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軍の少将になって帰国したら今さら学園に通えと言われました  作者: マイヨ@電車王子様【11/25発売】


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第97話 ブラック生徒会

 朝起きると、ミーナはすでに布団の中に居なかった。

 玄関を見ても靴が無いので、ミーナは俺が起きる前に起きてベッドから抜け出たようだ。


 仕事が本当に忙しくて、深夜帰りの早朝出発なのだろう。


 それでも、殺人的なスケジュールの合間を縫って俺の顔を見に来たのか。


 俺の顔を見て癒し効果があるのかは甚だ疑問ではあるが、今度はゆっくりミーナとの猫遊びに付き合ってあげよう。


 そう思いながら、いつもの通り学園に行って放課後は生徒会室で今日も書類仕事かと辟易している時に、突如、高見学園長から呼び出しがあった。


「何でしょうね? 生徒会メンバーで学園長室に来いとは」


 名瀬会長が不安そうに疑問を周囲に投げかける。


「さぁ?」

「高見学園長はかつては上官だったけど、今は階級的には俺の方が上だから、用があるなら生徒会室に来させますか名瀬会長?」


「神谷様。そういう、私の胃が痛くなりそうな事は止めてください……」


「学校では様付けは止めてくださいよ名瀬会長」

「いえ……はい……頑張ります」


 生徒会長なのに最近は下っ端キャラがすっかり板についてしまった名瀬会長が、自信のなさそうな声で返答する。


 名瀬会長が俺に対して完全に丁寧な態度に変わっているのは、先日、速水さんの救出作戦時の桐ケ谷ドクターとのやり合いの場に名瀬会長が琴美の護衛として居て、俺が特記戦力の第1席だとバレてしまったからだ。


「まぁ、生徒会メンバーで来いって事だから、純粋に学校行事とかの話じゃないかな。最近は、学内も平和だし」


 真凛ちゃんが風紀委員に就任してから、学内の治安は完全に真凛ちゃんの管理下に置かれている。


 飛び級入学だから、実質は中学生の真凛ちゃんに頭が上がらないとは……世の中、腕力や魂装能力だけではどうにもならないという事を、生徒たちに身をもって教育してくれている、ある種貴重な存在だ。


「じゃあ、用事はさっさと済ませちゃいましょう。行きますよ名瀬会長」

「はい、火之浦様」


 入学当初の頃の、生意気褐色ギャルキャラの名瀬会長が懐かしいなと思いつつ、俺たちは学園長室へ向かった。




◇◇◇◆◇◇◇




「「「え⁉ 学園祭ですか!」」」


 高見学園長からの用件は、たしかに学校行事に関することだったが、内容は予想外のものだった。



「やったー-‼ 学園祭だー-‼」



 半ば諦めていた青春やりたいことリストの上位、学園祭が出来ることに、俺は思わずはしゃいだ声を上げた。


「この学校って、学園祭の実施は不可能との方針じゃありませんでしたか? 高見学園長」

「確か、3代前の生徒会でも実施が計画されましたが、セキュリティの問題で難しいと取りやめになってました」


 ただ無邪気にはしゃぐ俺とは対照的に、琴美と名瀬会長が高見学園長に、急な学園側の方針転換について疑問を投げかける。


「ああ、それなんだが。虎咆上等兵が関係している」

「ミーナが? なんで?」


 学園祭とミーナに何の関係があるのだろうか?


「虎咆上等兵の全国ツアーが開催される。会場は全国の駐屯地と、軍の学校。そして、その開催地として、虎咆上等兵自身が通っている特務魂装学園も選ばれたんだ」


「……軍の上層部も、突如手に入った歌姫に、かなり浮かれてるみたいですね」

「そうかもな」


 苦虫をかみつぶしたような表情を見るに、高見学園長もボカしたが、上層部への想いは同様なのだろう。


「で、外部の人間を招くなら、学園祭の体を取れというのが上の指令だ。ほら」


 高見学園長が、上層部からの依頼文と概要説明の書類を渡してくる。


「ん~、何だか上の意向に沿うのは癪だけど……」

「それで学園祭の開催が許可されるなら、いいんじゃない? 追加予算もつくみたいだし」


 琴美が、依頼文の資料をめくりながら答える。


「確かに、一度開催して問題が無ければ、今後も学園祭が続けられる。後輩たちに、大きな財産として残せる。まさに、生徒会冥利に尽きる大事業ですね」


 名瀬会長も、かなり前向きになってくれている。


「よし、やりましょう!」


 元より、学園祭という青春行事が無いことに不満を持っていた俺だ。

 周りのみんなもヤル気になってくれているなら、否やは無い。


 清濁併せ吞む気概があってこそ、大事は成せるのだ。

 皆の青春の1ページのためにも頑張るぞい!




◇◇◇◆◇◇◇




 そんな風に軽く考えて、決断をした自分を殴ってやりたい。


「エナジードリンク飲む? 何本か買いだめたから……」


「お~、ありがと琴美……1本もらうよ」

「ありがとうございます火之浦さま……」


 目の下にクマを作った琴美が、エナジードリンクを何本も抱えて生徒会室に戻ってきて配る。


 俺と名瀬会長に配っても、なお何本も残るほど買ったのは、何本も飲むことを意味している。

 それはつまり、まだまだ仕事が終わらないという見通しであることを意味していた。


「こっちが出店の出店に関する決裁書類で……こっちがステージ運営に関する決裁書類……」


「備品の割り振りと追加発注はこれで終わりで……あと、前日設営準備の各クラスへの役割の分担決めがまだか……」


 急遽開催が決まった学園祭に向けて、急ピッチで作業を進めているのだが、この特務魂装学園開学以来、初めての学園祭開催なために前例もなく、書類のフォーマットもないので一から書式を作らなきゃで、要は生徒会役員の俺たちはデスマーチ状態に陥っていた。


「ユウ様、こちら書式違いです。不許可の回答書の様式は様式16です」

「ありがとう速水さん。ゴメンね、生徒会顧問着任早々にこんな状態で」


「いえ。睡眠時間を削る程度の無茶振りは、軍ではあるあるです」


「そうなんだけどさ……」


 デスクワークでの無茶振りって、また戦闘上での無茶振りとは別種の苦しさがあるんだよな。


 なんだか常に、生暖かい巨人の手に頭を鷲掴みにされてるような焦燥感を常に感じるというか。


 やはり、士官教育はおろか軍からの教育すらまともに受けていない俺は、所詮は脳筋派だ。


「失礼します。お疲れ様です~」

「真凛ちゃん良いところに! ちょっと手伝って!」


 いつものように、校内見回りを終えて日報を提出しに来た真凛ちゃんをデスマーチに引きずり込もうとする。


「私、まだ実質中学生なので、そんな遅くまでお仕事できないんです~ すいませ~ん」


 俺達のデスマーチっぷりを見て、真凛ちゃんには笑顔で速攻で断られる。


「周防しぇんぱ~い」

「悪いな。真凛を1人で下校させる訳にはいかないからな」


「このシスコン~~‼」


 労働力の確保に失敗した俺たちの気分は更に落ち込む。


「しょうがない。学内風紀担当として、こっちで警備計画の原案を作っておいてやる。後は、それを調整しろ」


「周防しぇんぱいマジしゅき!」


「生徒会で作った案を風紀委員に意見照会するのが本来の手続だが、この惨状を見るにそんな事は言ってられなさそうだしな」


「あ⁉ なに、周防く~ん。惨状って、私の格好への当てつけ?」


 名瀬会長が、恒例の周防先輩へのダル絡みを開始する。


 名瀬会長は、普段はかけないメガネをかけて、いつもは緩くパーマをかけた美しい銀髪の髪型は、今はパソコン作業にウザいからと、前髪を上げてデコ出しちょんまげスタイルである。


 なお、女性が仕事の忙しさで、容儀に気を配れなくなった時は相当ヤバい状況なのである。


「別にそんなこと一言も言ってないだろ。ほら、作りかけで良いから、警備計画のデータを早く寄越せ名瀬」


「わかったわよ……」


 名瀬会長からのダル絡みを適当にあしらい、周防先輩が仕事のデータを要求すると、名瀬会長も大人しくデータを記録デバイスに突っ込んで渡した。


 疲れから、ダル絡みの応酬をつづける気力が最早、名瀬会長の中に無いのかもしれない。


「名瀬会長~、やっぱり土門前会長にヘルプをお願いしましょうよ」


「駄目です。ケン君にこんなみっともない姿見せられない。婚約者としても、会長を引き継いだ後輩としても」


 名瀬会長は、鬼気迫る気迫で書類にガリガリと書き込みをしながら、琴美の提案にきっぱりと拒否の回答をする。


 主従の関係を重視する名瀬会長らしからぬ態度だ。


「え~~」


「こればっかりは火之浦様や神谷様の願いでも聞き入れられません。もしケン君にこの姿を見られたら、私は自身を防壁魔法でサンドしてすり潰して、この世から存在を抹消します」


「自害の仕方が怖いです! 解りました、もう言いませんから!」


 乙女としての矜持が己の命よりも大事だと言うので、ここは名瀬会長の意を汲むしかないと琴美が土門前会長を招集するのは諦める。


しかし、上官の美学や哲学で、部下が過労死するのでは元も子もない。


「ねぇ、真凛ちゃん。デリバリーで何頼んでも良いから、ちょっと手伝って」


「しょうがないですね神谷先輩。デリバリーピザの一番高いのにカニトッピングで手を打ちますわ」

「手伝うのはデリバリーが届くまでの時間だけだぞ。食べたら帰るからな」


「私、フライドチキン! お肌の事とか、もう知らない!」


「私は牛丼大盛に温玉トッピング、豚汁がいいです」


「肉……肉なら何でもいい」


 周防兄妹を何とか篭絡するのに成功したら、ついでに便乗とばかりに琴美と速水さんと名瀬会長がデリバリーのオーダーをしてくる。



「はいはい。それぞれ頼むから待ってて」



 俺は、ここ連日お世話になっている総合デリバリーアプリで、お目当てのショップを探しながら、


うーん……青春マンガの文化祭の準備回ってこんなんだっけ?


 との疑問が頭をもたげたが、そこを深く考えても幸せになれないと直感で感じとり、とりあえず目の前にある、皆の夕食兼夜食を頼むという仕事を片付けようと、スマホを指でなぞった。


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【新作】私が名人になったら結婚しよ?師匠 連載中です。

天才女子中学生棋士を弟子に持った師匠が主人公のお話です。

下の作者マイページよりご覧ください。

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