第1話 行けたら行くわで行く確率は?
第2章です
いよいよ物語が動き出す
【参加しない】
→【参加する】
「そこまでだ! ペンを置け!」
中間テスト終了。先生の合図で緊張感が解かれ、クラスメイトが気を緩めだしたのが分かった。
去年の試験後には暗い顔をする奴が何人もいたものだが、見渡す限りでそれはなく、どいつもこいつも笑顔だった。
俺の方も特に問題ないだろう。今回は自分の勉強時間は多少減ったが、その程度で揺らぐほど俺は努力を怠っていない。
今日はこれで終了。明日明後日は休みで、月曜日にテストが返却される予定だ。
この後は特に予定はない。帰り支度をし始めた所に、笑顔を弾けさせながら近寄ってきたのは……クラスの男子だった。
「地道! ありがとなっ! あの問題集のお陰で助かったぜ!」
「ほんとほんと! 的中率やばくね? 間違いなく歴代最高得点だわ!」
「そりゃよかった」
「俺、あの問題集以外ほとんど勉強してないわ」
「俺も俺も! ほとんど部活してた!」
「それはいくない」
「ほんと、お前と同じクラスになれて良かったわ~」
「お前それはダメだろ? 地道はお前に勉強を教えるためにいるんじゃねぇよ」
「そうだそうだ」
「そ、そういう意味で言ったんじゃねぇよ! 頭がいい地道が居てくれて助かったって……」
「なら言い方ってもんがあるだろ? んな事言われたら地道も気分悪いだろうが」
「けんかはめっ」
「ほんとにありがとね! 今度また勉強会開いてくれないかな? もちろん、問題集を解くだけの勉強会じゃなくてさ!」
「いいなっ! このクラスの恒例行事にしようぜ!?」
「え~めんど~い」
話した事もないクラスメイトに囲まれて、帰るタイミングを見失ってしまった。
適当にクラスメイトに答えていると、何度も話した事があるクラスメイトが話しかけてきた。
「もうちょっとさ、感情を込めて反応してやったら?」
「なにがよ? 俺はいつもあんな感じだろ」
「空返事ばかりだったぞ? スマホ弄ってたし……今も弄ってるし」
「婆ちゃんからメッセージが来てたんだよ……オッケーだよ婆ちゃん、楽しみにしてるね☆っと……」
陸を始めとした友人たちが、呆れたように溜め息をついた。
だって仕方ないだろう。ちょうど婆ちゃんから連絡がきたと言うのもあるが、囲んでいるのがむさ苦しい男達なんだから。
「普通こういうのはさ? 女子たちに囲まれたりするもんじゃないか?」
「お前、そういう事思ったりするんだ? 女子に興味ない不能かと思ってた」
「誰が不能じゃ。バリバリ可能だっての」
陸たちと会話をしていると、男子たちは口々に礼を言って離れていった。
部活に向かった様子のクラスメイトも何人かいたようだが、なぜか大多数はクラスに残って駄弁っている。
そんな中、数人の女子が男子の囲いが引けたと同時にやってきた。
「ねぇ地道君! これからみんなで遊びに行こうって事になってるんだけど、行かない?」
「行こうよっ! 男子も結構行くし」
クラスの中でも中心にいる事が多い女子たちが、遊びに誘ってきた。
その容姿にこの行動力、男子と話す事にも慣れていそうな、いかにもカースト上位の女の子達。
よくよく見渡せば、このクラスの女子の容姿のレベルは高い。虐めとかも全くない、女子は可愛い子ばかりのいいクラスだと思う。
しかし断ったら省られたりする? 女子の結束力は男子の比じゃないぞ。
「ついでに中島君たちも行くよね?」
「ついでかよ~、まぁ行くけど」
陸たちも参加するようだ。別にこのあと予定がある訳でもないし、クラスメイトと更に仲良くなりたいのであれば参加一択だろう。
「ちょっと待ってくれる?」
「ん? うん」
参加一択だったのだが、それを頭の隅に追いやり後ろを振り向いてみた。
そこには天道と晴山、そしてクラスの女子生徒たちが何やら話していた。恐らく天道と晴山の事も遊びに誘っているのだろう。
天道はどうでもいいので晴山の様子を見てみると、彼女は少々浮かないような表情で天道の事を見ていた。
「せっかくだし、参加しようかな」
「じゃあ校門に集合ね! 遅れないでよ~」
どうやら天道は参加する事にしたみたいだ。
だが晴山は相変わらず微妙に浮かない表情をしている、腹でも痛いのだろうか?
しかし、そうですか、天道君。そこは晴山の様子を見て、慎重に選ぶべきだったのではないだろうか。
「重要だったと思うぞ~」
「うん? なに地道君? 重要って」
「ああ、ごめん。重要な用事を思い出したんだよ」
「ええ~……じゃあ行けないの?」
「行けたら行くわ」
「それ来ないやつじゃ~ん! 来れたら本当に来てよね!」
遊ぶ場所の詳細を聞き、用事が早く済んだら行くという事にしてみんなと別れた。
みんなが揃って昇降口に向かう中、俺は反対側にあるトイレに向かい、身だしなみを整える。
こういう細かいチェックは重要だ。思いがけないミスがあるかもしれないからな。見えない所に寝癖が付いて、頭皮が見えていたとかは最悪だ。
そうして少しだけ長めのトイレを終えて外に出ると、腕を組んで不機嫌そうにしている女子生徒が目の前にいた。
「遅いっ! いつまで待たせるの!」
そこにいたのは安曇玲香だった。
この前見た時とは違い、メガネはしていないし髪も結んでいない。相変わらず綺麗な亜麻色セミロングの髪型に、放課後だからだろうか? 耳にお洒落なピアスが付けられていた。
「ごめんごめん、お待たせ! 待った?」
「ううん、あたしも今来たとこ……って違うわよ! アンタなんて待ってない!」
「いやでも待ってたって……」
「そうだけどっ! そうじゃないのっ! アンタの反応がおかしいのよ!?」
ちなみに安曇とはなんの約束もしていない。トイレを出たら不機嫌そうな安曇がいて、いつまで待たせるとか言うから遊んでみただけだ。
だってなんか安曇ってこう……揶揄いたくなるというか。
「冗談だよ。それで、今日はどこに行く?」
「そうね、えっと……いやだからっ! なんなのよ!?」
乗せられやすい子なのだろうか? これは面白いと、このやり取りは少しの間続けられた。
最終的に顔を赤くした安曇にマジ睨みされたので揶揄うのをやめた。
お読み頂き、ありがとうございます
次回選択肢
【行く】
【行かない】
土日はお休みするかもです




