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バッド選択・迷走 ~晴曇~

天道sideです


折り返し地点

ルート消滅確定、結果待ち






「そこまでだ! ペンを置け!」


 最後のテストが終わり、俺は溜め息と共にペンを置いた。


 テストの出来は……まぁいつも通りか。赤点なんて取らないだろうが、かといって90点以上の高得点でもないだろう。


 あまり意識した事はないし、順位を確認した事もなかったのでハッキリとは分からないが、俺の成績はこのクラスで五本の指には入っているはずだ。



「地道! ありがとなっ!」


 聞き覚えのある声が教室に響き渡った。その声の主は友達の、外川海のものだった。


 去年も同じクラスだった海は、テストが終わると毎回俺の所に来ていた。暗い顔をしながら愚痴を零しにやって来るのが通例だったのだが、今回はそうではなかった。


 海を皮切りに興奮した様子のクラスメイトが地道行人の事を囲んでいた。


 海もクラスメイトも顔に笑顔を浮かべている。よほど地道の勉強会が良かったのだろうか?



「進くん……テスト、どうだった?」

「お前は相変わらずだな……」


 俺に寄ってきたのは晴山華絵だけだった。その表情は優れていないため、あまりテストが上手くいかなかったようである。


 しかし、よくよく考えればこれも今までにない事だった。


 華絵はテストが終わると、机に突っ伏して泣きべそをかく。ほぼ全ての教科で赤点を取ってしまう華絵は、歩く事すら困難になるほどだった。


 それが今はどうだろう? 確かに暗い顔をしているが、いつもと違いどこか余裕があるようにも感じられた。



「今回は泣かないんだな? もう赤点を受け入れたのか?」

「ま、まだ分からないもん! 赤点じゃない可能性だってあるし!」


 赤点じゃない方が珍しいくせに、何を言っているんだと思った。


 それとももしかして、あの図書館で別れた後に誰かに勉強を教わったりしたのだろうか? 一人で勉強した程度で赤点を回避できるほど、華絵は賢くない。



「……あの後、誰かに勉強を教えてもらったのか?」

「……そんなの、進くんには関係ないじゃん」


 目を逸らしながらそう言う華絵に少しだけイラっとしたが、俺が突き放す選択をした手前、それ以上は何も言えなかった。


 もし本当に赤点を回避できる自信があるなら、華絵は誰かに教えてもらったのだろう。もしかして、あの後で地道の勉強会に参加したりとか……?



「まぁなにんせよ、それなら赤点じゃない自信があるんだな?」

「えっと……英語だけ自信が――――」


「――――ねぇ晴山さん! 天道君もちょっといい?」


 何かを言おうとしていた華絵を遮って、クラスの女子が話しかけてきた。


 何事だとそちらに目を向けると、華絵とは対照的に顔を明るくしているクラスの女子が遊びに行こうと誘ってきたのだった。



「どうかな? ほとんどの人が参加すると思うんだけど」


 クラスのほとんどの人が参加するという事は、もうそれはクラス行事と言っていいだろう。


 このクラスの一員となって二か月弱。こういうイベントをこなしていけば、クラスメイトとは仲良くなる事ができるだろう。


 問題は、さっきから微妙な顔をしている華絵なのだが、行きたくないのだろうか?


 ――――参加する――――


「せっかくだし、参加しようかな」

「じゃあ校門に集合ね! 遅れないでよ~」


 華絵の意思は確認せず、クラスメイトは教室を出て行った。俺と華絵はいつも近くにいるせいか、セットとして考えられる事が多い気がするのだが、そのせいだろうか?


 俺も華絵の意思は確認してないが、華絵はこういうのには参加する奴だし、聞かなくても大丈夫だろうと思っていたのだけど。



「じゃあ行くか、華絵」

「う、うん……あのね? 少し用事があって……」


 先ほどから表情が優れない華絵は、どこか言いづらそうにそう言った。


「用事って、家の用事?」

「ううん……ちょっとね。後で合流するから、先に行っててくれる?」


「……そうか、分かった」


 特に深く追求することなく、俺は近寄ってきた海たちと一緒に教室を出た。


 去り際に華絵の様子を見たのだが、どこに行く訳でもなく椅子に座り直したのが不思議だった。




 同時に何人もの生徒が廊下に出たため若干の混雑を見せている廊下。そんな人が多い中、亜麻色の髪をして目立っている子を見つけた。


 それは玲香だった。俺は壁にもたれ掛かって誰かを待っている雰囲気の玲香に近づき、声を掛けた。



「玲香? 誰か待ってるのか?」

「進? なによ、これからどこかに行くの?」


「ああ、ちょっとクラスのみんなと遊びに」

「……そう」


 もしかして玲香は俺を待っていたのだろうか? つまらなそうに目を下げた玲香を見てそう思った。


 しかしいつもなら教室に入ってきそうなものだが、今日の教室の雰囲気を見て入るのをやめたのだろうか?



「もしかして俺に用事だった?」

「ち、違うわよ! まぁ、暇ならどうかとは思ったけれど……」


 少し素直じゃない玲香の、こういった言い回しには慣れたもんだ。言い方的に、やはり俺に用事があったのかもしれない。


 どちらにしろ誰かを待っていたのは確実だろう。玲香は放課後になるとピアスを付けるので、もう学園を出る予定だったはず。


 なのにここにいるという事は、誰かを待っていたという事。しかしどちらにしろ今日は、クラス行事に参加するので玲香の誘いは断るしかないのだけれど。



「悪いけど、ちょっと今日は――――」

「――――あっ……ごめん進。あたし、もう行くね」


 そう言うと、玲香は小走りで俺から離れていった。


 もしかして待ち人を見つけたのだろうか? なんかそんな反応に見えたが、玲香が走って行った方向には誰の姿も確認できなかった。



「おい進! 終ったなら早く行こうぜ?」

「……ああ、いま行く」


 俺が玲香と話している時、後ろで黙って俺達を見ていた海が催促してきた。


 昇降口に向かう途中、海は先ほどの光景を振り返るように話しかけてきた。



「やっぱ玲香ちゃん可愛いな~。というかお前、振られたんか?」

「はぁ? なんでそうなんだよ?」


「だってさ、お前と話してる時はブスっとしてたのに、急に目の色を変えたと思ったら走ってちゃったし」

「……それがなんだよ?」


「だからさ、彼氏の姿でも見たんじゃね~の?」

「アイツに彼氏がいるって話は聞いた事がない」


 玲香とは放課後に遊ぶ事も多いし、休み時間は基本的に俺と華絵に会いに来る。


 彼氏がいるならそっちを優先するだろう。最近は少しすれ違っている気もするが、そんなすぐに彼氏なんて出来ないだろうし。



「ところで華絵ちゃんは?」

「なんか用事があるって、後で来るとか言ってた」


「それなら待っててやれば良かっただろ」

「なんでそこまでしなきゃならないんだよ」


「……お前さ、そんなんじゃ誰かに取られるぞ? 二人とも可愛いんだから」

「取られるって……俺は別に二人とは……」


「まぁ冗談半分で言ってるけどよ? なくはないんだぜ?」

「…………」


 その後も海に色々言われながら、クラスのみんなと合流した。中々の人数だが、よく見れば数名来ていない者もいるようだ。


 それなりに大きな集団となった俺達は、なんでもあるアミューズメント施設に向かって行った。



 ――――

 ――

 ―



「――――にしても地道は凄いよなぁ」

「ほんとにね! 全く同じ問題も出てたよ」


「出る問題じゃなく、問題文も同じだったもんな!」

「やっぱ学年1位は凄いよねぇ」


 現在俺は、十人ほどのクラスメイトと一緒にカラオケを楽しんでいた。人数的な問題があり、部屋は三つほどに分かれている。


 歌うより会話メインのカラオケだが、話題は専ら地道行人の事だった。


 というか、地道って学年1位の頭だったのか。あの気味の悪い会話は、頭が良ければこそと言う事か?


 頭のいい奴が難しい言い方で何かを伝えようとしてくれてたけど、少しだけ頭のいい程度の俺には理解出来なかったと。


 それはそれでムカつくけど。それに、いきなりあんな事を言われたら誰でもそうなると思う。


 でも一応クラスメイトだし、関わりたくないは言い過ぎだったか。



「地道様々、俺はもう地道様と呼ぶぜ」

「顔もいいし頭もいいし! 性格もいいよね」

「清潔感あるし爽やかだし。それにこの前街で見かけたんだけど、凄くお洒落だったんだよ」


「でも地道君って、去年とかほんっと影薄かったよね?」

「去年というか、ついこの前まで陰気オーラ出てたけどな……」


「「人って変わるもんだねぇ」」


 昔の地道に対するクラスメイトの印象は、俺と差ほど大差ないようだった。


 それがここまで変化するのだから、凄いものだな。何か心境の変化でもあったのだろうか。



「進も頭はいいんだけどな! 去年は進が勉強会開いてくれてたし」

「頭はってなんだよ……」


 海が急に話を振ってきた。確かに仲間内だけではあるが、去年は俺が中心となって勉強会を開いていた。


「天道も頭はいいけど、流石に地道には敵わねぇべ?」

「……張り合ってるつもりはねぇよ」


 なんでアイツと比べられなきゃならないんだ。俺だって勉強すりゃ、学年1位だって……。



「まぁ天道には晴山さんがいるしな! あと安曇さんとか」

「な、なんの話だよ」


「それだけはマジで許せねぇ、なんであんな可愛い子達が……」

「ねぇねぇ、どっちが本命なの!?」


 地道の話題から俺に話題が移ったが、内容的に止めてほしいものだった。


 居心地が悪くなった俺は部屋を出ようとも思ったが、出ても行く所などない。



「華絵ちゃんといえば、遅くね?」


 華絵……そうか、華絵を迎えに行くという理由ならスムーズに出られるか。


 でもすれ違う可能性もある。まぁ部屋を出たら連絡すればいいか。


 ――――行く――――


「俺、ちょっと迎えに行ってくるわ」


 海が部屋を出る理由を作ってくれたので、これ幸いと俺は部屋を出た。


 若干冷やかされつつも、強引に部屋を出た俺はそのまま、華絵がいるハズの学園へと戻った。



 ――――

 ――

 ―



「ごめ~ん、遅くなっちゃった」

「あれ、華絵ちゃん? 天道君は?」


「進君? えっと……?」

「さっき華絵ちゃんを迎えに学園に戻ったんだけど……」


「そうなの? でも会ってないよ」

「あちゃ~、すれ違いになったか。連絡とか来てないの?」

「来てないと……来てた!? ど、どうしよう!?」


「まぁすぐ戻ってくるだろ!」

「そ、そうだよね。一応連絡しておこう……」


「それよりも華絵ちゃん! 後ろの御方はまさか!?」

「あ、クラスの子じゃないんだけど……いいかな?」


「「もちろん!」」


「良かったぁ――――じゃあ玲香ちゃん、一緒に遊ぼっ」

お読み頂き、ありがとうございます


次回

→【天道side】


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― 新着の感想 ―
[一言] 寝取るはニュアンス的には違う気がしてますがこれから一緒に寝るなら問題ないですね
[良い点] 今自分がお気に入り登録している中で更新が1番待ち遠しい作品。地道くんsideが更新されている時は天道くんsideが早く読みたくて仕方ないし、天道くんsideが更新されている時はその逆で………
[一言] 愉悦
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