさっきから何をしているの?」

「ははは、勝った」


 まさに確定演出。やってきたのは双璧の片割れ、雪永睦姫。


 今頃この台はキュインキュイン鳴ってる事だろう……って母さんが言ってたのを聞いた事がある。俺はなんの事か知らない。


 気が変わらない内にと俺は先輩の腕を取り、少し強引に引き寄せた。



「ちょ、ちょっと? なんなの急に」

「先輩は俺のものです。もう渡しませんよ」


「なっななな……ど、どういう事よ!? そんな事急に言われても……」


 テンパる先輩を他所に、俺は縦山先輩に向けて勝ち誇った笑みを送った。


 まだ人数は負けているが、時雨と雪永先輩がこちらに来た以上、そちらの人員流出は確定だ。


 さぁ、全ての男どもを吐き出せ! こっちの水は激甘だぞ!


 そういった視線を縦山本陣に送ると、吐き出されたのは縦山先輩本人だった。


 縦山先輩はそのままこちらに歩いてくると、申し訳なさそうな表情で俺に話し掛けてきた。



「あはは、ごめんごめん。ちょっとフザけただけだったんだ。許してくれないかな?」

「そうだったんですか(負け惜しみやろ!)」


 どうやら遊び半分であの表情をしたらしく、ここまで大事になると思ってなかったそうだ。


 俺もつい熱くなってしまった。後で先輩や時雨、後輩達に謝らないと。



「でもまさか会長が取られるとは思わなかったなぁ……会長?」


「なんなのよ……どういう事よ……どうすればいいのよ……」


 雪永先輩は何かブツブツと呟いていた。


「……どうしたんだい? これ」

「ど、どうしたんでしょうね」


 雪永先輩が復活するまで収集が付かず。実行委員は仲良くなったが大変だった、というお話。

お読み頂き、ありがとうございます


次回選択肢

【二人を探す】

【晴山達と帰る】

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― 新着の感想 ―
[一言] 知っていますか?キュインキュイン鳴っても極稀にハズれるんですよ?w
[一言] 第3章が「第2章」のままになってますよ
[良い点] おもしろい!
感想一覧
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