第80話 着物と袴が似合うハーフ美少女
「お疲れ様ミーナ」
「疲れた……優勝者インタビューがむしろ本番より長かったよ……」
ちょっとグッタリしながら、学祭実行委員から解放されたミーナが戻って来た。
恰好は、ステージに上がった時の着物と袴姿のままだ。
「何だか怒涛の展開だったね」
「私も、勢いに押されてついミスコンに出たけど、まさか優勝するとは思わなかった」
ミーナは照れくさそうに笑いながら俺の横について歩く。
「でも、凄い素敵だったよミーナ」
「ホント⁉ ユウ君」
「うん。この間の浴衣の時も似合ってたけど、その大正ロマンの袴と振袖姿も凄く似合ってる」
「そ、そうかな? 小学校の卒業式に袴と着物で出席する女子も多かったんだけど、私の顔や髪色じゃ似合わないと思って、私は普通のワンピースにしちゃったんだよね」
そう言いながら、ミーナは振袖を泳がせつつヒラリと袴を翻しながらターンして見せる。
「その着物はまだ着替えなくてもいいの?」
「これはミスコンの協賛企業から提供されてて、是非そのまま着て帰ってくださいって」
このままミーナが学祭をこの格好で練り歩いてくれたら、着物の宣伝になるもんな。
よく考えてるわ。
事実、さっきから道行く人の視線をミーナは独り占めしている。
なかなか、学祭に着物で来てるって人は居ないからな。
居ても、武道系の部活動の人たちが道着を着てるくらいで、華やかさは段違いだ。
「それにしても、詩吟なんていつ習ってたの? ミーナ」
「子供の頃にね。お母さんに、貴女や私はどうしたって異国の余所者に見られるんだから、日本の伝統芸能については、純日本人以上に知っておきなさいって仕込まれたんだよね」
「そっか……」
ミーナの返答に俺は少し、気持ちが沈んだ。
世界大戦が起きて、外国人排斥の機運が国内で高まった時、ハーフのミーナや、日本に帰化したとはいえ、風貌は完全に外国人のお母さんのミリアさんは相当苦労したと聞く。
そんな中で、ミリアさんも娘を護るために色々と必死だったんだな……
「でも、さっきは大変だったんだよ。超直前の飛び込みでのミスコン出場なのに、特技を披露してって言われてさ。けど、小道具も無いし、音源や楽曲は準備できないから、あとは自分の声だけしか無い! ってなって、声だけでやれる詩吟にしたんだ。詩吟は要はアカペラみたいなものだし」
「子供の頃のミリアさんの教育の賜物だね」
「そうだね。帰ったらお母さんに感謝しなきゃ。こんな素敵な着物と袴も貰っちゃったし」
「とっても似合ってる。こんな和服美人と一緒に学祭を回れて幸せです」
「な、なによユウ君。今日はやけに褒めるじゃない……沖縄の水着の時は、そこまでじゃなかったのに」
「いや、ミーナも大きく立派になったなって……」
「まさかの親目線⁉ 確かに着物と袴は卒業式で着る服でもあるけど」
「ああ、なるほど。娘を持ったお父さんって、こういう感じなのかな」
「娘って、私の方がユウ君よりお姉さんなんだけど!」
ミーナは俺にからかわれてると思って、頬をムッと膨らませて怒ってくる。
「けど、着物もこんなに似合って、あの歌唱力だし、ミスコンのステージを観てた関係者からスカウトとか来るんじゃない?」
さっきのステージは多くの人の心を掴んでいたしね。
ヴィジュアルも歌唱力もあってなら、本気であり得るんじゃないかと思える。
「有名大学のミスコンとかならともかく、軍の幼年学校のミスコンはそんなに規模も大きくないし、そういうのは無いでしょ」
「へぇ~。あ、代官山大学や慶明大学のミスコンだと、副賞で賞金50万円や海外旅行やエステ1年間無料券、企業の内定が貰えたりするんだって」
スマホで『大学 ミスコン』と調べたら色々と華やかな写真が出てきた。
「わぁ~、華やかだね。いざ幼年学校のミスコンに出たから、余計に規模の大きさが解るな~」
ミーナが俺のスマホを一緒に覗き込み、スワイプして色々とミスコンの様子の写真を眺める。
しかし、着物姿とスマホという文明の利器を操作している姿はミスマッチでちょっと可笑しい。
「軍の学校だからそこまで大っぴらに出来ないのかもね」
「あ……」
俺のスマホをスワイプしていたミーナの指が止まる。
それは、純白のウェディングドレスを着たミスコン出場者の写真だった。
「綺麗……」
ミーナが思わず写真に見入って呟いた。
「ハハッ、ステージ上に花嫁さんがいっぱいだ」
通常ならあり得ない場景だが、やはり華やかだな。
これも、ウェディング業界の企業がミスコンに協賛しているからだろうか?
戦争が始まって世の中が自粛ムードになって、結婚式を挙げないカップルが増えてしまったらしいが、やはりウェディングドレスを着る憧れはミーナもあるようだ。
「ユウ君はさ……結婚とかどう考えてる?」
「どうって言われても……まぁ、したくなったらするんじゃないかな?」
何だか軽薄な男みたいな返しだが、実際問題、まだ高校生の俺では、結婚と言われてもピンとこないというのが正直なところだった。
「そっか……でも、魂装能力者は次世代を早く生み出せって風潮だから、すぐに結婚しろって圧を感じるし」
「そんなの、俺の少将権限でぶっ潰すよ」
本当は少将ごときじゃ、国の施策に口出しや介入なんて出来ないけど、それでも俺は言い切る。
俺達の人生は俺たちの物だ。
魂装能力者だからと、自分の人生における重要な決断や選択を関係ない他人に強制されてたまるか。
「あ、いや。私は、相手次第では別にいいかなって……思ってたり……なんだけど……」
ミーナが俺の方をチラチラと見ながら、反応を伺っている。
「そうなの?」
まぁ、周囲から早期での婚姻を強制される訳でなく、本人たちの自由意思で結婚するなら、それはそれで良いのか。
前に市ヶ谷で話した時に、琴美も割と結婚願望自体はありそうな感じだったしな。
「その……若奥様って憧れもあるし」
「なるほどね。女の子はそういう憧れもあるんだ」
「ご、誤解しないでね! 私も誰でもいいから早く結婚したいって訳じゃないんだからね!」
「アハハッ、そんな勢い込んで言わなくても解ってるよ」
「……本当に意味解ってる?」
ミーナがむくれながら俺を見上げる。
今のミーナは、足元にショートブーツを履いていて、制服のローファーとは違いヒールで何センチか身長が上がっている。
故に、いつもより顔が近くなってしまった。
「あ……」
ミーナもそれに気づいたようで、顔を赤らめて、振袖で顔を隠す。
そのいつもと違う所作に、俺はついドキリとさせられる。
「結婚式……いいかもね」
「ホ、ホント⁉」
つい、俺は思いついた言葉をそのまま口にしてしまう。
先ほどまで貞淑な所作で顔を隠していたミーナが、興奮した様に俺にすがり着くように聞き返す。
「ミーナの白無垢の着物姿とか観てみたいかも」
「着る! 絶対着る!」
だから、さっきから顔が近いってミーナ。何で、そんな必死な顔なの?
さっきは、ウェディングドレスが良いって言ってたけど、白無垢の人前式でいいの?
と俺が疑問に思っていると、
「あ! あそこにいた! すいませ~ん、ミスコン優勝者の虎咆さん。写真お願いします」
スチールカメラを構えた人たちが何人かミーナに声を掛けてきたので、話は中断となった。
「は、はい。どうぞ」
ミスコンの優勝者は、今日は1日、学祭で構内を練り歩いてPR活動に勤しむことになるらしい。
写真撮影もその一環らしい。
「私も!」
「つぎ、こちらにも目線お願いします!」
「振袖広げたポーズもお願いします!」
「こっちは、ちょっと蔑むような冷徹顔で!
「あ、いい!」
あれよあれよという間に、ミーナを中心にカメラを持った人たちが囲む。
意外なことに女の子のファンが多い。
そして、気付いたら人が人を呼び、あっという間に人の輪が大きくなり、収拾がつかなくなってしまった。
投稿日である今日は、防衛大学校の開校記念祭2日目が開催中。
今年の棒倒し優勝は、第2大隊の連覇か、それとも去年準優勝の雪辱に燃える第4大隊か
続きが気になるよという方は是非、ブックマーク・評価をよろしくお願いします。
特に☆☆☆☆☆→★★★★★評価まだの方はよろしくお願いします。
執筆の励みになっております。




